会社員の人であれば、「雇用保険」に加入しているのが一般的。「雇用保険」と聞くと、その役割は、「退職した際に失業手当をもらえる」とイメージするのではないでしょうか。
しかし、実際は失業手当だけでなく、育児や介護で働けないときに給付を受けたり、仕事の能力開発やキャリア形成を促すための学びを助けてくれる「教育訓練給付金」を受け取ったりすることもできるのです。この「教育訓練給付金」が2018年1月から拡充され、より利用しやすくなったのでチェックしましょう。
そもそも「教育訓練給付金」ってどんなもの?
「知識やスキルをより高めてステップアップしたい」「専門的な資格を取って職につきたい」、働く人たちの仕事の能力開発やキャリア形成を支援するために、雇用保険では「教育訓練給付金」という制度があります。
この「教育訓練給付金」には、「一般教育訓練給付金」と「専門実践教育訓練給付金」の2種類があります。どちらも雇用保険に3年以上加入している、もしくは過去に加入していた人が厚生労働相が指定する講座を自己負担で受講した際に、修了後に申請すると教育訓練にかかった費用(入学料や受講料など)の一部を受け取ることができます。
一般教育訓練給付金は、英会話やパソコン講座をはじめとした比較的手軽に受講できる教育訓練を修了した場合、負担した授業料の一部が支給されるものです。
一方、専門実践教育訓練給付金は、専門性が高く長期間にわたる職業訓練を受ける場合が対象になります。たとえば看護師、助産師、理学療法士、診療放射線技師、臨床検査技師、歯科衛生士、救命救急士、美容師、保育士、建築士といった、職業に直結する専門的な講座が中心となります。2018年1月1日以降に受講を開始する専門実践教育訓練からは、それまでの要件が緩和され給付率もアップし、より利用しやすくなったのです。その改正点を解説していきましょう。
変更点その1……支給率、支給上限額がアップ!!
受講者が支払った教育訓練の費用のうち、最大50%が支給されるようになりました(改正前は40%)。さらに、資格取得後1年以内に仕事についた場合、給付金が20%上乗せされるので、合計70%アップに。
金額では、1年につき40万円(改正前は32万円)が上限となり、最長の三年間受講した場合は120万円が上限額となります。こちらも資格取得後に雇用があると、上限が56万円にアップ。3年では最高168万円が受け取れるようになりました。
変更点その2……支給対象者の要件が緩和された
また、これまでは「10年」以上の支給要件期間(雇用保険の被保険者だった期間)が必要でしたが、「3年」以上と大きく短縮されました。これまでに教育訓練給付金の支給を受けたことがなければ、「2年」以上の加入で要件がクリアできます。
さらに、受講開始時期の条件も緩和されたことも注目です。これまでは原則として退職の翌日から1年以内に受講をスタートする必要がありました(妊娠・出産、育児、疾病、負傷などの事情があり受講開始延長した場合は4年以内)。
1年以内と聞くとあっという間に過ぎてしまうイメージですが、この条件も最大で20年以内に受講スタートすればOKに変更されました。「子育てが落ち着いてから受講したい」といったような今すぐに受講スタートできない人にも利用しやすくなったと言えます。
変更点その3……「教育訓練支援給付金」の金額もアップ!
45歳未満の失業状態にある人で、初めて専門実践教育訓練給付を受けるなどの条件を満たした場合、訓練受講をさらに支援するために「教育訓練支援給付金」が支給されます。
受講期間中の所得補償の役割となるわけですが、この給付金の金額も大きくアップしました。1日当たり離職時の基本手当の50%支給だったものが、改正後は80%に大きく引き上げされました。
これらの改正のおかげで、キャリアアップやキャリアチェンジを目指す人たちは、金銭的な負担が減るのをはじめ、チャレンジしたくてもできなかった人が、新しい一歩をより踏み出しやすくなったと言えるのではないでしょうか。キャリア形成を考える人は活用しない手はない制度です。