スシローグローバルホールディングスが攻めている。3月に入り、スシローの新業態「スシローコノミ」を発表した。さらに29日には、これまで存在を伏せてきた新業態の大衆寿司居酒屋「杉玉」も公表した。同社の取り組みを見ると、回転寿司 スシローの動向を追うだけでは足りなくなってきているのだ。

発想の原点を知る

スシローコノミはフードコート向け店舗、杉玉は手頃な価格で寿司が楽しめる居酒屋だ。いずれも多店舗展開を想定して出店したものとなる。スシローコノミの出店計画は未定だが、杉玉は「夢を語れば3ケタを目指したい」とスシローグローバルホールディングスの水留浩一社長は話す。

これまでスシローグループは、出店エリアを拡大して店舗数の増加を図ってきたように見える。それがここにきて、新業態を展開し始め、先々の展開が予測しにくくなり始めているようにも思える。

しかし、発想の原点を知れば難しいことはない。こうした展開を可能にしたのは「寿司を楽しんでもらうシーンを増やしたいという発想」からである。水留浩一社長によれば「後継者問題などで街中の寿司屋が減っている。ビジネス的にはマーケットチャンスとなるが、寿司を楽しむシーンを守って生きたい」とする。

だからこそ、スシローコノミが生まれ、杉玉が始まった。スシローコノミはオープンしてから数日が経過。テイクアウトの比率が想定より高かったものの、順調であるとし、「駅中での展開やテイクアウトに振ったフォーマットも考えて生きたい」と期待を寄せる。さらに「デベロッパーによっては杉玉の出店を望むところもあるだろうし、いくつものカードを持ちながらベストなロケーションにサービス提供していきたい」という。

従来のように、ロードサイドの店舗を増加させようと考えるのではなく、「寿司を楽しんでもらうシーンはどこか」を起点にしているのがスシローの今だ。

実は筋が通った過去の取り組み

それを考慮すれば、過去の様々な取組みにも合点がいく。2016年9月にスシローは都心型店舗を設けたわけだ。さらに台湾を手始めとした海外進出にも意欲を示している。そして、スシローコノミ、杉玉と続いたわけである。

水留社長は次のように話す。「時間はかかるが、ちなみにこれで打ち止めではない。まだ考えている」といったコメントを残しており、新たな展開もあるようだ。

寿司を楽しんでもらう場の提供。スシローグループがビジネスで重視するのは、こうした視点からにほかならない。そこからすると、従来の発想では思いもよらない、意外な場所や店舗形態でサービス提供が実現しても何ら不思議はなさそうだ。