社会人になって、「やったーこれからは休むときに有休(年次有給休暇)が使える!」と思った新社会人の方も多いのではないでしょうか。でも、有休は入社して6カ月が経たないと発生しません。

4月1日入社の場合、10月1日にならないと、有休は発生しない、つまり有休が使えるのは、10月1日以降なのです(その前にたくさん欠勤してしまうと、発生が10月1日以降になることもあります)。

有休がない場合に、休んだらどうなるか……そのときは、「欠勤控除」の適用となります。欠勤控除、耳慣れない言葉ですよね。控除ということは、得するのでしょうか?解説いたします。

ノーワーク・ノーペイの法則って知っていますか?

働くということは、労働者(社員・アルバイターなど)と、使用者(会社・雇用主)による「双務契約」になります。双務契約は、お互いに対価的な債務を負担する契約です。

労働者は労働力を提供し、その労働力に対して使用者は賃金を支払うということになります。つまり、労働者が欠勤や遅刻で仕事をしなかった日や時間については、使用者にはその分の賃金を支払う義務は発生しない、ということになります。これを「ノーワーク・ノーペイの原則」といいます。

わかりやすいように時給で働いているアルバイトの場合で考えてみましょう。働いた分の時間数で貰える金額が変わりますよね?たくさんアルバイトに入った月は、たくさんお給料がもらえました。でも、授業やサークルが忙しくてあまりアルバイトが出来なかった月は、当然お給料が減ります。そう、働かないとお給料はもらえないからです。

でも、会社員になると、お給料は大抵月給や年棒で予め金額が決まっていますよね?この場合はどうなるのでしょうか。

働かなければ給料は引かれる。これが「欠勤控除」

「ノーワーク・ノーペイの原則」は月給でも年棒でも基本変わりません。働かなかった分の賃金は、支払われる賃金から差し引かれます。これが「欠勤控除」という制度です。月給や年棒制などで、賃金が決まっていたとしても、実際に働かなかった分の賃金を、適切な計算方法をもとに、支払う賃金から控除するのは会社側の権利として認められています。

例えば、月給20万円の新入社員が3日間病欠し、欠勤控除を適用することになった場合は次のように考えます。なお、新入社員が3日間病欠した月の、本来働くべき日数は、20日間あったとします。

まず、月給を本来働くべき日数で割り、1日あたりの賃金を計算します。

  • 月給20万円÷働くべき日数20日=1日あたりの賃金1万円

その1日あたりの賃金に、休んだ日数をかけたものが控除される金額となります。

  • 1日あたり1万円×3日=3万円→給料から3万円引かれる!

でも、月によっては、働くべき日数が、21日だったり、23日あったりしますよね。その場合は、その21日や23日といった日数で割るのが、基本的な考え方となります。

「働く日数が多い月に休んだ方が、引かれる額が減るから得なんだ!」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、多くの会社は、年間就業日数があらかじめ決まっているため、それを12で割った平均日数で1日あたりの金額を計算しているようです。

年棒の場合は基本的に、以下のように考えます。

・年棒の金額÷12カ月=1カ月あたりの金額
・1カ月あたりの金額÷その月の実働日数=1日あたりの金額→1日休んだときの欠勤控除の額

休み以外にも適用される!「欠勤控除」

欠勤控除は、病欠などで丸1日休んだ日だけではなく、遅刻や早退などにも同様に適用されます。

基本の考え方は以下の通りです。

・1日あたりの金額÷基本就業時間=1時間あたりの金額
・1時間あたりの金額×遅刻・早退で実際に働かなかった時間数=遅刻や早退したときの欠勤控除の額

「1分でも遅刻したら、1時間引かれるの?」と思われた方もいるかと思いますが、会社によっては、15分刻みだったり、逆に遅刻や早退は半日ごとでしか認められていないという場合もあったりと、様々です。遅刻や早退が何時間単位で引かれるかは会社の就業規則に記載されていますので、目を通しておきましょう。

なお、会社や給料体系によっては、欠勤控除をしない場合もあります。その場合、休んだり、遅刻や早退をしたりしても支払われる給料は変わりませんが、賞与などの査定に関わるようになっていることが多いようです。

転職・退職するときも欠勤控除が関係する

転職や退職するときに、「当月払い」の給料体系の場合、退職日によっては、欠勤控除が適用されます。

4月1日に入社し、働きはじめた新入社員でも、大抵同じ4月中にお給料が振り込まれます。これが「当月払い」です。まだ実際は月末まで働いていないけれど、4月1日から4月30日まで勤務したとみなして、今月分の給料を先に支払います、というわけです。

たとえば、毎月20日にお給料が払われる会社の場合、当月末締め、当月20日払いとなり、21日~30日に関しては、働くであろうとみなし、先に給料を支払う、という扱いになります。

  • 給料の仕組み

ただし、転職や退職の場合、「今月分の給料をもらったから、今月はここで終わり」つまり給料日を締日と思い、その日で会社を辞めてしまうと、実際は働かなくてはいけない期間が残されているため、残りのみなされた期間が欠勤控除の適用となります。

  • 転職や退職する場合

予定された退職の場合は、あらかじめ支払われる給料から働かない期間の分を欠勤控除していますが、急にやめることになり、かつ当月の給料を先にもらってしまっている場合は、会社へ欠勤控除分の金額を返還しなくてはなりません。

税金の控除の場合は、自分が支払う税金が控除され、支払税額が減ってラッキーですが、 欠勤控除の場合は、働かなかった分の給料が控除され、自分に入る金額が減るということですので、 間違わないよう覚えておきましょう。

  • 回遊舎

番場由紀江(回遊舎)

"金融"を専門とする編集・制作プロダクション(株)回遊舎所属の編集・ライター。お金に関する記事以外にも、妊娠・出産・育児といった女性のライフプランに大きくかかわる分野や、ビューティ・ヘルスケア分野を主に手掛ける。『からだにいいこと preco』(祥伝社ムック)では編集長として、女性が将来のライフプランを考える上で不可欠な、「プレコンセプションケア」の概念を世に広める一翼を担った。