一方で、クラウドでは、IBM Cloud Privateについて説明。提供開始から90日間で150社以上が採用していることを紹介したほか、ベストプラクティスを提供するIBM Architectureや移行支援を行うTransformation Advisor、DevOpsのMicroclimateなど、コンテナ基盤および開発から、運用までをフルサポートするツールを続々と発表。顧客システムのモダナイズを実現するという。
さらに、VMware on IBM Cloudについては、1400以上の顧客がVMwareのワークロードをIBM Cloud上で実現していることを示す一方、IBM Cloud for VMware Solutionsポートフォリオの拡充により、HCX(Hybrid Cloud Extension)の提供を開始。疎結合なハイブリッドクラウドを実現することを示した。また、Spectrum Protect Plusの提供を開始することも発表した。
また、コンテナへの対応を強化。Kubernetes on ベアメタルサービスのマネージドサービスを、東京データセンターを含む世界19のデータセンターから提供。Kubernetes(k8s)ベースの機械学習とデータサイエンスの統合製品を発表したほか、IBM Z/Linux ONEと、x86において、Docker EEをサポートすることも発表した。
もうひとつ大きな発表は、IBM Cloudにおいて、マルチゾーンリージョン(MZR)と呼ぶ仕組みを打ち出したことだ。
これはAWSのアベイラビリティゾーン(AZ)と同様の考え方であり、3つのゾーンと呼ぶデータセンターを、ポップと呼ぶ2つのネットワークアクセスポイントに接続することで、ハイアベイラビリティ機能を実現することになる。また、データセンターがひとつのリージョンの場合は、シングルゾーンリージョンと呼ぶ。東京データセンターはMZRとして構築される予定だという。
基調講演のなかでは、「One Cloud Architecture」を強調してみせたのも印象的だった。
米IBMのWatson & クラウドプラットフォーム担当のDavid Kennyシニアバイスプレジデントは、「クラウドに対しては、ベストクラスの可用性、スケーラビリティのほか、パブリッククラウドならではの利便性やコストメリットが求められている。さらに、セキュリティ、コンプライアンスの課題を解決するために、従来型のITの仕組みを維持したプライベートクラウドに対する要求も高い。このように、クラウドに対しては、様々な要求があり、オーダーメイドで活用したいといったニーズもある。自由度と柔軟性に対する要望がますます高まっている」と前置きし、「IBMのクラウドは、これまでは、ひとつのクラウドに定義されさていなかった。
だが、One Cloud Architectureによって、コンテナを取り入れて、パブリッククラウドも取り入れ、すべてのアプリに対応でき、DevOpsやマネジメントプラットフォームにも対応する。また、ベアメタルも提供し、どのプラットフォームと連携して利用できるようになる。さらに、AIや機械学習、アナリティクスに投資をしており、企業に蓄積した知識とデータを使えるようになる。キーポイントは、アーキテクチャーがひとつということであり、ひとつのリファレンスで、パブリッククラウド、プライベートクラウド、ハイブリッドクラウドおよびマルチクラウド環境で使えるようになることだ。IBM Cloudは、そのアーキテクチャースタックを、すべてのツール、プラットフォームとともに一緒に使える、ひとつのアーキテクチャーとして提供できる」などと述べた。
IBMは、こうした環境の実現を、次世代クラウドコンピューティングの姿に定義しようとしている。
これまでは、バラバラに動いていたIBMのクラウドが、いよいよOne Cloud Architectureのもとで、ひとつのクラウドとして動き出す宣言が行われたといえる。