日本アクチュアリー会が作成する「標準生命表」が2018年4月に改定されました。この標準生命表は、保険会社が保険料を決定する基準となるもの。保険料は家計の中でも大きな割合を占めるため、2017年に改定予定と発表されて以降、保険会社各社の保険料改定の動向が大きな注目を集めてきました。
そこで今回は、そもそも生命保険の保険料がどのように決められるのか、標準生命表の関わりを含めて保険料の最新事情をご説明していきます。
生命保険の保険料はどうやって決まるの?
標準生命表は死亡率や平均余命などを性別、年齢別にまとめたもので、金融庁から業務を委託された日本アクチュアリー会が、生命保険の被保険者の死亡統計をもとに算出しています。この標準生命表が、日本人の長寿化で死亡率が低下していることを受けて、この4月に2007年以来11年ぶりに全面改定されました。これが保険各社の保険料にも影響を与えることになります。
そもそも生命保険の保険料が決定される際には、3つの基礎率(保険料を決めるベースとなる数字)が用いられます。それが「予定死亡率」「予定利率」「予定事業費率」です。予定死亡率は年齢、性別ごとの死亡者数の割合、予定利率は保険会社が運用収益を見込んで設定する割引率、予定事業費率は保険会社を運営するのに必要な経費の割合を指します。予定死亡率が低いほど保険料が安く、予定利率が高いほど保険料は安く、予定事業費が低いほど保険料は安くなるといった仕組みです。
実は2017年4月にも生命保険料の改定が行われましたが、それは標準利率引き下げに伴う「予定利率」の引き下げによるものでした。そのときには、終身保険や学資保険、年金保険といった積み立てタイプで、貯蓄性の高い保険が値上がったり、販売停止になったりしました。一方、今回の標準生命表の改定では「予定死亡率」が下がったため、生命保険の死亡保険料の引き下げが行われることになったのです。つまり2年連続で保険料に関連する大きな変更がなされたことになります。
長寿化の現状を踏まえて保険料も改定へ
標準生命表を2007年と2018年で比較して見てみると、死亡率は70歳男性が29.6%減少、女性が20.1%減少。それ以外のすべての年代を見ても、大きく減少していることがわかります。この数字の変化が死亡保険料の見直しにつながったのです。
実際に、生命保険最大手の日本生命は4月2日以降、定期型の死亡保険料を最大2割程度引き下げました。第一生命は保険料の値下げに加え、既存商品の改定販売も行っています。一方で明治安田生命や住友生命は改定を見送っていますが、今夏~来春をめどに見直しを検討するなど、各社は死亡保険の値下げに舵を切りました。
このように、寿命が伸びる=死亡のリスクが低下することで、生命保険(死亡保険)の保険料は引き下げの傾向となりました。しかし裏を返せば長生きする可能性が高まっていることをも意味するため、医療保険や介護保険の保険料については引き上げになると想定されていました。
というのは、寿命が伸びれば保険会社が保障する期間も延び、さらに高齢になればなるほど病気やケガが増えて、保険会社側からの保険金や給付金の支払いも増加するからです。
しかし結果的には、販売競争の激化などが理由となり、多くの保険会社が据え置き(微増)といった形となりました(2018年4月時点)。とはいえ現状を鑑みれば、本来的には保険料が引き上げになることが自然といえます。医療保険や介護保険の保険料については、今後の動向への注視が必要でしょう。
このように標準生命表の改定(死亡率の変更)は、保険料にも影響を与えます。しかし「生命保険の保険料は安くなったし、逆に医療保険はこれから値上がりをするかもしれない。だから急いで加入しよう」などと考えるべきではありません。
保険はあくまで必要なタイミングで、適切なものに入るのが正解です。内容の確認などが不十分な状態で慌てて加入し、本当に必要な保障を得ることができなかったり、加入を見送っていざというときに備えることができなかったり、というのでは本末転倒です。保険加入の際には、何のための保険なのかという本来の意味を見失わず、コスト以外の面もしっかり検討した上で決めることが大切です。