2020年放送の大河ドラマ第59作が、『麒麟がくる』として戦国武将・明智光秀を主人公に描かれる。制作統括の落合将氏は、19日にNHKで行われた制作会見に、主演を務める長谷川博己、脚本家・池端俊策氏と共に出席し、この日を迎えた心境を「感無量」と表現。終了後の囲み取材で現段階の構想を明かした。

  • 落合将

    制作統括の落合将氏

長谷川博己・池端俊策の起用理由

■会見冒頭のあいさつ

2020年は東京オリンピックが開かれる、日本にとってはとても大きな年。その年に、大河ドラマも「大河新時代」を銘打って、最も人気の高い戦国時代を初めて4Kで撮影する大作『麒麟がくる』としてお届けしたいと思います。

人の名前ではないタイトルで珍しいですが、原作もありません。今回は戦国時代そのものを池端先生に、智将・明智光秀の謎となっている若き青春時代から描いていただき、斎藤道三、織田信長、今川義元、秀吉や家康。「戦国一大ビギニング叙事詩」「群像劇」として描いていきたいと思います。

「麒麟」というのは中国の伝説で、王が仁のある政治を行う時に頭上に現れるといわれる聖獣です。その麒麟がどの武将の頭上に現れるのか、有名な武将たちが年若き頃の1540年代、通常の大河ドラマよりは少し遡って「ビギニング大河」を描きます。

学生の頃に池端先生の作品を見て「すごい」と思いながら観ていて、その後、先生はNHKの歴史ドラマ含めたくさんの作品を手掛けられた。2020年というメルクマールの年にお願いするのは先生しかいないんじゃないかと思って、無理を言ってオリジナルで書いていただきたいとお願いしたところ、快諾していただいて夢のようです。

  • 落合将

    長谷川博己(左)と池端俊策氏

光秀はとても謎の多い人物なんですが、今の時代は未来が見えないような時代に突入しているところもあり、それは戦国時代の「未来の見えなさ感」と似ている。光秀が光を求めて、希望を失わず、懸命に未来というものを築いていこうとする人物として描いていく中で、たくさんの武将たちも描いていければと思っています。

先生の台本ですし、とても高度な台本になりますので、その繊細かつ勇猛果敢な若い頃の青春時代からの光秀をどなたにやっていただこうかなと思った時に、「これは長谷川さんしかいない」と。一発目でお願いしたら、朝ドラが決まっていますが「やります」となんとか言っていただいて、これもまた夢のようなキャスティング。感無量でこの日を迎えられて嬉しい次第です。

いろいろなキャラクターが出てきます。光秀を中心にヒロインも出てきますし、そういったキャラクターの一人ひとりが、戦国の厳しい現実で生きていく中で、「生きていくこと」を肯定しながら歩んでいく群像劇。それが今の日本人にとっての指針になったらと、個人的には思っております。

  • 落合将

    NHK『夏目漱石の妻』(16)以来のタッグが実現

「人間ドラマ」としての本能寺

■終了後の囲み取材(記者との一問一答)

――青春群像劇。晩年まで描く予定ですか?

そうですね。はじまりはみんな若いんですよね。まだ信長も元服ぐらいですし、光秀も高校を卒業したぐらいの頃から描きたいと思っているので、前半は青春的。みんな若いですから。戦国武将は今からは想像もつかないくらい、20代、30代くらいで。そこは描きつつ、最終的には本能寺まで行くと思います。間がどのくらいのスパンになるのかはこれから組んでいくので、時間が飛ぶところもあるかもしれません。

――「10代半ば」からですか?

そうですね。「明智光秀」という大河ドラマではないので、少年ぐらいの子役はあるかもしれませんが、すごく小さい明智光秀が出てきてということではないので。途中から描かれる。光秀は「28年生まれ説」を採る方向でおりますので、「ある程度の年からはじめたい」とは池端先生と話しております。

――1話から長谷川さんが登場しますか?

それはまだ未定です。最終決定はこれからです。

――オリンピックイヤーの放送になりますが、放送回数の問題は?

それは編成的なこともありますので、まだ未定です。

――長谷川さんの起用は池端さんの気持ちが強かったからですか?(池端氏が会見で「少し前に『夏目漱石の妻』で長谷川さんと巡り会いまして、人間の内面を表現できる俳優さんではピカイチだと実感しまして、ぜひこの方とまた仕事をしたいと思ってましたところ、この大河ドラマの話をいただきまして、ぜひ長谷川さんとやりたいと思いました」と語ったことを受けて)

それは「あるようでない」というか。基本的には「戦国動乱期からの壮大な叙事詩ドラマをやりたい」というオーダーのもと、池端さんの中で明智が育ってきて、「どなたにお願いしましょうか」というところで、演出の大原(拓)も含めて3人で検討したところ長谷川さんになりました。先ほども『夏目漱石の妻』を一緒にやられているということもありましたが、純粋にこのドラマの明智光秀として、演技力、存在感、今の旬ということも含めて長谷川さんしかいないということで制作として決めました。

――諸説ある「本能寺の変」をどのように描くのでしょうか。何かプランがあれば。

まだそこまでいっていないのですが、あまりミステリーっぽくならず、「誰が裏で糸を引いていた」とか、そういうことではなく。人間関係の中で周囲にいる人間も含めて2人の関係性がある種の蜜月時代、かなり分厚く信長と光秀が描かれると思いますので、その中で周囲の人間も含めて、どうなっていくのか。「人間ドラマとしての本能寺」になると思います。今のところ、決めているプランはありません。

――長谷川さんは会見で、光秀は「今の日本に必要な人材」とおっしゃっていました。このことについてどのような印象を持たれていますか?

光秀を通して戦国時代を描くドラマです。光秀は勝者の視点をそれほど持たなかった人かもしれません。常に自分は陰にいて生涯を全うした方。敗者の視点も含めて大きく持っていたのではないか。それは今の時代としては共感を得るに値するキャラクターではないかと思います。

――NHK連続テレビ小説『まんぷく』から撮影が続くことについて。

こちらでお願いしたのは『まんぷく』が決まった後だったので、多少は躊躇しました。長谷川さんから「長丁場だから、すぐはできない」と言われたらそれまでだったんですが。過去には1986年の4月から10月の『はね駒』に渡辺謙さんがヒロイン・斉藤由貴さんの夫役で出演してその直後に、東京朝ドラだから長谷川さんよりももっと短いんですが、翌年の『独眼竜政宗』で主演を務めた例はあります。謙さんに続きで、初めてではないです。

保守的な信長・親子二代の斎藤道三

長谷川博己

渡辺謙以来2度目の「朝ドラ・大河主演」連続撮影に挑む長谷川は気合十分「やり遂げたい」

――「大河新時代」とは? 4K放送も含まれているのでしょうか?

大河の人気が高いのは戦国時代。昔からそういう伝統がある中で、それを初めて4Kでやるという意味では確かに大河新時代です。2021年、22年、23年とどうなっていくのか分かりませんが、かつての大河ドラマよりも歴史の研究が進んでいて、斎藤道三は親子二代。今となっては一人で描くと、わりと「えっ?」と思われる方の方が多い。当たり前のように親子二代という解釈となっていて。そういうところを採り入れて、今回も二代説の息子の方で道三を描きます。ですから、信長もある種の保守的な側面を。父親からいろいろ引き継いでというところも、今までのマントを着て傍若無人な信長像よりもさらに今の研究も含めて咀嚼した上で、新たな信長像を描きたい。つまり、いろいろな研究を含めて、新解釈を採り入れていくというところでの「大河新時代」です。

――ゆかりのある京都や滋賀では待望論がありました。現地のロケは?

まだ脚本も書かれてない状況ですので「こうなります」とは言えませんが、できる限りご当地でのロケも入れていきたい。ですが、収録の状況等いろいろあります。最初は美濃から入りますので、美濃や近江、京都、福知山とかその辺りをどういう塩梅で撮影していくのか。大河は最近、後半はセット撮影が多いですから。セットの中に外を作ってですね。どこでやるのかは未定です。