米国時間の2018年4月30日(日本は同日夜半)に登場した「Windows 10 April 2018 Update」。Redstone 4として開発が進んでいたWindows 10 Insider Previewはビルド17134.5だったが、機能更新プログラムを適用するとバージョン1803(ビルド17134.1)となった。このWindows 10 バージョン1803に関する新機能や注目点は、「すべてが分かるWindows 10大百科と題した特集記事に追加寄稿した。
興味深いのは同バージョン以降の機能削減・計画に関する公式ドキュメントを公表した点だ。同様のドキュメントはWindows 10 バージョン1703、同バージョン1709でも目にしてきたが、本稿執筆時点でMicrosoftは日本語版を用意していないため、本稿でWindows 10を使い続ける読者に紹介する。
上に示した表はWindows 10 バージョン1803で削除した機能である。「Groove Music Pass」は日本未提供のサービスであり、以前にも取り上げたためここでは割愛するが、コンシューマーユーザーが大きく影響を受けるのは「ホームグループ」の廃止だろう。筆者は以前から通常の共有設定を使用しているため、日常的にホームグループを使用していないが、利用者には大きな変更点となる。
ホームグループはネットワーク共有の利便性をエンドユーザーにも提供するため、既存のネットワーク共有と異なるアプローチで実装した機能だ。しかし、ファイルはクラウドストレージに格納し、安価なプリンターもLANに対応するため、本機能は一定の役目を終えたと判断したのだろう。
「オープンWi-Fiスポット」はバージョン1709で非推奨機能となり、「XPSビューアー」も利用シーンは少なく、Microsoft EdgeがPDFビューアーとして機能を強化しつつあるため、両者が廃止されるのは自然な流れといっていい。
他方で「People」には、多くの変更が加わっている。Gmailなど非Microsoftアカウントに保存していない連絡先の提案を廃止し、Office 365アカウントで用いた会話を含めるようになった。
この変更点は上図を見ると一目瞭然である。Microsoft Graph APIを利用し、送受信したメールの履歴が示され、会話の多い相手は<詳細を見る>をクリックすると、より多くの情報を示すようになった。この他にも同じ会議に出席する場合はイベント欄、自身が属する組織内の相手であれば組織図に上司などの組織情報を確認できる。
これらの機能はAzure AD(Active Directory)アカウントと、一部のOffice 365アカウントで利用可能だという。これらの変更を端的に述べれば、Windows 10とOffice 365の融合を一歩進めた形だ。
次は廃止予定機能を確認する。クライアントOSの場合、「SRP(ソフトウェアの制限のポリシー)」を使う場面は少ないものの、企業でWindows 10を使う場合はAppLockerやWindows Defender Application Controlを利用すればよい。
開発者が関係する部分ではコードのデバッグに用いるWindowsシンボルパッケージの廃止が影響する。MicrosoftはOSのバージョンやビルドに合わせたシンボルパッケージを用意してきたが、Windows 10の更新頻度が加速し、オンライン環境の整備状況を鑑みて本判断に踏み切ったのだろう。
なお、Windows 7時代から導入した「DSM(分散スキャン管理)」は、企業が対応するスキャナーを制御する管理基盤だが、Microsoftは利用者減少を理由に廃止する予定を立てた。
ネットワーク回りでは、IPv6移行テクノロジーの廃止が注目ポイント。Pv4アドレスをIPv6アドレスの中に埋め込む6to4や、プライベートIPアドレスでも利用できるISATAP、NATでも動作するTeredoは既にバージョン1607以降は無効になっている。
IPv6に対応するルーターも増えたことから、直接利用すれば済むという判断だろう。Winsock 2に影響を及ぼすCLSP(階層化サービスプロバイダー)だが、Windows 8の時点で非推奨済み。現在MicrosoftはWFP(Windows Filtering Platform)の利用を推奨している。
Windows 10回りの廃止予定機能は、「エクスプローラの連絡先機能」「電話コンパニオン」「Windowsヘルプ(WinHlp32.exe)」の3つ。まずエクスプローラーの連絡先機能は、Windows XP時代のWindowsアドレス帳を代替するため、連絡先情報を制御するWindows Contacts APIをWindows Vistaに追加した。
だが、当時利用していたMicrosoft OutlookおよびWindows Mailはすでに同APIに利用しておらず、今回の廃止候補に加わった。次の電話コンパニオンはOSに吸収したため、不要と判断したのだろう。
そして最後のWindowsヘルプは感慨深い読者諸氏も少なくないだろう。Windows 8.xの時点で標準サポートを終え、Microsoftダウンロードセンターから別途ダウンロードしなければならない状況ではあった。
Windowsヘルプの歴史をさかのぼれば1990年5月(日本語版は1993年5月)リリースのWindows 3.1にたどり着く。つまり、30年近くったつ古い設計だ。Microsoftは代替案としてWeb上のドキュメントを提示しているが、Windowsヘルプのような検索性も乏しく、現時点で使いやすいとは言いがたい。今後の改善を期待しつつ、Redstone 5に至るWindows 10 Insider Previewの変化に注視したい。
阿久津良和(Cactus)