ビデオレコーダーといえば「テレビの録画」です。ビデオテープからDVDへ、DVDからハードディスクへと録画メディアの主役は移り変わりましたが、いかに画質を損ねずテレビ番組を長時間録画できるかや、宅外から録画予約などの便利機能を使えるかが、製品としての訴求ポイントでした。我々消費者も、そこに注目してきたといえるでしょう。
しかし、パナソニックが4月3日に開催した、ブルーレイディスクレコーダー「おうちクラウドディーガ(DIGA)」の新製品発表会は、様子が異なりました。創業100周年のパナソニックが推進する「Creativeセレクション」の説明がひととおり終わっても、「録画」や「画質」といったキーワードが出てこないのです。
創業100周年を迎えるパナソニックは、「提供価値の革新」と「お客様とのつながり強化」という2つのテーマを前面に打ち出しています。製品(モノ)を売るだけでなく、製品によって実現される利便性や豊かさ(コト)を重視。共働き世帯やDEWKS(共働きで子育てする夫婦)に対して、家電で実現できるものとして、新しい価値・提案性ある製品を「Creativeセレクション」のもと展開してきました。ユーザー登録の「Club Panasonicオーナーズサービス」や優待制度の「OWNERS SERVICE」は、後者のつながり強化の施策です。
ロボット掃除機や洗濯乾燥機は「家事シェア」、調理家電は「おいしい7days」、ヘルス家電は「健康なわが家」、テレビや音響機器は「どこでも楽しむAVライフ」と、4つのキーワードに基づき製品展開されてきたところに、5つめのキーワードとして「家族をつなぐ」が追加されました。今回発表されたディーガの新モデル(6機種)と、2月発売のLED照明「AIR PANEL LED」、参考展示された短焦点プロジェクタ「インテリアシアター(仮称)」は、そのキーワードを具現化した製品ということになります。
一方で、家族のあり方は変化しています。
パナソニックが実施したアンケートによれば、離れて暮らす親と会う回数は月に1回以下という30~40代夫婦世帯は60%を超える一方、「離れて暮らしていても家族」という認識が浸透しているとのこと。このような状況に対する提案が「おうちクラウドディーガ」で、撮影した写真や動画を同居する家族で見たり、離れて住む親と共有したり、離れていても家族とのつながりを持ちコミュニケーションを増やすことが重要なコンセプトです。
新ディーガの見どころと「プロジェクタの復活」
新しいディーガは、最大10チャンネルのデジタル放送全番組録画に対応した「おうちクラウド全自動ディーガ」が3モデル、最大6チューナー搭載の「おうちクラウドディーガ」が3モデルです。
6モデル共通の進化点としては、「おうちクラウド」機能の強化が挙げられます。スマートフォンアプリ「どこでもディーガ」を利用すれば、録画番組だけでなく写真・動画や音楽を鑑賞できるほか、スマートフォンで撮影した写真・動画を「おうちクラウドディーガ」へ送信することも可能。SNSアプリ「LINE」との連携も強化され、地デジに加えてBS/CSの番組検索/録画予約にも対応しました。
おうちクラウド全自動ディーガでは、特定ジャンルの番組を長期間保存する「おとりおき機能」を強化。以前はゴールデンタイム(19~23時)のドラマを最大90日間保存できたところが、新モデルでは午前(5~12時)、午後(12~19時)、深夜(23~5時)の指定、そしてアニメの選択もサポートしました。
おうちクラウドディーガの(チューナー/HDDを除いた)基本スペックは3モデルとも共通です。6チューナー搭載のDMR-BRG2050では、1日最大6チャンネルを最大8時間自動録画するという、全録に近い使い方が可能になっています。アクトビラ、NETFLIX、Hulu、Amazonプライム・ビデオなどのVODサービスも、おうちクラウドディーガ3モデルの中ではDMR-BRG2050のみの対応です。
おうちクラウド全自動DIGA(税別の推定市場価格)
- DMR-UBX7050(11チューナー/7TB HDD) : 230,000円前後
- DMR-UBX4050(7チューナー/4TB HDD) : 160,000円前後
- DMR-BRX2050(7チューナー/2TB HDD) : 90,000円前後
おうちクラウドディーガ(税別の推定市場価格)
- DMR-BRG2050(6チューナー/2TB HDD) : 85,000円前後
- DMR-BRW1050(2チューナー/1TB HDD) : 60,000円前後
- DMR-BRW550(2チューナー/500GB HDD) : 52,000円前後
今度の発表会では、「インテリアシアター」という呼びかたで短焦点プロジェクタが参考出品されていました。パナソニックは2008年を最後に家庭向けプロジェクタ製品から撤退し、業務用のみ展開していましたが、このインテリアシアターはテレビ部門が企画・開発にあたっているとのことですから、家庭向けプロジェクタの復活といえそうです。
あくまで参考出品ということで、投写方式や解像度など詳細は一切明かされませんでした。展示からは、壁近くに設置する短焦点型であること、家庭のリビングでも見やすい高輝度設計であることがわかりました。ひと抱えほどの直方体表面はサランネットのような素材で覆われ、単体で映像と音の両方を出力できることも確かです。
背面には、映像/音声入力用と思われるHDMI端子×2基が配されていますが、展示ブースのパネルには「無線LANでディーガと接続できる」と書かれています。リモコンには「DLNA」と刻印されたボタンがありましたから、このインテリアシアターはレンダラー(DMR)としての機能を持つものと考えられます。スマートフォンの動画・写真をキャストする機能もありそうです。
気になる発売日と価格は、発売が「2018年度の遅くない時期」、価格が「誰でも手が届く価格帯」とのこと。続報を期待しましょう。