使い道にあわせたデザイン
――2017年に発表されたEXOSのプロトタイプは、義手「handiii」のような未来感のあるデザイントーンでしたが、現在の製品はそこからかなり質実剛健な印象へと変化しています。外観のデザイン変更の経緯を教えてください。
山浦氏: 仰る通り、現在のEXOSに至るまでに、デザインの方針を変更しました。
筋電義手「handiii」は装着者の個性を表現するためにデザインしています。それまでは隠すのが当たり前だった義手をあえて見せるというコンセプトでしたので、その外観は使用者の満足度を重視したものとなっていました。
一方、「EXOS」は先ほどお話ししたような経緯で、BtoBの利用用途に向けて開発しています。仕事場に置いて連日使うデバイスとなるため、その存在をアピールするようなデザインは、利用用途と乖離してしまいます。この点は社内でも議論になり、結果としてデザインとしては抑えめにという方向性で進めています。
――ボディカラーを黒一色に絞ったのも、そのような開発意図からなのですね。
山浦氏: はい、カラーバリエーションを設けるような製品カテゴリではないという判断です。デザイン担当者も、BtoBの製品としてのデザインを意識していると話していました。
また、黒というのは一番引き締まって見える色なので、まだコンパクトとは言えないデバイスから受ける圧迫感、手に取るまでの抵抗感をなくすような意味から、この色を選んでいます。もしも今後エンタメ領域での展開が見込めるような状況になれば、それを反映した製品のデザインをあらためて行うことになると思います。
――義手開発で得た、EXOSに生かされた知見は何かありますか?
山浦氏: 義手開発時に調べた、解剖学的な知見ですね。人間の関節の構造や筋肉の配置を加味したうえでデバイスを作っています。関節が何度まで曲がるか、などはきちんと調べないとわからないので、そうした知識の蓄積は、開発に役立っています。
――事例とデバイスの情報を先日リリースした後、どのような分野の企業から反応がありましたか?
金子氏: やはり日産での検討について記載したことから、自動車メーカーから反応をいただけました。それ以外ですと、建築系、アカデミック系の団体からの問い合わせも何件かありました。いずれも事例として発表できるところまで持って行ければと考えています。
お問い合わせをいただく企業について言えば、すでに社内で相当な試行錯誤をしていて、その上で弊社にお声がけいただくというケースが多く、VR活用に際して困りごとを抱えているんだというのが分かります。そこに対してEXOSがアプローチできれば嬉しく思います。
――最後に、今後の開発ロードマップについて教えていただけますか?
山浦氏: 日産での検討というトピックをきっかけに、CADデータの活用という明確なユースケースが見つかりました。まずはそれにきちんと応えられるようなデバイスにしていきたいと考えています。現行モデルの触覚再現のスペックはそのままに、本体を軽くし、装着しやすさを追い求めていきたいです。
――ありがとうございました。