Microsoft CEOであるSatya Nadella氏は2018年3月29日(現地日時)、全従業員に対して組織改編を告げるメールを送信した。
これまでWindows&Devices Groupを率いてきたTerry Myerson氏について、Nadella氏は「Microsoft以外で次の章を追求する予定」と述べている。Myerson氏は数カ月以内に退社する予定だというが(詳細はLinkdInで確認可能)、今回の主軸は彼ではない。
注目すべきは、EVPとしてOffice Product Groupを率いているRajesh Jha氏が、体験とデバイスに焦点を当てた新チームのトップに就任する点だ。Nadella氏は「コンピューティング体験は多様な感覚を示すように進化し、ますます利用シーンは増えている。近代的な需要や習慣、顧客の期待はWindows、Office、サードパーティ製のアプリケーションやデバイスをより密接なMicrosoft 365体験に導く動機となる」と説明し、リーダー変更の理由を説明した。
配下にはSurfaceシリーズを始めとするデバイス部門などが並ぶ。同部門は引き続きPanos Panay氏がチーフプロダクトオフィサーを務め、Windows部門はおなじみのJoe Belfiore氏、New Experiences and Technology部門はKudo Tsunoda氏、Enterprise Mobility and Management部門はBrad Anderson氏と現場レベルでの変更はほとんどない。
さらにNadella氏は、Scott Guthrie氏がCloudとAIプラットフォームに特化した新しいチームを率いて、彼の役割を拡大することを明らかにした。ここでは、クラウドとエッジ(分散コンピューティングファブリック)からインフラストラクチャー、コグニティブサービスなどAI全般の一貫したテクノロジーを管轄する。
ITを取り巻く世界は刻々と変化している。我々は意識せずともクラウドの恩恵にあずかり、IoTの先にあるアンビエントコンピューティングが次第にビジネスモデルを進化させてきた。
また次世代は量子コンピューティングが主流となり、機械学習やブロックチェーンが実用段階に達するのは確実だ。この世界の変化に対応するため、Microsoftは社内変革に着手したと見るのが正しいだろう。
Microsoftの主たる顧客は一般コンシューマではなく大手企業や政府だ。同社の第4四半期決算を見ると、Office 365やクラウド製品は堅調な伸びを見せるが、Windows関連の収益は微増にとどまる。Surfaceも2%減と奮わないが、デバイスはライフサイクルがあるため、このあたりは致し方ない。
では、MicrosoftがWindows 10から撤退する日が来るのだろうか。筆者も確実な答えを持っているわけではないが、同社が掲げる現在の戦略は今後数十年を見据えている。そこにパーソナルコンピューティングを支えるOSから撤退する可能性は乏しい。空席をAmazonやGoogleが狙っているのは明らかだ。
Microsoftが開催する直近の大型イベントは、Build 2018(日本はde:code 2018)である。そこで同社の目指す方向性が見えてくるだろう。
阿久津良和(Cactus)