職場の上司や先輩、取引先との“ビジネス飲み”や“ビジネスカラオケ”。それは友人同士で気軽に行くものとは全く違い、慣れない若手社会人にとってはどのように振る舞えばいいのか戸惑うことも。そこで今回、そんなビジネス飲みやビジネスカラオケを日々間近で見てきたスナックのママに、接待や上司とのお酒の席で気をつけたいポイントについて、お話を聞いてきた。25年間、さまざまな企業や職種の人々をカウンター越しに見てきたママが語る、3つの極意とは……?

  • スナックママに聞く、ビジネスカラオケ&飲み会の3つの極意

    百戦錬磨のスナックのママが教える極意とは

今回インタビューしたのは、東京・広尾のカラオケスナックで20年以上ママを務めるMさん。都会の中心にある同店には、大企業から中小企業まで、さまざまな職種のビジネスパーソンが訪れる。

どんな時も“社交場”であることを忘れない

――まず、カウンター越しにさまざまな方々の接客をされてきて、取引先や上司とのお酒の場で上手く振る舞う“コツ”ってどんなものだと思われますか?

「やっぱりいつも忘れてはいけないのは、どんな場所も“社交場”だと言うことですよね。仲間内で飲んでいたとしても、隣の席が取引先の社員さんだったり、ライバル会社の人だったりすることもあるわけじゃないですか。実際、お客様同士が後から気づいて『うわー』となったこともあるんですよ」

――ドラマとかでよく見るヤツだ……。

「だからこそ、“お酒に呑まれない”っていうのも大切だと思います。お酒を飲まない人には、『酔ってたから』と言うのは通用しません。仲間内の飲み会であっても、ベロベロになって潰れたり、絡んだりというのは、やっぱり場の雰囲気を壊してしまいますよね。うちのお店でも、それで出入り禁止にさせてもらってる人もいますし」

――たしかに、暴れたり暴言吐かれたりすると、一気に場が冷めていきますよね。お酒が飲めない、弱い場合はどうすればいいのでしょうか?

「大手企業のエラい人だって、お酒を一滴も飲まない人もいますよ。ムリして飲んで潰れちゃったり失敗しちゃったりするなら、最初から飲まない方がいいと思います。飲める人でも、接待などで場の雰囲気を壊したくないけど、もう飲めないなという時にはこっそり『次からお茶だけにしといて』とおっしゃるお客様もいます。」

  • スナックママに聞く、ビジネスカラオケ&飲み会の3つの極意

    「酔ってたから仕方ない」は通用しない!

――豪快に飲んでると思ってたら、実はウーロン茶だったってこともあるんですね。

「うちのような対面のスナックだと、こちらがお客様の顔色を見て『この人もう飲まない方がいいな』と思ったら、お茶をお出ししたりしますけどね。居酒屋とかなら、周りの人が気づいてお茶やお水をすすめてあげたほうがいいですね。人の“飲みグセ”を把握しておくっていうのも大事なのかな。『この人は酔うと暴れるからこれ以上飲むとヤバイな……』とか」

――スナックのママさんはそんな気遣いまでされているんですね。

「家に着くまでに転んで怪我したりしたら大変じゃないですか。でもやっぱり出世されているような方は、偉くなっても自分の体調をちゃんと管理して、飲みすぎないように気をつけられている方が多いですね。最初にも言ったように、特にこういうお店は“社交場”でもありますから、どこにビジネスチャンスがあるかわからないんですよ」

――みんなそうやって“呑まれない”努力をしているんですね。ビジネスチャンスと言うのは?

「若いお客様でも、気づいたら隣に座ってる別のお客様と名刺交換している人だっています。『明日訪問してもいいですか?』とか会話してビジネスチャンスに繋げてるのを見ると、こっちも驚いちゃいます。常にアンテナを張ってるんですよね」

ビジネスカラオケは準備と気配り

――こちらのお店はカラオケも楽しめるお店ですが、取引先や上司との“ビジネスカラオケ”で気をつけたいことなどはありますか?

「接待で来店頂いた時ですけど、取引先のライバル会社のCMソングを歌っちゃって、上司の方に怒られていたお客様はいましたね。事前に取引先とライバル会社のCMソングを調べておいたり、そういう準備をしている人もいらっしゃいますから。あと、取引先や上司の十八番を事前に調べておいて、『あれ歌ってください!』と勧めたり、練習してきて一緒に歌ったりしてる人もいますね」

――みんなそんなことやってるんだ……。

  • スナックママに聞く、ビジネスカラオケ&飲み会の3つの極意

    取引先のCMソングや上司の十八番をメモしてポケットに忍ばせよう

「まぁ、やるとなると大変ですよね(笑) でもお酒の席とはいえ、取引先の接待や上司との重要な場なら、仕事と同じように準備したりするのは大事なんじゃないかなって思います。若い人でも、男性でも女性でも、そういうのやってる人はいます。」

――職場の人と行くカラオケって、年齢層も幅広くて何を歌ったらいいのか分からなくなってしまいます。

「うーん……ザ・ベストテン世代がオススメかも。中森明菜とか松田聖子とか、上は60代、下は30代くらいの方まで分かりますよね。あと、ヒットした映画やドラマの主題歌とか、ジブリの曲もみんな知ってて盛り上がりやすいですね。年配の男性でも『崖の上のポニョ』歌ったりしますよ(笑)」

――普段コワイ上司がポニョ歌ってたらなんだか見る目変わっちゃいますね(笑) 盛り上げ方のコツなどはありますか?

「誰かが歌っているところにハモるのであれば、『ハモっていいですか?』など一声かけた方がいいと思います。声が大きすぎるハモりや、上手過ぎるハモりはイヤがる人が多いですけど(笑) 合いの手とか歌い終わった後の拍手なんかは、やっぱりよろこばれますよ」

デキる人はいつも全体を見ている

――いくら盛り上がっていても、気配りを忘れてはいけないということですね?

「そうですね。お酒の席でもカラオケでも、気配りっていうのは本当に大事だと思います。取引先でも上司でも後輩でも、この人これ以上飲むとダメだな、と思ったらさりげなくお水を頼むとか、後輩が時計をチラチラ見てそわそわしてたら『時間、大丈夫?』と声をかけてあげるとか。デキる人はつねに全体を見ているなって言うのが、ココ(カウンターの中)から見ていてよくわかりますよ。」

  • スナックママに聞く、ビジネスカラオケ&飲み会の3つの極意

    大事な席では広く全体を見る

――そういう気配りや全体を見る力は、やはり持って生まれたセンスなのでしょうか……。

「どうですかね、若い人でもデキる人はデキるけど。でもうちにいらっしゃるお客様でも、上司の方に連れられて何回かいらしている間に変わっていく人もいますよ。経験の中から反省したり学んだりして、だんだんと気配りができる人になっていくこともあると思います。いいものも悪いものも、周囲の人の振る舞いを見て学ぶことが大切なんじゃないかな」

――失敗から学んでデキるようになる、というのもあるんですね。ありがとうございました。

今回はスナックのママの目を通して、お酒の席やカラオケでのマナーや振る舞い方を紹介したが、飲み会だけでなく普段のビジネスシーンでも意識したいポイントも多かった。

・事前準備と相手への気配りを忘れない
・お酒に呑まれないよう自分の体調は自分で管理する
・デキる人はいつも全体を見ている

特にこの3点を忘れず、どんな時も“デキる”ビジネスパーソンを目指そう!

イラスト:タカハラユウスケ