第10回WOWOWシナリオ大賞受賞作『ドラマW 食い逃げキラー』(WOWOWプライム 3月21日 水曜 20:00~ )で主演を務める、青柳翔にインタビュー。応募総数455編の中から見事大賞に選ばれた舘澤史岳による同名シナリオを、TVドラマ『天皇の料理番』などを手掛けた中前勇児監督がドラマ化。「食い逃げ犯」たちに悩まされるファミレスを舞台に、ひょんなことから「食い逃げキラー」となった元陸上界のエースが、犯人たちに翻弄されながらも成長していく姿を描いた疾走感あふれるヒューマン・コメディだ。

主人公は、とある街のファミレス「ワニーズ」で、バイトリーダー・高瀬千秋(松本穂香)に俊足を見込まれ、「食い逃げ犯」を捕まえる「食い逃げキラー」として雇われた、元陸上選手の川谷省吾(青柳翔)。将来を有望視される選手でありながら、ある事故を理由に陸上界から姿を消し、投げやりになっていた省吾が、個性豊かな「食い逃げ犯」を追ううち、本気で人生と向き合うようになっていく。類いまれなる運動能力を活かし、青柳が文字通り「全力疾走した」という省吾の役どころや、気心の知れた監督や共演者との、撮影中のエピソードについて話を聞いた。

青柳翔

青柳翔

――今回、WOWOWドラマで初主演を務められましたが、いざ撮影が始まってみていかがですか?

WOWOWドラマには、尊敬する先輩方がたくさん出演されているので、すごくプレッシャーもありました。中前監督とは以前『サンゴレンジャー』という映画でご一緒させていただいたことがあるのですが、今回はWOWOWドラマで主演としてキャスティングしていただけたので、とにかく1シーン1シーン、「いい画が撮れるように」ということだけを考えて、いま全力で撮影に取り組んでいます。

――シナリオ大賞受賞作のドラマということですが、台本を読んだ感想は?

すごく走るシーンが多いドラマだったので、省吾が走る姿を通じて、周りの人たちの想いだとか、それぞれが抱える過去を表現できたらいいなと、最初に台本を読んだ時は思いました。中前監督から「ドラマの前半部分は、なるべく明るく楽しくしたい」というお話があり、「青柳君も何かいいアイデアがあったら言ってね」と声をかけていただけたのがすごくありがたかったですね。コメディではあるんですが、合間合間に挟み込まれる回想シーンで、シリアスな部分もちゃんと見せつつ、省吾が過去を払拭して成長していくところが描けたらなと思っています。

――具体的に青柳さんから監督に提案された場面も?

現場で謎のステップを入れてみたんですが、それには監督が食いついてこなかったので、「あ、これはやめたほうがいいんだな」って(笑)。その都度、監督の反応を伺いながらいろいろ試してます。

――今回、元陸上選手という役どころですが、トレーニングはいつ頃から始められたんですか?

最近ジムをサボり気味で少し太ってしまったので、クランクイン前に食事制限と運動で3キロくらい絞りました。実際に競技場でコーチについて練習したのは、撮影の10日前くらいからですね。ウォーミングアップの仕方や、走るときの腕の振り方をアドバイスしてもらって。でも、「省吾はきれいなフォームより、荒削りの方がいい」と監督から言われたこともあり、ダイナミックにガムシャラに走ることで、省吾になれればいいかなと思っています。

全力疾走する場面はさすがにキツかった

――青柳さんはもともとサッカーをされていたということで、走りには結構自信があったんですか?

ゴールキーパーでした(笑)!

――!?(笑)。では、それほど走ったりは……

それこそEXILEのAKIRAさんなんて、静岡の磐田東高校出身でめちゃくちゃサッカーが上手いですし、高校や大学で本気でやってた人に比べたら全然経験は少ないんですけど、小・中学校時代はプロのサッカー選手になりたくて、結構真剣にやってましたね。

――今回、中前監督とは『サンゴレンジャー』に続く"異色ヒーローもの"でのタッグとなりますが、撮影現場の雰囲気はいかがですか?

中前監督はすごく頭の回転が速いので、現場のみんながそれに応えようと必死で頑張ってます。演出するにも、進行するにも、中前監督はとにかく指示が的確なんですよ。

――これまでの撮影中、特に印象に残っているシーンはありますか?

ドラマの終盤、省吾が海沿いを全力疾走する場面があるんですが、そのシーンの撮影はさすがにちょっとキツかったですね。ドローンで撮影していることもあって、結構な長い距離を全力疾走しているので、ぜひとも注目して欲しいです! あと、『サンゴレンジャー』をご覧になった方ならピンとくるかもしれませんが(笑)、海に飛び込むシーンも撮影しましたね。

――たしか台本にはなかったような……

そうなんです! 中前監督のアイデアで後から追加になったんですが、おそらく前の作品に引っかけてるんだと思うんですよね。中前監督のそういう柔軟な発想が、すごく面白いなと思いますね。

  • 食い逃げキラー

――千秋の父親役として竹中直人さんも出演されていますが、共演された感想はいかがですか?

竹中さんとは以前、舞台『レッドクリフ―愛―』でもご一緒させてもらったことがあるんですが、今回久々にドラマの現場で対峙させていただいて、改めて「竹中さんってすごい方だな」と思い知らされました。ドライ(リハーサル)では、「おい、翔!」とかふざけたりもするんですけど、サービス精神旺盛でみんなを盛り上げてくださるし、すごく素敵な方だなと思いますね。

――それにしても、「食い逃げ犯」を捕まえる役とは、ずいぶん変わった役柄ですよね。

「ステーキの鉄」とか「サラダバー純」とか(笑)、「何それ?」っていうような個性的なキャラを、ひたすら捕まえる役柄なんです。ちょっと変な「食い逃げ犯」たちを、省吾が真剣に追いかければ追いかけるほど、このドラマは面白くなるんじゃないかと思うので、そこはあえて真面目に取り組みたいですね。

――「食い逃げ犯」を追いかけながら、省吾自身も成長していく過程が興味深かったです。

ずっとくすぶっていた省吾が、千秋や「ワニーズ」のみんなと関わる中で、省吾なりに1歩か2歩、新たに踏み出したのか、それとも踏み出していないのか……といった微妙なところを、しっかりと演じられたらいいなと思っています。

――千秋と省吾のテンポのいい掛け合いも、このドラマの見どころの一つになりそうですね。

はっきりモノをいう千秋と、それに引っ張られていく省吾みたいな、傍から見ていてクスっと笑えるような二人の掛け合いは、中前監督が特にこだわっているシーンでもありますね。

――回想シーンでは、青柳さんの大学生姿も見られるとか。「俺まだまだイケるな」って思われました?

いや、イケてないですよ(笑)! アウトですよ、完全に。なので、そこはメイクさんに頑張っていただいて(笑)。分け目を変えてみたり、耳にかけてみたり、髪形でなんとか若く見えるように工夫してます。10代の頃のセリフは、監督から「チャラい感じで!」って念を押されているので、そこは20代の省吾と違いが出るように意識していますね。

――もちろん言える範囲で構わないのですが、青柳さんご自身にも、省吾のような「若気の至り」的なものって、あったりしますか?

う~ん……なんだろう、たくさんありすぎて(笑)。あ、でも若い頃、電話1本で仕事を辞めてしまったことは、今ではすごく後悔してますね。

――学生時代のアルバイトとかですか?

いや。札幌で2年くらい鉄筋工として働いてたんですけど、「歌やりたいから辞めます」って突然職場に電話して……。2年間も働かせてもらったのに、電話1本で済ますなんて、どうかと思いますよね。

――でもきっと、青柳さんが俳優や歌手として夢を叶えた姿を見て、応援してくれていると思いますよ!

いやぁ……会ったら謝りたいですね。