ワコムは、VR(仮想現実)/MR(複合現実)/AR(拡張現実)環境での製品デザインやコンテンツ制作に携わるクリエイターに向けた「Wacom Creators' Symposium」を24日に秋葉原UDXで開催しました。このシンポジウムでは、VR/MR/AR業界の先駆者らによる講演のほか、ゲームを中心としたエンターテインメント、インダストリアルデザイン、映画やアートといったテーマでのパネルディスカッションが行われ、数多くの来場者に新たな気付きや驚き、時には笑いを提供していました。
新社長に就任した井出氏、歴史や秘話を語る
「Wacom Creators' Symposium」の口火を切ったのは、本イベントの発起人でもあるワコムより、2018年4月に同社代表取締役社長兼CEOに就任した井出信孝氏による「Wacom Chapter 2」と銘打たれた講演でした。講演で井出氏は、35年前に渋谷のアパートの一室で、たった2名のエンジニアでスタートしたワコムの歴史や、人間とコンピューターとの間に"調和"を創り出すという意図が込められた社名の秘密などが明かされるとともに、これからワコムが向かう方向性を示しました。
娘の手紙に「手書きだから伝わる想いある」
井出氏は冒頭、「これ、私の娘が僕にくれた手紙のメモなんですけど……」と自身のエピソードを交えながら、手書きだからこそ伝わる想いや手書きが持つ力にこだわり、デジタルとの融合で"新たな手書きの価値"が創造できると信念をのぞかせました。
井出氏は、「For a Creative World(創造性が溢れているこの世界!)」という、従来掲げていたビジョンから、今回新たに「Life-long Ink(クリエイターの方と共に、終わりなき創造の旅に出る。)」というビジョンを策定しました。テクノロジーカンパニーとして長年研究・開発し続けてきたデジタルペン、デジタルインクが持つ無限の可能性にフォーカスし、クリエイターはもちろん、あらゆる人に寄り添う道具を創出していくといいます。
デジタルの世界で「紙とペン」の関係を創り出す
授業中に板書された内容をノートに書き写す。真っ白なキャンバスに絵筆を走らせる。こういった、何気ない行為のなかにも「誰が、どこで、いつ、どんな気持ちで書いた・描いたのか」といった背景があり、デジタルペンやデジタルインクによってそれらの背景をデジタル化する。よく"行間を読む"といった言葉を耳にしますが、ワコムはデジタルペンやデジタルインクによってそれを実現していきたい考えを示しました。
例えば、算数の計算問題で結果間違った回答をしてしまったとしても、筆跡や余白へ書き込まれたメモなどからどのように問題に対してアプローチしたのか、その思考の軌跡を伺い知ることが容易になり、より効果的な指導が行えます。一方、クリエイターの作品制作時においても、創造の文脈、つまり作者が創作に至るプロセスを理解することで、より一層作品への理解が深まるといった効果も期待できるでしょう。
既存のワコムユーザーに多かったクリエイターには、最良の表現を具現化するための道具として。そして、我々一般人にとっては何も意識する必要なく使うことができる文房具として。"誰でも、どこでも、いつでも"使うことのできるデジタル文具がどう生まれていくのか、これからのワコムに期待したいですね。