4月から新社会人としてがんばっている皆さん、お元気ですか?

研修が終わって配属が決まり、バタバタと忙しい時間を過ごしているうちに大型連休のゴールデンウィークがやってきて、気づいたら梅雨入り。あらためて今の仕事を振り返り「何がしたかったんだっけ……」と迷いが生じていたりしませんか。

仕事へのモチベーションが保てなくなりがちなこの時期を乗り越えるには、どうすればいいのか。あるいは先輩社員からすると、そういった部下をどのようにケアしてあげるべきなのか。

  • サントリーホールディングス人事部課長の成瀬雅昭さん

    サントリーホールディングス人事部課長の成瀬雅昭さん

やっぱり餅は餅屋! ということで、「働きがいのある企業ランキング2018」で2位に輝いたサントリーホールディングス人事部課長の成瀬雅昭さんに、モチベーションアップの秘訣や会社として社員のケアをどうされているのかなどを伺いました。

■大きな変化ではなく、小さな積み重ねの結果

──「働きがいのある企業ランキング2018」で2位に輝いたサントリーホールディングスですが、これは昨年の27位から大幅なランクアップです。この1年で何か大きな変化があったのでしょうか。

成瀬:私が聞きたいくらいです(笑)。サントリーとして特にこの1年で何かしたということはなくて、むしろ従業員意識調査では昔からずっと高スコアなんです。

――この1年が特別ではないと。

成瀬:もともとサントリーには仕事もそれ以外も全力投球という社員が多く、働き方改革がトレンドになるよりも前からワークライフバランスに取り組んでいます。強いて言うなら、そういったこれまでの取り組みが目に見える形となって表れたのが今回の結果だったのかもしれませんね。

――たとえばどういった施策に取り組まれてきたのでしょう。

成瀬:たとえば現場に働き方改革推進リーダーを立てたことです。それまでは人事が主導して様々な働き方改革を進めていましたが、総残業時間や有休取得率があまり変わりませんでした。それで、人事があれこれ言うよりも現場の工夫で楽しく進めてもらった方がいいのではと考えました。

結果的に、働き方改革推進リーダーを立てた初年度、いきなり残業時間が10%削減されました。翌年にはそこからさらに5%削減され、有休取得率が平均4日増になるなど大きな効果が出ています。

――すごい数字ですね。

成瀬:また、女性の育休取得率も今では100%を維持しています。男性の育休取得率も高く、制度としては1年半とれるのですが、まだそこまで休む人は少なく、それならせめて1週間はとってほしいということで推進しています。有休とは別に休めますし、出勤率にもカウントされます。評価にも影響しないということで、今は対象者の3分の1以上が取得していますね。

――育休については現場の雰囲気的に男性が取りにくいという会社も多そうですよね。

成瀬:社風なのかもしれません。人事がいくら旗を振っても、現場に理解がないとダメですから。

――福利厚生などはいかがですか?

成瀬:特に奇抜なことをやっているわけではありません。ニーズに合ったものを整えています。ただ、社外のファイナンシャル・プランナーの方に、「サントリーは給与満足度と福利厚生満足度の両方が高い珍しい会社」と言われました。実際、経験採用で入社された方にも福利厚生の手厚さには驚かれることが多いですね。

――今のお話でも何となく「働きがい」が高い理由が伝わってきました。制度はもちろん、それを活用できる空気が社内にあるのですね。そういった社風は昔からなのですか?

成瀬:そうですね。創業者である鳥井信治郎や佐治敬三といった先代の時代からずっと「社員は家族」という文化が続いています。社内行事も家族を招待したり、一緒に仕事をしている関係先とも開催したりと仲はいいですね。

そういった横のつながりが、縦割りになりがちな会社組織の中で風通しを良くすることにつながっていると思います。自分の部署以外の人と接する機会が増えるため、日頃から仕事がしやすいのです。

■社員同士のコミュニケーションは?

  • TOOってなんだ!?

    TOOってなんだ!?

*――社員同士のコミュニケーションを活性化するような取り組みも? *

成瀬:基本的にはフェイス・トゥ・フェイスのコミュニケーションを大事にしつつ、社内SNSなども設けてコミュニケーションを促進しています。ちょっとしたPCのノウハウから親睦会の報告、仕事の提案や遠隔地の社員との交流など、本当に自由にコミュニケーションできる場として機能しています。

――制度面、コミュニケーションとくると、あとは仕事面でのやりがいだと思いますが、そちらは何か工夫されている点は?

成瀬:評価制度については年に4回面談を実施しており、社員の満足度も高いですね。それからユニークなところですと、新規性があってハードルの高い目標に挑戦する「チャレンジ目標」という制度が通常の目標とは別にあります。

一般的な目標管理制度で評価すると、社員は達成できるように低めの目標を立ててしまいがちですが、チャレンジ目標は失敗しても評価は下がりません。

さらに、人事評価とは違いますが「やってみなはれ大賞」という賞も設けており、大賞を取ると賞金や海外への研修旅行などがもらえます。こういった制度が仕事へのモチベーションアップにつながっているのではないでしょうか。

――なるほど。とはいえ、それでもモチベーションが下がってしまう社員もいると思います。そういった社員へのケアはどうされているのでしょう。

成瀬:これも弊社独自かもしれませんが、TOOという役職を設けています。

――TOO?

成瀬:隣(T)のおせっかい(O)なおじさんおばさん(O)です(笑)。

――(笑)。

成瀬:どれだけ上司に恵まれていても、やはり上司は自分を評価する人間ですから部下にとっては息が詰まることもあります。そういったときに大事なのは、「自分を評価する立場ではない経験豊富な人」に相談できる環境があることなんです。これも人事発というよりは、現場から自然発生的に生まれた仕組みです。

――若手社員のモチベーションケアに悩んでいる企業にとっては参考になりそうな制度ですね。最後に若手社会人に向けてアドバイスやエールをいただけますか。

成瀬:私自身も辛いこと、悩んだことは多々ありました。そういった経験を思い返して今実感しているのは、どんな仕事でも自分の成長につながっていたんだなということです。

自分のやりたいことと違う仕事や一見雑用に見える仕事も、こなすだけでなく意味合いを考えたり自分色の工夫をしていると、見ている人は必ずいてくれるんですね。

若い時に先輩が「小さな仕事を一所懸命できない人には次のチャンスは回ってこない」と声を掛けてくれたことに今でも感謝しています。どんな小さな仕事でも、任せてくれた先輩の期待をほんの少しでも超えていくことで、皆さんもきっといい循環が生まれてくると思います。

私自身も今はメンバーをたくさん持つ立場になったので、新入社員が自分で考えて小さな工夫をすることはとっても嬉しく思いますし、しっかりと見てあげたいなと思っています。

また、以前上司が「この人(このチーム)と一緒に仕事ができてよかったと思える回数が多いほど幸せ」という趣旨のことをよく言っていました。私もとても共感する言葉で日々の仕事の中で大切にしています。皆さんも振り返った時にそう思える回数が増えればいいなと思います。見てくれている人はきっといますから。

――ありがとうございました!

「働きがいのある企業ランキング2018」で2位に輝いたサントリーホールディングス。社員満足度の高さの理由が伺えるインタビューでした。モチベーションアップに悩んでいる方にとっても参考になるお話だったのではないでしょうか。