漫画や雑誌などのコンテンツを違法にインターネットにアップロードし、誰でも閲覧できるようにした、いわゆる「海賊版サイト」の問題に対応すべく、NTTグループではブロッキング(接続遮断)を実施することを表明しています。これについてNTTドコモ 代表取締役社長の吉澤和弘氏は、どのような考えなのでしょうか。同社の2018年3月期 決算発表において所感を述べました。

  • 海賊版サイトのブロッキングについて語る、NTTドコモ 代表取締役社長の吉澤和弘氏

ブロッキングは妥当? 憲法違反?

今回の海賊版サイトをめぐる問題について議論が過熱しています。「海賊版サイト」については早急な対応が必要ですが、サイトブロッキングとなるとユーザーの通信の監視につながり、インターネット利用者に保障されているはずの「通信の秘密」を事業者が侵害して良いのか、そうした観点でさまざまな意見が出ているのが現在の状況です。

今回の騒動について、記者団にコメントを求められた吉澤社長は「われわれ(NTTグループ)はブロッキングを実施すると表明した。準備ができ次第といったところ。現在は問題となったサイトが3つとも閉鎖され、検索してもヒットしない状態だが、いつまた復活するかも知れない。不完全な形でも閲覧できる可能性もある。ブロックする方針を変えるつもりはない」と回答。

報道各社の反応について、どう受け止めているか聞かれると「世の中の関心の高さを感じている。この問題は『著作権の侵害』と『通信の秘密』のせめぎあいになっている。現在、その結論は出ていない。ただ、インターネットによるコンテンツビジネスの発展を阻害している事実は、誰もが認めるところ。それを見過ごすわけにはいかない。ドコモではdブックやdアニメも提供している。NTTグループとしてはそういう考え方だが、いろいろな考え方があるのは承知している」と回答。途中、やや語気を強めたようにも感じられました。

この問題に対して、日本政府は国内の接続業者に対して接続を遮断するよう要請することで決定しました。ただ、ブロッキングについては法的な根拠がなく憲法違反、あるいは緊急避難措置ではなく立法の手順を踏むべきとの批判も聞かれます。

今回、NTTグループが行ったブロッキングも、グループが独自に判断したもの。そこで記者団からは、法律に触れるリスクはどう考えているのか、との質問があがりました。吉澤社長は「NTTドコモとしては、ブロッキングについて政府の決定が出てから検討を始めた。法律にふれるかどうかは、私たちからはコメントしにくい。政府では法務省、総務省といった関係省庁が検討を重ねたと聞いている」と答えるにとどまりました。