出産した次の日、初めて季之介(ときのすけ)に母乳をあげた。
初めての授乳は上手くいかなかった。あげる側ももらう側も初めて同士だから、なかなかお互いのタイミングが合わない。四苦八苦していたら、助産師さんが助けに入ってくれた。
搾った私の母乳を助産師さんが指先にのせて赤ちゃんの口に運んでくれた。「これがお母さんのおっぱいの味だよ。よく覚えておくんだよ」と言いながら、何度も季之介の口に母乳を運んでくれた。とても嬉しかったことを覚えている。初めて見た自分の母乳は黄色味がかった濃いクリーム色をしていた。栄養たっぷりの証。
授乳室でほかのお母さんたちを観察していると、みんな横抱きで授乳していた。私も横抱きで授乳を試みるが、上手くいかない。私が悪戦苦闘している間に季之介は寝てしまった。試行錯誤の上、私たち親子は縦抱きで授乳するスタイルが一番しっくりきた。私の体勢は少し辛いが、季之介は飲みやすそう。
退院してから母乳育児は軌道に乗り、月齢が上がっていくと旦那さんの出番がやってきた。お父さんの授乳。
夜寝る前のおっぱいをあげる係を旦那さんにお願いした。美味しそうに飲む季之介の姿を自分の腕の中で見て欲しいと思ったから。「飲んでる姿可愛いね」「そうでしょ、可愛いでしょ」可愛い我が子の姿は夫婦で共有しなければ損だ。