「特撮」を愛し、「特撮」を奏で、「特撮」を世に広めるべく活動を続けている特撮リスペクト・バンド「科楽特奏隊(かがくとくそうたい)」が、円谷プロダクションの公認を受けて世に送り出したCDアルバム『ウルトラマン・ザ・ロックス』(2017年)からおよそ1年ぶりとなる、2018年3月28日に第2弾『怪奇と正義』が、徳間ジャパンコミュニケーションズより発売されることになった。
前作『ウルトラマン・ザ・ロックス』は、放送開始50年を記念して『ウルトラセブン』(1967年)の勇姿をジャケットに置き、『ウルトラマン』(1966年)主題歌「ウルトラマンの歌」や『ウルトラマンG(グレート)』(1991年)日本語版主題歌「ぼくらのグレート」といった「ウルトラマンシリーズ」の主題歌にロックアレンジを施して演奏・歌唱を行った。
今回の『怪奇と正義』では、『ウルトラセブン』の後番組として製作され、今年で放送開始50年を迎える特撮テレビドラマ『怪奇大作戦』(1968年)を大プッシュ。ジャケットアートには、実際に『怪奇大作戦』のオープニングで使用された映像素材を用いるという凝りようである。
円谷プロといえば、最新作『ウルトラマンジード』(2017年)に代表される「ウルトラマン」シリーズの印象が強いが、『怪奇大作戦』のようなドラマ主体の作品、『ミラーマン』(1971年)、『ファイヤーマン』(1973年)をはじめとする、ウルトラマンとは一味違う巨大変身ヒーロー作品、アニメーションと実写特撮を融合させた野心的な作品『恐竜大戦争アイゼンボーグ』(1977年)、愉快な"快獣"と子どもたちとの交流を描いたコメディドラマ『快獣ブースカ』(1966年)など、「ウルトラマン」シリーズだけに留まらず、実にバラエティに富んだ特撮作品を多く生み出してきた。そして、これらの個性的かつ魅力的な作品それぞれに、聴く者の心に響き渡る素晴らしい「主題歌」「挿入歌」が存在していた。
『怪奇と正義』では、「ウルトラマン」シリーズ以外の円谷プロ作品で、とりわけ強い印象を残す主題歌をチョイスした上、ウルトラマンシリーズからも渋みのある挿入歌を2曲ピックアップ。今や国民的ヒーローとして日本人なら知らぬ者がいないほどの知名度を持つ「ウルトラマン」、「ウルトラマン」シリーズに比べると、かなりマイナーというか「ツウ好み」な曲目ぞろいとなっているが、みなそれぞれ現役で活躍していた時代は子どもたちから熱い声援を送られてきた人気作品ばかり。激しいロック調にアレンジされた各作品の主題歌のメロディーは、年季の入った特撮ファンの郷愁を誘いつつ、初めて聴く人には新鮮な驚きをもって迎え入れられることだろう。
先日、海外でのリメイク映像が作られて話題となった『恐竜大戦争アイゼンボーグ』や、2018年にテレビアニメとして生まれ変わることが決定している『電光超人グリッドマン』(1993年)、そしてYouTubeの映像配信が引き金となり、初めて作品に触れた若い年代のファンから熱い注目が注がれた『レッドマン』(1972年)というように、TwitterやFacebookなどのSNSで話題を集めた作品たちの主題歌も収録されているのもニクイところだ。
曲目リスト
01 恐怖の町 「怪奇大作戦」より
02 戦え!アイゼンボーグ 「恐竜大戦争アイゼンボーグ」より
03 夢のヒーロー 「電光超人グリッドマン」より
04 レッドマン 「レッドマン」より
05 アンドロメロス 「アンドロメロス」より
06 快獣ブースカ 「快獣ブースカ」より
07 ミラーマンの歌 「ミラーマン」より
08 ファイヤーマン 「ファイヤーマン」より
09 ULTRA7 「ウルトラセブン」より
10 TACの歌 「ウルトラマンA」より
11 マイティジャックの歌 「マイティジャック」「戦え!マイティジャック」より
CD発売に合わせ、『怪奇大作戦』主題歌「恐怖の町」のミュージックビデオがYouTubeにて配信中。『怪奇大作戦』は1話完結の30分ドラマで、毎回常識では考えられないような怪奇な事件が勃発する。これらの謎を科学の力で解明し、強い正義の意志で悪に立ち向かうのが、SRI(科学捜査研究所)の面々である。ミュージックビデオ(脚本・監督:川崎雄太氏)では、『怪奇大作戦』全26エピソードの中でも特に人気の高い実相寺昭雄監督の4作品「恐怖の電話」「死神の子守唄」「呪いの壺」「京都買います」を彷彿とさせる、凝りに凝ったカメラアングルやライティング、独特な効果音などを用いて、見事現代に"実相寺ワールド"を再現させている。
ミュージックビデオには映画『ウルトラQ THE MOVIE星の伝説』(1990年)や『ウルトラマンダイナ』(1997年)第38話「怪獣戯曲」など、実相寺組の常連俳優だった堀内正美が出演を果たし、SRI所員に扮した科楽特奏隊メンバーを相手に鬼気迫る怪演を見せているのがうれしい。ラストにおいては、『怪奇大作戦』の中でもときおり見られた「科学では解明できないような不可思議な現象」までもが勃発し、怪しい余韻を残している。
科楽特奏隊のCDアルバム『怪奇と正義』は2018年3月28日より発売開始。これを記念して、トークイベント「"怪奇と正義"を語り尽くすトークイベント 『会議大作戦』」が新宿ネイキッド・ロフトにて4月1日に開催される。出演は科楽特奏隊メンバーと、ゲストプレイヤーとして参加した出口博之氏、そしてCDのライナーノーツを執筆したライターのガイガン山崎氏。そして4月17日には、ヴィレッジヴァンガード渋谷本店にて、CD発売記念イベント(ミニライブ&特典会、特殊撮影会)が行なわれる。
■著者プロフィール
秋田英夫
主に特撮ヒーロー作品や怪獣映画を扱う雑誌などで執筆。これまで『宇宙刑事大全』『宇宙刑事年代記』『メタルヒーロー最強戦士列伝』『ウルトラマン画報』『大人のウルトラマンシリーズ大図鑑』『ゴジラの常識』『仮面ライダー昭和最強伝説』『日本特撮技術大全』『東映スーパー戦隊大全』『ゴーグルV・ダイナマン・バイオマン大全』『鈴村健一・神谷浩史の仮面ラジレンジャー大百科』をはじめとする書籍・ムック・雑誌などに、関係者インタビューおよび作品研究記事を多数掲載。