集英社は4月19日、「出版社の海賊版サイトへの対応に関する誤情報流布について」という文書を公開した。文書では、出版社が海賊版サイトに対してとっている対応に関して、誤った情報が流れているとし、集英社は悪質な著作権侵害事案に対し厳正に対応していると述べている。
いったいどういうことなのか、集英社広報部に問い合わせると、「誤った情報」とは、ネット上で「出版社が海賊版サイトに対し、なんの対策もしていない」と、無策を批判されていることを指すとのこと。政府がサイトブロッキングの要請を決定する前から、集英社は10年以上にわたり海賊版サイト撲滅に尽力してきたという。
海賊版サイトの運営管理者の特定が困難となり、著作権を侵害しているコンテンツの削除要請すらできない海賊版サイトが多く出現している現状を受けて、日本政府は4月13日に、海賊版サイト「漫画村」「Anitube」「Miomio」に対してサイトブロッキングを行うよう、民間のISP事業者(インターネットサービスプロバイダ)に求める方針を決定した。
KADOKAWA、講談社、集英社は4月13日にそれぞれ「海賊版サイトについての緊急声明」をWebサイトに提示し、サイトブロッキングを支持する意向を示している。
ネット上では、サイトブロッキングの要請に関して「コンテンツ保護が第一なのでは」と賛成する意見のほか、「サイトブロッキングを行う前に、もっと対策を練ることができたのではないか」と疑問の声もあがるなど、様々な議論がなされた。一部では「出版社は海賊版サイトに対してなにもしていない」という意見も見られ、Twitter上ではそういったツイートが拡散されていた。
集英社の広報部に、海賊版サイトへの具体的な対応策を尋ねると、海賊版サイトへの削除要請・警告書の送付や、インターネット広告の出稿停止要請などの対策をしてきたと回答を得た。集英社広報部は、「今後も粛々と、これまでと変わらずに海賊版サイト撲滅に務めていきたい」と話す。集英社がとってきた具体的な対策は以下の通り。
- 海賊版サイトへの削除要請・警告書の送付
- 国内外のISP、サーバーへの削除要請・警告書の送付
- レジストラへのドメイン閉鎖要請
- リーチサイトが使用するサイバーロッカーへの削除要請
- 裁判所での発信者情報開示請求可処分手続き(プロバイダに対して、ネット上で他者を誹謗中傷するような表現を行った発信者の住所や電話番号といった情報の開示を求めること)
- 検索サービス提供事業者へ検索結果からの表示抑制要請
- インターネット広告の出稿停止要請
- 「FreeBooks」に対して、出版社連合で海外サーバーに対しての現地での法的アクション
- 「はるか夢の址」「ネタバレサイト」「漢化組」案件では、警察と連携しての摘発
- 教育機関での普及啓蒙活動
また、業界団体であるコミック出版社の会は4月20日、「海賊版サイト対策に関する緊急声明」を発表。「マンガが作り出される現場に立ち会うものとして、漫画家の努力と才能に対して支払われるべき正当な対価が、海賊版サイトに奪われている事実に対して、強い憤りを感じている」とし、より効果的な対策が今後講じられることを望むと述べた。
コミック出版社の会は、コミックを自社で取り扱う出版社による団体。秋田書店、宙出版、KADOKAWA、講談社、集英社、小学館、少年画報社、新潮社、スクウェア・エニックス、竹書房、日本文芸社、白泉社、双葉社、芳文社、リイド社で構成される。今回、コミック出版社の会が声明を発表したことで、コミック作品を取り扱う大手出版社のほとんどが政府の対策を歓迎する構図となった。