外為どっとコム総合研究所の神田卓也氏が2018年4月の為替相場レビューと、今後注目の経済指標やイベントをもとにした今後の相場展望をお届けする。
【ドル/円 4月の推移】
4月のドル/円相場は105.659~109.537円のレンジで推移し、月間の終値ベースでは約2.8%の上昇(ドル高・円安)を記録した。前半は、米中貿易戦争への懸念と米国によるシリア攻撃の可能性などが重しとなり伸び悩んだ。
しかし、習近平・中国国家主席が10日に自動車輸入関税の引き下げを発表した事で貿易戦争への懸念が緩和。13日夜には、米英仏がシリア化学兵器施設を攻撃したが、攻撃は「一回限り」とされ、泥沼化する事はないとの見通しが強まった。さらに、通商問題で米国から難題を突き付けられるとの見方もあった17-18日の日米首脳会談も無難に通過するなど、次第に「トランプ・リスク」が薄れていった。
そうした中、原油高などもあって米長期金利が上昇すると日米金利差拡大観測からドル買い・円売りが活発化。米10年債利回りが3.00%の節目を超えて上昇すると109円台半ばまで上値を伸ばした。
【ドル/円 5月の見通し】
ドル/円相場は4月に比較的大きく反発したが、上昇トレンドへの転換を判断するのはまだ早いかもしれない。週足チャートを確認すると、13週移動平均線こそ上抜けたものの26週、52週の移動平均線を依然として下回っている。日足でも100日移動平均線は突破したが、200日移動平均線はまだ捉えられていない。下げ止まりからの自律反発局面が終了するのか、上昇トレンドへの転換点となるのか、5月の相場展開が中長期トレンドのカギを握る事になりそうだ。
まずは、2日の米連邦公開市場委員会(FOMC)と4日の米4月雇用統計に注目したい。米FOMCは利上げを見送る公算だが、6月利上げに向けた地ならしが行われると見られている。足元のインフレ上昇などに鑑みて、年内にあと3回の利上げ(FOMCはあと2回の見通しを示している)観測が市場で高まれば、ドルを後押しするだろう。
そのためには、米4月雇用統計で賃金の伸びが高まる事も必要となる。ドル/円相場は、仮に200日移動平均線(1日時点110.232円)や52週移動平均線(同110.462円)を上抜けすれば、112円台の回復も視野に入りそうだ。一方、円高リスクとして、トランプ米政権による貿易摩擦問題の蒸し返しを警戒する必要があるほか、念のため、日本の政局動向にも注意が必要だろう。100日移動平均線(1日時点108.821円)を下抜ければ、13週移動平均線(同107.061円)付近まで調整余地が広がると考えられる。
【5月の日米注目イベント】
執筆者プロフィール : 神田 卓也(かんだ たくや)
株式会社外為どっとコム総合研究所 取締役調査部長。1991年9月、4年半の証券会社勤務を経て株式会社メイタン・トラディションに入社。為替(ドル/円スポットデスク)を皮切りに、資金(デポジット)、金利デリバティブ等、各種金融商品の国際取引仲介業務を担当。その後、2009年7月に外為どっとコム総合研究所の創業に参画し、為替相場・市場の調査に携わる。2011年12月より現職。現在、個人FX投資家に向けた為替情報の配信(デイリーレポート『外為トゥデイ』など)を主業務とする傍ら、相場動向などについて、WEB・新聞・雑誌・テレビ等にコメントを発信。Twitterアカウント:@kandaTakuya