叡山電鉄の新しい観光用車両「ひえい」が21日から運行開始した。出町柳駅・八瀬比叡山口駅で披露式典が開催され、「ひえい」は記念列車として叡山本線を走行。出町柳駅12時22分発の列車に合わせて発車式が行われた。
「ひえい」は同社の700系1両(デオ730形732号車、1988年製造)を観光用にリニューアルした電車。楕円のモチーフを大胆に表現した外観デザインが特徴で、車内はロングシートながらゆったりとしたバケットシートを採用している。同社初というLEDダウンライトで非日常感も演出した。バリアフリー対応として車いす・ベビーカースペースを設置し、車内案内表示器を日本語・英語・韓国語(ハングル)・中国語(簡体字)の4カ国語表示とするなど、近年増加する訪日外国人旅行者にも配慮している。
デビュー日の3月21日、「ひえい」は10時30分すぎに出町柳駅1番線ホームへ入線した。披露式典では叡山電鉄代表取締役社長の塩山等氏が挨拶し、「この観光用車両は4年前から構想がスタートしました。(製造から)30年が経過する車両の改修と合わせ、国際観光都市にふさわしい観光用車両をめざし、京阪グループをあげて検討・準備を進めてきました」と述べた。この日は京都側から比叡山へ向かう交通機関(叡山ケーブル・ロープウェイ、比叡山内シャトルバスなど)も冬期運休を終えて運行再開。「比叡山の山開きの日に、『ひえい』のデビューを迎えられたことは格別の喜び」と塩山氏は話した。
運行区間は叡山本線出町柳~八瀬比叡山口間とされ、所要時間約15分ながら「この観光用車両を中心に、京都洛北の観光の礎を築いていきたい」「『この列車で比叡山へ行こう。びわ湖にも行こう』と全世界の皆様に広めていただけたら」と塩山氏。披露式典の後、来賓・招待者らが「ひえい」に乗車し、八瀬比叡山口行の記念列車として11時すぎに出町柳駅を発車した。
記念列車の終点となった八瀬比叡山口駅では、比叡山延暦寺による安全祈願や鏡開きなどに加え、地元中学生による吹奏楽の演奏も。披露式典を終えた「ひえい」は回送列車となって折り返し、再び出町柳駅に到着後、発車式として運転士への花束贈呈が行われた。多くの乗客で満員となる中、12時22分、駅長による出発合図とともに「ひえい」が出町柳駅を発車。叡山本線での営業運転をスタートさせた。
新しい観光用車両「ひえい」は普通運賃のみで乗車でき、特別料金などは不要(出町柳~八瀬比叡山口間の片道運賃は大人260円・小児130円)。今後は火曜日を除く毎日運行され、平日8~18時台、土休日9~17時台に毎時1~2本程度の運行を予定している(定期点検時など長期運休期間が発生する場合あり)。なお、観光用車両「ひえい」のデビューを記念し、5月まで叡山電鉄の700系1両(デオ710形711号車)と800系1編成(デオ810形811・812号車)、京阪線を走る快速特急「洛楽」の一部列車などに特製ヘッドマークが掲出される。