いよいよクライマックスへ向けてのラストスパートに入ったNHK連続テレビ小説『わろてんか』(毎週月~金曜8:00~8:15ほか)。葵わかな演じるヒロイン・てん、夫・藤吉(松坂桃李)をはじめ、風太(濱田岳)、トキ(徳永えり)、伊能栞(高橋一生)など個性あふれる魅力的なキャラクターたちが物語を彩ってきたが、後半になってより多くの視聴者の心をつかんだと思われるのが広瀬アリス演じるリリコだ。
女芸人として一躍人気者になった後、映画女優として活躍、藤吉の死後には女優を引退して漫才師と、勇気ある決断で歩むべき道を選んできたリリコ。その変化の中で、てんの恋敵という存在から親友へと、てんとの関係も変わっていった。コンビを組み、夫となった四郎(松尾諭)との掛け合いも重要なシーンに。
役割を変えながら存在感を放ってきたリリコについて、脚本家の吉田智子氏と、後藤高久プロデューサーにインタビュー。期待していた以上だったという広瀬の演技の魅力について語ってもらった。
想定外だったコメディエンヌの才能
――リリコ役の広瀬アリスさんの演技にとても引きつけられました。
後藤:広瀬アリスさんがこういうキャラクターができるんだと。演じる幅がこんなに広い人なんだということがこのドラマでわかったと思います。
吉田:(妹の広瀬)すずちゃんともご一緒したことがあるんですが、あの姉妹はすごいです。
後藤:こんなことを言ったら怒られるかもしれないけど、ある種のおばちゃん気質がある。大阪人気質というか。最初は誰も、静岡生まれの女の子が、あんなに大阪の漫才を上手くできると思わなかったですよね。なにより美人だし大阪弁ネイティブじゃないから、面白い漫才なんてできるわけないとそれほど大きな期待はしてなかった。だから今までこういう役を誰もオファーしなかったけど、今回その大阪人気質をちゃんと発揮できる場を得たということだと思います。見事でした。後半、18週以降は、リリコを見るのがひとつの楽しみに。毎日表情がくるくる変わっていくのが魅力です。
吉田:コメディエンヌの素質がありましたね。
本人の演技で脚本以上に役が広がった
――松尾さん演じる四郎さんとの掛け合いも笑いあり、感動ありで、とても魅力的でした。
後藤:松尾くんは関西人なので漫才的なやり取りは得意だし、いいコンビになった。美女と大仏というような2人のアンバランスさも得してますよね。
吉田:松尾さんもすごく面白かったですね。脚本以上にご本人たちの演技で役が広がっていったと思うんです。そうするとこちらも書きたくなる。監督も演出したくなる。プロデューサーも出番を増やしたくなる。リリコたちをもっと見たいなという欲求が出たと思います。
後藤:本当にその顔をもうちょっとでいいから見たいと思う。それくらい魅力的でした。
吉田:たくさんの登場人物がいるのでリリコを描ける時間はそれほど多くないんです。でもその短い時間で、彼女が魅力的な表現してくれるので非常に助かりました。お客さんが一瞬で引き込まれてしまうものを持っていた。漫才シーンだけでなく、泣き芝居も素晴らしかったです。
プロデューサーもうなる表現の幅の広さ
――広瀬さんは、起用の段階からこの演技ができると思っていましたか?
後藤:もちろん魅力的だとは思っていましたが、ここまで多彩なお芝居ができるとは思っていなかった。期待以上です。最初、リリコというキャラクターは、てんに対して敵対する強い芝居が必要だと思ったので、美人だし、芯が強い感じもあるし、お芝居もしっかりできるから適任だと思っていましたがそれ以上に、コミカルな演技や、怒ったり、泣いたり、ここまで表現の幅が広い役者さんだとは想像もつきませんでした。
吉田:ついついリリコを書いちゃう(笑)。本当にどんどん書きたくなってしまう魅力的な演技でした。今後はもっともっと主演をやって欲しい女優さんですね。
後藤高久
1965年、大阪府生まれ。プロデューサー。大阪外国語大学英語学科卒で1989年にNHKに入局。『春よ、来い』(94~95)、『翔ぶ男』(98)の演出を経て、『どんど晴れ』(07)でプロデューサーに。『つばさ』(09)、『四十九日のレシピ』(11)、『新選組血風録』(11)、『聖女』(14)、『ボクの妻と結婚してください』(15)、『奇跡の人』(16)などで制作統括などを務める。
吉田智子
東京都出身。大学卒業後、コピーライターを経て脚本家に。手がけた主なドラマは『美女か野獣』(03)、『働きマン』(07)、『全開ガール」(11)、『学校のカイダン』(15)など。映画は『僕等がいた 前編/後編』(12)、『ホットロード』(14)、『アオハライド』(14)『僕は明日、昨日のきみとデートする』(16)『君の膵臓をたべたい』(17)などの恋愛映画や、『Life~天国で君に逢えたら』(07)『岳-ガク-』(11)『奇跡のリンゴ』(13)などのヒューマン系ドラマまで幅広く執筆。
(C)NHK