では、シスコでは、「働きがいのある会社」になるために、どのような取り組みを行っているのか?

まず、「やりがい」の部分について鈴木社長は、「シスコでは、社員が自律的にコラボレーションしあうことによって、イノベーションが促進されると確信しています。そういう企業になるためには、共通の価値観を共有していることが重要です。そのために、全社のビジョンや戦略、行動指針をまとめたカードを全社員が携帯しています。そして、これらの理解を深め、共感してもらうために、マネージャー向けのワークショップ、社員間の懇談会、社員イベントなどを通して、社員同士が語り合う場を設けています。こういった場は、互いの多様性を尊重し、異なる価値観を共有して、社員が協業して新たなイノベーションを生み出していく意図を持っています」(鈴木氏)

  • 全社のビジョンや戦略、行動指針をまとめたカードを全社員が携帯

また、2015年から「Our People Deal」という新たな人事のフレームワークを導入し、会社が社員に提供するものと、会社が社員が期待するものを明確にし、会社が社員の成功を支援している一方で、会社とお客様に対する貢献を求めている。

  • 「Our People Deal」

「Our People Dealによって、それまで行っていた年単位での評価を行い、報酬を決める制度を廃止しています。その代わり、毎週、社員の仕事の進捗や悩みを上司と対話する機会を設けています」(鈴木氏)

また、日本独自の経営変革の取り組みについて同氏は、「私が社長になってすぐ、若手社員中心の組織横断型のプロジェクトチームをいくつか立ち上げました。そこで、生まれたのが中堅中小企業向けの日本発のブランド『Cisco Start』です。そのほか、製造業を支援するスマートファクトリーやスマートシティといった分野で企業や自治体との連携を深めています。ただ、社員が共有しているのはこういった成功体験だけでなく、失敗と学びも共有し、改善や次の成功につなげています。ベストロスという失敗の共有を行う掲示板も設置しました。こういった活動により、2017年度のシスコのベストカントリーを受賞しました」(鈴木氏)

  • 社員の参画と成功、失敗の共有

また、全社員参加型の共通体験づくりとしてオリンピックアナバサダーを任命して、オリンピックに協力する体験を全社員向けに情報発信しているほか、長期に残る価値ある遺産として、東京2020レガシープロジェクトの社員から募集。具体化を検討している。

そのほか、働きやすさの追求では、ワークスタイル変革として、全社員参加できるテレワーク制度を導入している。

そして最後に鈴木氏は、「これらの社内で実践した働き方改革を顧客に提案していきたいと思います」と語った。