「Windows 10 Lean」の存在が注目を集めている。2017年からうわさレベルで、その姿を見え隠れさせていた「Windows 10 Cloud」の流れをくむエディションだ。ただし、結局のところWindows 10 Cloudは発表されず、フタを開ければUWP(ユニバーサルWindowsプラットフォーム)アプリケーションに限定した「Windows 10 S」が投入されたことは記憶に新しい。
ちなみにWindows 10 Sは単独のエディションではなく、各エディションのモード(機能)として実装すると、Microsoftは2018年3月にアナウンスされている。
さて、Windows 10 Leanは既存のエディションと何が違うのだろうか。とある筋から入手したWindows 10 LeanをHyper-V上で試してみると、うわさにあったWindowsフォルダー下のファイル数は57,329。フォルダー数は12,993。Windows 10 Insider Preview ビルド17134.1を確認すると、ファイル数が9,468。フォルダー数が2,315である。
カウント方法が変化しつつあるのか調査していないものの、興味深いのはストレージ消費容量だ。ディスククリーンアップ済みのWindows 10 Insider Previewは27.2GB。対するWindows 10 Leanは8.08GBと非常に少ない。
さらにメモリー消費容量は1GBを切る。各仮想マシンは4GBのメモリーを割り振っているが、Windows 10 Insider Preview ビルド17134.1は1.4GB。現在のコミットサイズやカーネルのページプールも半分程度にとどまっている。
レジストリエディターもInternet Explorerも含まれておらず、Windowsフォルダーで確認できるのは、エクスプローラーやメモ帳、アプリケーション用プリンタードライバーホスト程度だ。どうやら下位互換性の排除したエディションのようだ。ちなみにエディション情報を示すXMLファイル名は「CloudE.xml」と、Windows 10 Cloudの系統であることが分かる。
MicrosoftはWindows 10 Leanについて何も発言していないため、軽々に述べることはできないが、ストレージやメモリーのフットプリントを削減したエディションであることは確かだ。Intel Atom時代にWindows 8.xを搭載した小型タブレットPCが多数登場し、筆者もWindows 10にアップグレードしてみたが、ストレージ容量の制限からWindows 10バージョン1803への更新はあきめている。このような問題を排除し、さらなるWindows 10ファミリーの拡大を目的に本エディションを用意したのではないだろうか。
Windows 10 Leanを目にして想像するのが、Windows 10のNC(ネットワークコンピューター)化だ。すでに2017年9月の時点でMicrosoftはライセンス条項を改定し、Microsoft AzureやQMTH(Qualified MultiTenant Hoster Program)パートナーのマルチテナント環境でWindows 10の利用を認めている。もっともAzure ADのライセンス認証を使用し、エディションはEnterprise E3/E5といった制限はある。
だが、昨今のクラウド環境をかんがみれば、実機で使用するOSは極力軽量化し、重い処理はクラウドで行う流れが訪れても不思議ではない。ちょうど前回の記事でLinuxベースのNCが登場する可能性について言及したが、Windows 10 Leanの存在でWindowsプラットフォームが存在し続ける道もあり得そうだ。
以上は筆者の空想だが、Microsoftの2018年第3四半期(2018年1~3月期)のMore Personal Computing部門(WindowsやXbox、Bingなどを含む)は好調ながらも、Windows OEM non-Pro売上高伸び率は第1四半期から前年度比マイナスが続いている。同社がWindowsを続けるのであれば、Windows 10 LeanをOEM向け軽量エディションとして用意する計画は悪くない試みだ。いずれにせよ、Microsoftの公式発表が楽しみである。
阿久津良和(Cactus)