外為どっとコム総合研究所の神田卓也氏が2018年3月の為替相場レビューと、今後注目の経済指標やイベントをもとにした今後の相場展望をお届けする。
【ドル/円 3月の推移】
3月のドル/円相場は104.624~107.288円のレンジで推移し、月間の終値ベースでは約0.4%の小幅な下落となった。ただ、23日に付けた104.624円の安値は2016年11月以来約1年4カ月ぶりの水準であり、月足は年初来3カ月連続で陰線引けとなった。
(1) 米中貿易戦争への懸念、(2) 米政権人事を巡る不透明感、(3) 森友文書改ざん問題によるアベノミクスの推進力低下観測、などがドル/円相場の重しとなった。
もっとも、23日に1年4カ月ぶりの安値を付けた後は、米中両国が通商問題の交渉に前向きな姿勢を示した事で貿易戦争の懸念が緩和した事や、北朝鮮が国際社会に歩み寄る姿勢を見せた事などから下げ渋った。さらに、四半期末が接近するにつれて年始からのドル安に対する調整が入ったと見られ、月内最終応当日となった28日にはロウソク足の実体部だけで1.5円に及ぶ大陽線が出現。ほぼ横ばい圏と言える水準に戻して3月の取引を終えた。
【ドル/円 4月の見通し】
2018年第1四半期のドル/円は、113円台から104円台まで右肩下がりの相場展開となっただけに、第2四半期のスタートとなる4月相場の展開が注目されるところだろう。足元で、「トランプ・リスク」に対する市場の嫌悪感は根強いものがある。このため、引き続き、通商問題などがドルの上値を抑える可能性は否定できない。
ただ、米政権の対中関税措置には発動前に60日の審議期間が設けられるなど、協議による修正の余地が残されている事もわかってきた。トランプ米大統領としては中国との全面対決を望んでいる訳ではなく、秋の中間選挙に向けたアピールとして、通商交渉で中国側の譲歩を引き出す狙いが強いと見られる。そもそも、中間選挙へのアピールの結果、(貿易戦争の影響で)米景気を失速させてしまっては元も子もないだろう。
米中貿易摩擦への懸念は一気に緩和する事はないかもしれないが、これ以上悪化する事もないと考えられる。こうした観点から、「トランプ・リスク」はドル売り材料としての鮮度が落ちつつあると言えるのではないだろうか。そうした中、米経済の強さというファンダメンタルズ面に市場の視線が向かえば、ドルが反発してもおかしくない。
4月は、新年度入りで本邦投資家の海外向け投資の活発化も期待できる。ドル/円は、下値不安が消えたとまでは言えないが、以前の下値支持であり2月に下抜けた事で下げが加速した108.00円前後の水準や、年始からの下げ幅の半値戻しにあたる109.00円前後の水準までは値を戻す余地がありそうだ。
【4月の日米注目イベント】
執筆者プロフィール : 神田 卓也(かんだ たくや)
株式会社外為どっとコム総合研究所 取締役調査部長。1991年9月、4年半の証券会社勤務を経て株式会社メイタン・トラディションに入社。為替(ドル/円スポットデスク)を皮切りに、資金(デポジット)、金利デリバティブ等、各種金融商品の国際取引仲介業務を担当。その後、2009年7月に外為どっとコム総合研究所の創業に参画し、為替相場・市場の調査に携わる。2011年12月より現職。現在、個人FX投資家に向けた為替情報の配信(デイリーレポート『外為トゥデイ』など)を主業務とする傍ら、相場動向などについて、WEB・新聞・雑誌・テレビ等にコメントを発信。Twitterアカウント:@kandaTakuya