スマートフォンは、携帯電話とコンピュータ両方の顔を持ちます。ですから、スペック表を見れば専門用語のオンパレード……これではおいそれと比較できません。このコーナーでは、そんなスマートフォン関連の用語をやさしく解説します。今回は「VCSEL」についてです。

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VCSEL(Vertical Cavity Surface Emitting LASER)とは、垂直共振器面発光レーザーと訳される部品のことです。微細なレーザー光を基板の垂直方向に射出することで、さまざまな用途に活用されます。スマートフォン関連分野では、iPhone Xの顔認識機構「Face ID」、左右独立型イヤホン「AirPods」の近接感知機能での利用が知られています。

この部品は高出力用途に向いていませんが、消費電力が小さい、大量生産しやすく低価格などスマートフォンに適した特性を持っています。部品供給可能な企業が限定されることもあり、採用しているスマートフォンは限られますが、今後の増加が予想されます。

iPhone XのFace IDを例にすると、VCSELが射出するレーザーは特殊なレンズの働きで赤外線に変換され、3万以上のライトとして対象物である人間の顔に照射されます(この部分はドットプロジェクタと呼ばれます)。そこから反射があるまでの時間を測定することで、顔認識を実現しているのです。顔の動きにあわせてイラストが動く「Animoji」も、このしくみを応用してユーザの表情の変化を読み取っています。

Face IDはおもにセキュリティが目的ですが、Animojiという活用事例もあるように、VCSELはエンターテインメント分野での応用も期待されています。AR(拡張現実)アプリでは、家具など周囲の物体を認識し距離を測定するためにVCSELの機能が欠かせません。また、VCSELが高性能なほど(現実の)映像へのアニメーションなどバーチャル映像のはめ込み精度が高まるため、今後の技術向上が期待されています。

  • iPhone Xの顔認識機構「Face ID」には、VCSELが活用されています