私たちが生きていくうえで食事は必要不可欠だ。そして、その食事をする際に重要な役割を担うのが「歯」である。普段あまり意識はしていないかもしれないが、歯は私たちの健康やQOLに大いに関与している。
例えば、虫歯が痛むようだったら仕事や勉強に集中できない。歯周病に伴う口臭があまりにもひどければ、営業職のように常に人と接する仕事に就いている人には、マイナスに働く面が多分にある。それだけに、丈夫な歯を維持することは非常に重要なのだ。
毎日の歯磨きが丈夫な歯のために重要であることは、誰しもが認めるところだ。その一方で、毎日口に入れる食べ物も、実は「歯の健康」を大きく左右している。それでは「歯にいい食べ物・悪い食べ物」とは具体的にどのようなものなのだろうか。M.I.H.O.矯正歯科クリニックでデンタル・フード・グロース・リスク部門を担当し、NPO日本食育インストラクター1級でもある上田裕子さんにうかがった。
基本は栄養バランスに優れた食事
「歯にいい食べ物」と「歯に悪い食べ物」に関する定義はいくつかあるだろうが、今回は前者を「丈夫な歯をつくるために寄与する飲食物」、そして後者を「虫歯や歯周病を招く恐れがある飲食物」という観点で上田さんに解説をしてもらった。
まず、「歯にいい食べ物」についてだが、よい歯をつくるためには「栄養バランスのよい食事をすることが最も大切です」と上田さんは指摘する。そのうえで、あえて特に必要な栄養素を挙げるのであれば、「カルシウム」「たんぱく質」「ビタミンA、C、D」が該当するという。
カルシウムは、歯の表面の硬い層であるエナメル質をつくる栄養素で、たんぱく質は歯の主体となる象牙質をつくっている。そして、ビタミンA、C、Dはエナメル質や象牙質を良質なものにする働きがある。
「歯にいい栄養素としてはカルシウムが有名ですが、リンもカルシウム同様に歯の石灰化(修復)を手助けします。ただ、リンの摂(と)りすぎはよくありません。リンは食品添加物として加工食品やスナック菓子に入っていることも多いです。カルシウムは意識して摂ってもらいたいですが、リンを目当てにこういった食品を食べるのはやめていただきたいですね」
さらに「フッ素配合」などと表示されている歯磨き粉を見た経験がある人も多いことだろう。フッ素は、歯から溶け出したカルシウムやリンの再石灰化を促進するなどの働きがあるため、フッ素を含んだ食品も摂取してほしいと上田さんは話す。
歯にいい栄養素を含む飲食物
カルシウムやたんぱく質、ビタミンA、C、D、そしてフッ素を含む食品の一例は以下の通り。このほかにも該当する食材は多数あるが、大事なのはこれらの食材そのものではなく、含まれている栄養素であることを覚えておいてほしい。
■カルシウム(歯の石灰化を助ける)
ヨーグルト、チーズ、ちりめんじゃこ、ひじき、高野豆腐など。
■たんぱく質(象牙質をつくる)
肉、魚介類、卵、大豆、牛乳など。
■ビタミンA(エナメル質をよくする)
ほうれん草、かぼちゃ、レバー、うなぎ、シソの葉など。
■ビタミンC(象牙質をよくする)
ブロッコリー、小松菜、ピーマン、じゃがいも、みかんなど。
■ビタミンD(カルシウムの吸収を助ける)
鮭、さんま、かれい、干しシイタケ、しめじなど。
■フッ素(歯を強化する)
めざし、桜エビ、わかめ、のり、緑茶、紅茶など。