これまで、さまざまな企業を取材してきたが、様相が変わりつつあるなというのが正直な感想だ。どう変わったかというか、もとに戻り始めている印象がある。
近年、ICT技術の進展により、コミュニケーションをビデオチャットなどで済ます企業が多くなったが、やはりフェイス・トゥ・フェイスによる信頼関係構築を重視する企業が多くなった気がする。
だが、お互いにやりとりするデータ量は増え、しかもセキュアな環境でデータを取り扱わなければならないという方向性は変わらない。そして、リモートワークという流れが強まり、本社とのデータ共有というのが重要になってきた。そこで、データ復旧や共有クラウドといったサービスを展開する、AOSリーガルテック 代表取締役社長 佐々木隆仁氏に話を聞いた。
まず、同社が力を入れているのはバーチャルデータルームだ。これは、認証されたものでしかアクセスできないクラウドシステム。このシステムが開発された経緯が少しユニークだ。
紙の契約書が多い日本のM&A
日本では、紙資料や紙の契約書が圧倒的な効力を持つ。たとえば企業のM&Aの場合、何枚もの紙の契約書が交わされて進められている。しかし、これでは時間がかかるうえ、契約書の確認作業に何人もが目をとおす。ともすれば、契約書の紛失などで、交渉が一時頓挫する事態になりかねない。
日本ではM&Aが頻繁に行われるようになったが、吸収合併が下手、という印象が国際的に認識されているのが現状だ。そうしたM&Aの現状をサポートするという意味で、バーチャルデータルームの需要が高まったという。