フランス・パリには20の行政区がある。そんなパリならではのショッピングやグルメ、カルチャーが楽しめる観光地として"21区″目的な存在を目指しているのが、フランスの空の玄関であるパリ シャルル・ド・ゴール空港(パリ空港)だ。

  • パリ シャルル・ド・ゴール空港に4月、ティエリー・マルクスシェフが日仏を融合させた「Teppan(テッパン)」を開業する

    パリ シャルル・ド・ゴール空港に4月、ティエリー・マルクスシェフが日仏を融合させた「Teppan(テッパン)」を開業する

パリ空港では各国際線ターミナルに、ミシュランスター・シェフのレストランを1店舗以上展開する計画をしており、日仏交流160周年にあたる2018年の4月には、"星の請負人"の異名をもつティエリー・マルクスシェフの日仏を融合させた「Teppan(テッパン)」が開業となる。

390店舗を抱えた観光地

パリ空港には現在、152社の航空会社が乗り入れ、329都市に路線を展開している。2015年には英国格付け会社のスカイトラックス社より世界で最も改善された空港第1位に、2016年にはホールMターミナル2Eが同社からベストターミナル第3位に選ばれるなど、世界的にも評価されている。また、2024年のパリ・オリンピックに向けて、パリ市内とパリ空港を25分以内で結ぶCDGエクスプレスが2023年に開通される見通しだ。

日本路線の現状を見てみると、パリ空港から毎週40本の直行便(6月18日時点、2018年サマー・プログラム)があり、羽田/成田/関空と3つの空港からつながっている。エールフランス航空のほか、JALとANAが路線を展開しており、2017年にはフランス=日本の乗客数は97万7,464人で、2016年比の18%増となった(11月までの12カ月で計上)。

空港内にはフランス国内外の一流ブランドがそろい、空港限定商品や先行販売商品も多数展開している。2018年内には5万6,800平方メートルの商業スペースを備え、390ものショップ(羽田空港国際線旅客ターミナルは106店(レストラン44店/ショップ31店/免税店31店))、1,000以上のブランドを展開し、26人の日本語対応スタッフも含めて1,900人の多言語スタッフが活躍する。2021年には4万1,400平方メートルのブティックとレストランのリニューアルを予定しており、その中には55の高級店が含まれている。

  • パリ シャルル・ド・ゴール空港のイメージ

    パリ シャルル・ド・ゴール空港のイメージ

究極の"タイムパフォーマンス"を提供

グルメだけを見てみると、2018年には全体の約40%を占める2万2,00平方メートルに103の店舗を展開する。さらに2020年末までには、新たに88店舗のオープンを予定している。ジャンルは、「ミシュランスターのレストラン」「レストラン」「ファースト・カジュアル」「パン屋」「コーヒーショップ」「ファーストフード」と主に6つ展開し、一人ひとりのニーズにあったサービスを提供する。その「ミシュランスターのレストラン」のひとつが、マルクスシェフが初ブランドとしてパリ空港ターミナル1に展開する「テッパン」だ。

  • ティエリー・マルクスシェフは、柔道3段、柔術4段の腕前で日本にも4年滞在している

    ティエリー・マルクスシェフは、柔道3段、柔術4段の腕前で日本にも4年滞在している

フランスの最も名高いシェフのひとりであるマルクスシェフは、シェフ・総料理長としてミシュランガイドで5度星を獲得した人物。日本にも4年間滞在(東京/京都/大阪)し、柔道や柔術などを経験しつつ、日本のフランス料理界をけん引する三國清三シェフとの親交もあるなど、親日家としての一面もある。そして現在、東京・銀座にレストラン「ビストロ・マルクス銀座」を展開している。

マルクスシェフがパリ空港で日仏文化を融合させた料理に鉄板料理を採用した理由として、「日本の食材、例えばネギ1本を持って遠くフランスまで帰ることは難しい。私はひとつだけ日本からフランスに持って帰るとしたら、鉄板(鍋)を買って持って帰ることを選びたい」と話した上で、「私は日本の料理を深く理解している。日本とフランスを結びつける料理は、それぞれがもつテロワール(風土・土壌)をしっかり守ってこそ実現できるものだ」と語った。

  • パリ空港グローバル新規顧客開拓部部長のセシル・マルシャン-カッサーニュ氏

    パリ空港グローバル新規顧客開拓部部長のセシル・マルシャン-カッサーニュ氏

「テッパン」では、その日の市場から届いた新鮮素材をお客の目の前で調理し、フレンチのシェフが多彩な料理を融合しながら提供する。この「テッパン」をパリ空港で展開する狙いとして、パリ空港グローバル新規顧客開拓部部長のセシル・マルシャン-カッサーニュ氏は、和食は日本人のみならず、欧米やアジアなど世界中の人々に愛されている料理であることをあげている。

また、空港内という時間の制約がある空間の中で、一流の料理を平均30~35分の食事時間合わせて料理を提供するという"タイムパフォーマンス"の高さも、この「テッパン」の強みとなる。「テッパン」のデモンストレーションとして、実際にマルクスシェフ自らが腕を振るったところ、フィッシュプレートは7分、スイーツプレートは5分で完成した。

  • 鉄板料理のデモンストレーション。盛り付けも合わせて7分で完成した

    鉄板料理のデモンストレーション。盛り付けも合わせて7分で完成した

  • 「5分で完成」と"タイムパフォーマンス"の高さをアピール

    「5分で完成」と"タイムパフォーマンス"の高さをアピール

「テッパン」はこのパリ空港が初展開となるが、今後の展開ついてマルクスシェフは「私は気持ちの赴くままに行動する人間であるため今後のことは分からないが、少なくとも『テッパン』をやみくもに増やす考えはない」と話している。

  • 新鮮野菜を生かした鉄板料理はライブが可能であることも魅力のひとつ

    新鮮野菜を生かした鉄板料理はライブが可能であることも魅力のひとつ

8人のミシュランスター・シェフの味が空港に集結

「ミシュランスターのレストラン」は「テッパン」のほか、2020年までに8人のミシュランスター・シェフの店がオープン予定となっている。現在すでに、ギィ・マルタンシェフの「I Love Paris(アイ・ラブ・パリ)」(ターミナル2EホールL)、ジレ・エピエシェフの「Frenchy's(フレンチーズ)」(ターミナル2-AC)、メゾン・ロスタンの「Cafe Eiffel(カフェ・エッフェル)」(ターミナル1)がある。

さらに今後の展開として、3月にはギィ・マルタンシェフの「French Taste(フレンチ・テイスト)」(ターミナルE-2F2)、4月にはティエリー・マルクスシェフの「Teppan(テッパン)」(ターミナル1)、8月にはメゾン・ロスタンの「Cafe Eiffel(カフェ・エッフェル)」(ターミナル2E ZP)がオープンする。

  • 3月にはギィ・マルタンシェフの、4月にはティエリー・マルクスシェフの、8月にはメゾン・ロスタンの新店舗が誕生する

    3月にはギィ・マルタンシェフの、4月にはティエリー・マルクスシェフの、8月にはメゾン・ロスタンの新店舗が誕生する

「フレンチ・テイスト」は世界に向けたフランス流ネオ・ブラッスリーであり、建築家シャルル・ザナが手掛けたモダン空間の中で、コストパフォーマンスの高いフランスのテロワールが生み出す美味でヘルシー嗜好なメニューを展開する。また「カフェ・エッフェルでは、フランス産の食材を生かした伝統的な料理を提供。主要産地のアイテムを取り揃えたワインも魅力となる。

パリ空港ではレストランの他にも、新コンセプトの店舗を計画している。ターミナル2Eの公共エリアには、パティスリー「メゾン・ラデュレ」の新店舗がほどなくオープンする。「メゾン・ラデュレ」では、クラシックからユニークまで36もの様々なフレーバーを取りそろえ、空港でしか手に入らないギフトボックスも用意する。

2018年内にはターミナル2EホールKにコンセプトショップ・グルマンを展開し、スイーツのテイスティングやデモンストレーションでワクワクするようなショッピング体験を促す。また2019年にはコンフィズリー・ルディック(砂糖菓子)をオープンし、スイーツをおもちゃをディスプレイした空間で子どもも大人も時間を忘れて楽しめる空間を演出する。

  • 交通のための単なる通過点ではなく、パリならではの味わいが詰まった空港を目指す

    交通のための単なる通過点ではなく、パリならではの味わいが詰まった空港を目指す

パリ空港にはグルメの他、シャネルやエルメスなどのフランス発の一流ブランドがそろったラグジュアリー&ファッションや、入場無料の美術館「Espace Musees(エスパス・ミュゼ)」などのカルチャーなどと、パリ滞在の最後の最後まで観光を楽しめる空間が展開されており、利用者数では世界2位を誇っている。

2018年は日仏交流160周年の年ということもあり、日本国内にいながらフランスを近くに感じられる機会が増える1年となることだろう。実際にフランスに訪れたならば、変わりゆく観光地"21区"のパリ シャルル・ド・ゴール空港での滞在時間も確保しておきたい。