eスポーツエコシステムを拡大するために3年で20億を投資

サードウェーブは4月3日に都内で製品発表会を開き、ゲーミングパソコン「GAMEMASTER」の2018年モデルを発表し、併せてeスポーツを軸とした新たな事業戦略を説明しました。

2018年モデルの特徴は最新パーツの採用と新発想のエアフロー「圧力冷却」です。エアフローを見直すことで従来と同等の冷却性能を、静音構造で実現したとのことでした。

システム構成はBTOなので変更が可能ですが標準構成が4種類用意されています。ケースはミドルタワーとミニタワーの2種類なので合計8モデル構成となっています。

  • お披露目されたGAMEMASTERの2018年モデル。マザーボードと筐体による違いはあるが、ATX、MicroATXともに4モデルがラインナップされる

  • 正面パネルはゲーミングPCに見えない「静のデザイン」。一方、左側面は全面ガラスとなっており、ハデさを演出することも出来る

  • 圧力冷却により開口部は小さ目だが、底面にはメッシュフィルタ付の開口部も用意されている

  • 参考出品されたLEDファン付モデル(CPUも簡易液冷)。ケーブル類が背面ケーブルでスッキリとしているのも魅力

  • 右上に見えるのがHDDベイ。ミドルタワーモデルはこのように2つ用意されており、増設可能だが、ミニタワーモデルは1つしかないので注意してほしい。SSDはマザーボードの裏側に配置されていた

事業戦略に関してはサードウェーブの常務取締役・榎本一郎氏が説明しました。世界のeスポーツ業界は右肩上がりであるとしている一方、複数の調査会社によれば、その数字には調査によって大きな差があると述べ、「eスポーツ業界と一言で言っても、いろいろな側面がある」と指摘しました。これはすなわち、単なるゲーミングパソコンや周辺機器、ゲームソフトといったeスポーツに直接関わるものだけではなく、プレイヤーのコーチングや映像配信、マーケティングというエコシステム全体を考えるとさらに規模が大きくなるということを意味していると言えます。

  • サードウェーブ 常務取締役の榎本一郎氏

  • 世界のeスポーツ市場は着実に伸びている。2020年には2,000億に達するが、別の調査会社では5,000億円という数字もあり、周辺市場も含めると市場規模は大きい

日本に目を向けると、2月に3つのeスポーツ団体が合併しバリューチェーンが広がっただけでなく、Jリーグや吉本興業といったリアルスポーツや異業種からの参入もあり、今後は様々な大会が開かれると予想されています。

  • 日本においても、統一団体が発足しプロライセンスとJOC公認を目指している他、リアルスポーツチームや異業種からの参入もあり、盛り上がりを見せつつある

eスポーツを足場にいろいろな形で新しいプレーヤーが市場に参入し、新しい事業、投資とチャンスが芽生えてきたのが最近の動きです。このように大きなバリューチェーンの市場が生まれたのが面白いと榎本氏は語りました。

野球やサッカー同様にゲームでプロが生活できる環境が生まれるようなエコシステムを醸成し、サードウェーブとして今後3年間に20億円を投資することで、その発展に貢献したいと語気を強めます。

  • サードウェーブとしてはeスポーツというエコシステムを拡大することに貢献し、更なる市場の拡大の一助となればという考えだ

榎本氏は長年外資系パソコン業界に在籍していたこともあり「彼らにはできないような事をしたい」と語りました。来週池袋にオープンするeスポーツ施設「LFS(ルフス)」もその施策の一つであり、ゲーマーがいつでも来て練習をしたり、イベントを開催するような場が榎本氏の考えるeスポーツエコシステムのある種の形なのでしょう。

安定、安心、快適をキーワードに「PCゲームを遊ぶためのゲーム機」に

引き続きサードウェーブのゲーミング部・瀧吉祐介氏が、新製品の概要を紹介しました。「PCゲームを遊ぶためのゲーム機」をコンセプトにしており、GAMEMASTERさえ買えば動作確認のとれたゲームタイトルを40種類以上楽しめます。

  • サードウェーブ ゲーミング部の瀧吉祐介氏

  • GAMEMASTERは、多くのPCゲームの動作サポートと24時間サポートがあるのが特徴。2つのサポートでパソコンに不慣れなユーザーにも対応する

製品ミッションとして安心、安定、快適をキーワードにしており、特に安定面に注力しています。その安定面を支える機能として電源とエアフローの2つを挙げました。電源は公式大会でも使われる実績がある製品を使用し、冷却に関しては今回「圧力冷却」を採用しました。

従来のPCケースは開口部を増やすことで冷却効率を上げていましたが、他方、音が漏れやすいという欠点がありました。新ケースでは、吸気と排気のエリアを分けることでケース内の圧力で熱気を追い出す設計になっています。エアフローを上げるために電源をチャンバー構造にしているだけでなく、エアフローを阻害する要因となるワイヤーを裏に回しています。そしてドライブベイも意図的に減らすことでエアフローの障害を削減しているのです。

  • イベント同日発表のH370チップセットをはじめとする最新パーツを採用し、3Dゲームも快適に動作

  • 安定動作に欠かせない高品質電源と効果的なエアフローのケースを採用

  • エアフローの概念図。開口部をあえて減らしつつ、圧力差で効率よく空気を流す仕組み

また、いかにもゲーミングPCというデザインではなく、万人ウケしそうなシックなデザインを採用しました。とはいえ、左サイドには、全面ガラスパネルを配して、ある程度の目立ち要素も取り入れています。

パーツは最新製品を使用し、CPUはIntelの第8世代Core iシリーズを、発表されたばかりのH370チップセットを使用したASUS製マザーボードに搭載しています。グラフィックカードはNVIDIAのGeForce GTX10シリーズを装備したPalit製品を採用しています。

  • ゲーミングPCにありがちなハデなデザインを正面パネルから廃している

  • 第8世代Intel Core i7やH370チップセットにNVIDIA GeForce GTX10シリーズとゲーミングPCにふさわしいパーツを採用

  • さらにマザーボード、グラフィックボードも実績あるメーカー品を使用している

Q&Aではミドルタワーとミニタワーの差についての質問が投げかけられました。これに榎本氏は「性能差はなく、マザーボードとケースだけ異なる。自室プレーの場合ミドルタワーは大きいと思っている」と回答し、日本の住宅事情を考えるとミニタワーを勧めたいというスタンスがうかがえました。また、昨年高額賞金で話題となったGAMEMASTER CUPもタイトル等を含めて練り直している最中という回答もありました。

  • 当日のゲストスピーカーである一般社団法人 日本eスポーツ連合 専務理事の平方彰氏。サードウェーブによるパートナー契約も新団体に引き継がれるという

  • インテル 執行役員 第3営業本部 本部長の藤木貴子氏。インテルもIntel Extreme Mastersというeスポーツ大会を開催している

  • NVIDIA Japan コンスーマー マーケティング部長 兼 セールスマネージャーの高橋一則氏。「日本に足らなかったのはeスポーツスタジオでLFSが楽しみ」という

  • 日本マイクロソフト コンシューマー&デバイス事業本部 デバイスパートナー営業統括本部 執行役員の梅田成二氏。Windows10はゲーミングというシナリオにも特化した仕組みを用意しているという