最強すぎる激シブ名優リーアム・ニーソンが、極限の状況下で理不尽な難題に身を投じて行くサスペンス・アクション『トレイン・ミッション』が3月30日に公開を迎えた。『96時間』の大ヒット以降、アクション俳優としても覚醒した演技派が、公開を前に13年ぶりに来日。いいアクションやいい映画を撮るための秘訣や、アクション俳優としてセカンドブレイクしている現状について、また気になる『スター・ウォーズ』へのカムバックへの意欲などを聞いた。
――今回の主人公もそうですが、まるで本当にいるような存在感ですよね。どのようにキャラクターを演じているのでしょうか?
カメラの前で演技をする際には、演じる人間が自然に持っているオーラが、カメラを通して観客に伝わらなければいけないと思っている。人によっては付け鼻をしたり、ヘンなアクセントで話す人もいるけれども、僕は外見を変えたりすることにまったく興味がない。何をしていようとも演者自体のオーラは滲み出るものだと思っていて、そして口にするセリフは台本に書いてあることだけれども、そこには真実味がなければならないと思う。
――今回演じたマイケルは、特に普通の男でしたよね。
確かに彼は、かつてはいい警官だったと思うけれど、いろいろあって保険屋になっている。でも、すごくいい倫理観を持った男だと思うし、そういう意味ではひとりの人間として僕自身も同じようにいい倫理観を持っていると自負しているから、キャラクターに滲み出すことに努めて、それを守っていたよ。決してやってはいけないことは、演じようとすることだ。そうじゃなくて、その瞬間にそこにいること、そこがポイントじゃないかな。
――監督とも4度目のタッグということで、面白い映画を作る方程式みたいなものが、すでにあるのではないでしょうか?
それは僕じゃなくて、監督が持っているのではないかな(笑)。僕は、忘れずについて行っているだけでね。でも本当にお互いのことを僕たちは大好きで、ダンスチームでダンスパートナーだよ。あうんの呼吸の中で準備を万端にして、でも現場ではものすごく早く撮る。それがジャウム・コレット=セラ監督だ。僕も早く撮るほうがよくて、現場ではあまりダラダラしたくないタイプだよ。
――こういう作品の場合、一瞬一瞬が勝負ではありますよね。
早く撮るほうがエネルギーをキープできるからね。特に今回のような映画の場合、3カ月なら3カ月とも同じセットで、時にはテンションが落ちてしまう場合もあるわけだ。だから、リズムを作って、保っていくことがすごく重要となっている。彼はそのことに長けているけれど、僕もセリフを覚えるとか、バミリを把握してカメラに激突しないようにするなどして、彼のことを助けているつもりなんだ。
――作品には、とても安定感を感じました。『96時間』以降、自分自身のアクション俳優人生を満喫しているような印象さえ受けましたが、そういう人生については?
それはうれしいね、結局、僕自身が楽しめていなければこうはならなかったはずで、監督もそうだけれど、まずは自分たちが楽しくやっているべきだと思う。映画作りにかかわるという最高の仕事ができているわけで、人にエンターテインメントを提供して、楽しいと感じてもらえる立場にいるわけだからね。時にストーリーはシリアスだけれども、僕たちが楽しみながらやっていることは伝わってほしいと思っている。
僕がまだプロになる前、アイルランドでお芝居の会みたいなものに参加していた時に、ある言葉があった。1、まずはストーリーをつづる。2、たくさんのエネルギーで。3、自分自身が楽しむ。このことを僕は忘れたことがないよ。
――ちなみにファンとしては、『スター・ウォーズ』のクワイ=ガン・ジンがまた観たいですが(笑)
(首をかきながら)彼は死んでしまったからね(笑)。でも話が来れば、それはやるに決まっている。20年前に1作目に出られたことは最高の経験だったが、正直いまのスピンオフなど、よく把握していないよ。最後のジェダイは観たけれど、30分くらい長いかなと思った程度で、なかなかよかったとは思う。ただ、どうすればいま現在の『スター・ウォーズ』の展開にキャラクターがハマっていくか、いまいち見えないかな。なにしろ死んでいるからね(笑)。
リーアム・ニーソン
1952年生まれ。イギリス、北アイルランド出身。スティーヴン・スピルバーグ監督の『シンドラーのリスト』(93)でアカデミー賞とゴールデン・グローブ賞、ニール・ジョーダン監督の『マイケル・コリンズ』(96)でゴールデン・グローブ賞、『愛についてのキンゼイ・レポート』(04)でゴールデン・グローブ賞にノミネートされ、演技派俳優として高い評価を受ける。その後、『96時間』シリーズ(08/12/14)でのアクションが人気を呼び、アクションスターとしても大ブレイク。ジャウマ・コレット=セラ監督作品とは、『アンノウン』(11)、『フライト・ゲーム』(14)、『ラン・オールナイト』(15)に次いで、本作で4度目のタッグ。最新作は、アカデミー賞受賞監督、スティーヴ・マックィーン監督の『Widows』(18)など。
鴇田崇
映画&ディズニー・パークスを追うフリーライター。年間延べ250人ほどの俳優・監督へのインタビューと、世界のディズニーリゾートをひたすら取材しまくる。ジョン・ラセター、アラン・メンケン、キャスリーン・ケネディ、バイロン・ハワード、ティム・バートンなど、ディズニー映画関連人物のインタビュー経験も豊富。世界のディズニー・パークスでは東京だけでなく、アナハイムも偏愛している。instagram→@takashi.tokita_tokyo