今年もまたGWがやってきた。クルマで遠出する人も多いかと思うが、ドライバーにとっても同乗者にとっても、何より気がかりなのが“渋滞”だろう。そこで今回は、NEXCO東日本に在籍する渋滞予測のエキスパートに2018年GWの渋滞事情を伺った。渋滞はなぜ発生し、誰がどのように予測しているのか。渋滞情報の裏側をお届けしよう。

  • 2018年のGWは、昨年より渋滞が増えることが予測されている

渋滞情報は誰が予測しているの?

今回お話を伺ったのは、「5代目渋滞予報士」を務める外山敬祐さん。渋滞予報士とはNEXCO東日本内での愛称であり、気象予報士のようにオフィシャルな資格を持っているわけではないそうだが、名前の通り渋滞予測に関しては間違いなくエキスパートと言える存在だ。

  • 5代目渋滞予報士・外山敬祐さん

渋滞予報士は2018年4月現在、NEXCO東日本の北海道・東北・関東・新潟の各支社にそれぞれ1名ずつが在籍している。2007年の7月に誕生した渋滞予報士は、2017年4月までは日本にただ1人しかいなかったのだとか。

予報士が誕生したのはここ10年ほどの話であるが、渋滞予報そのものは1987(昭和62)年から始まっていたという。では実際のところ、高速道路の渋滞予測はどのような情報をもとに導き出されているのだろうか。

  • 道路管制センターでは、24時間365日体制で交通情報の収集・発信を行っている

「過去3年間に発生した渋滞の長さや時間などのデータから予測しています。しかしデータはあくまで過去のものですので、現在の道路状況や高速道路の料金、曜日の並びなども加味したうえで予測を行っています」と外山さん。こうして予測された情報は、NEXCO東日本が運営する「渋滞予報カレンダー」からチェックできる。

高速道路における渋滞の定義については、「時速40km以下で低速走行あるいは停止発進を繰り返す車列が、1km以上かつ15分以上継続した状態」とされている(一部例外となる路線あり)。ちなみに日本で史上最長の渋滞と記録されているのは、1995年12月27日に名神高速道路・秦荘PAから東名高速道路・赤塚PAにかけて発生した154kmのものだそう。

  • 渋滞が発生する原因は?

渋滞の原因は様々だが、交通集中によって発生するものが最も多いのだという。その中でも、大半は「サグ」と呼ばれる箇所が発生地点になる。「サグ」とは、“たわみ”や“たるみ”を意味する言葉であり、下り坂から上り坂に差し掛かる凹部のことを指している。ドライバーが上りに気付かない程度の緩やかな坂であっても無意識な速度低下は発生しがちであり、そこから渋滞が生まれるのだ。

対策としては、クッションの役割となる車間距離を常に確保することや、むやみな車線変更を控えることなどが挙げられる。高速道路では、混雑が始まると少しでも先を急ごうとするドライバー心理が働き、多くのクルマが一斉に追越車線へ進路を変更する。そのため追越車線へ極端にクルマが偏り、それが渋滞をさらに悪化させる場合も多いそう。関越道下りの東松山IC付近や東北道上りの佐野藤岡IC付近は特にこの現象が起こりやすいらしく、「車線を均等に使う」という意識が求められている。

  • 写真左側にあるような「サグ」の標識が見えたら要注意!

2018年GWの渋滞事情やいかに!?

そんな外山さんに2018年GWの渋滞予報を聞いてみたところ、「後半の4連休に渋滞が集中すると予測しています」との答えが。GWの前半が2連休であった昨年に対し、今年は前半が3連休となることもあり、GW全体で見ても渋滞の発生回数は昨年より増えそうだという。下り方面は5月3日、上り方面は5月5日がそれぞれピークになると予想されている。東京方面へ帰る場合は、渋滞が落ち着く5月6日がオススメとのこと。

また、国営ひたち海浜公園(茨城県ひたちなか市)のネモフィラがSNS映えスポットとして人気を博しており、今年は前半の3連休に見頃を迎えるためネモフィラ渋滞に注意が必要という予報も。

  • ネモフィライメージ

さらに、アクアラインの千葉方面へ向かう下り線は、GW期間中が1年間で最も激しい渋滞を記録するとのこと。アクアラインを先頭に首都高速湾岸線まで、特に湾岸線西行きは辰巳JCTのあたりまで渋滞が伸びる可能性もあり、「距離にすると25kmほどですが、注目すべきはその時間です。通過に最大4時間35分、時速にすると約5km/hのノロノロ状態が続くでしょう」という忠告もいただいた。

このような渋滞情報は、サービスエリアなどで配布されている冊子「渋滞予報ガイド」やドライブサポートアプリ「ドラぷらアプリ」、「NEXCO東日本公式Twitter」などからもチェックできる。

同社は現在、AI技術を活用した「AI渋滞予知」の実証実験も行っており、さらなる予想的中率のアップも確認されている。このような技術の発展にももちろん期待したいが、まずはドライバーひとり一人が渋滞の緩和に意識を向けることから始めてみるのが何より重要なのではないだろうか。連休中に渋滞に巻き込まれそうになったときは、ぜひ外山さんのアドバイスを思い出してほしい。