特撮テレビドラマ『仮面ライダーエグゼイド』のスピンオフVシネマ『仮面ライダーエグゼイド トリロジー アナザー・エンディング』の第3作として、3月3日より東京・新宿バルト9ほかにて公開中の映画『仮面ライダーゲンムVSレーザー』が、「ぴあ映画初日満足度ランキング」で1位を獲得するなど好調だ。
本作は『劇場版 仮面ライダーエグゼイド トゥルー・エンディング』から2年後の世界を舞台にした3つの連作物語(トリロジー)の完結編にあたり、仮面ライダーゲンム/檀黎斗と、仮面ライダーレーザーターボ/九条貴利矢という2人の仮面ライダーの"対立"をメインに置いたシリアスなストーリーが展開する。
3月3日には、東京・新宿バルト9で公開初日イベントを実施。上映後の舞台あいさつには、主演の岩永徹也と小野塚勇人、そして3部作すべての演出を手がけた鈴村展弘監督が登壇し、『ゲンムVSレーザー』にまつわるトークをハイテンション気味に繰り広げた。
Part1『ブレイブ&スナイプ』、Part2『パラドクスwithポッピー』でも物語の裏で暗躍していたが、Part3となる本作『ゲンムVSレーザー』ではいよいよ自身の"野望"を実現させるべく、大規模な行動に打って出た仮面ライダーゲンム/檀黎斗。ゲームクリエイターでありながら、ゲーマーとしても天才的な能力を得た黎斗を演じる岩永徹也は、「ライフがゼロになりまして……エグゼイドの物語の最後としては、よかったんじゃないでしょうか。変にコンティニューとかしないでね。これまで簡単なことでライフを落としていたんで(笑)、最後に対峙するのが貴利矢くんでよかったと思います!」と、かつて"神"を自称していた黎斗のキャラそのままに、クールなたたずまいで客席のファンたちを魅了した。
バグスターウィルスを調べていた元・監察医だったが、ゲンムによって"ゲームオーバー"として消滅。やがてバグスターとして復活し、仮面ライダーエグゼイド/宝生永夢(演:飯島寛騎)の頼もしい味方になった仮面ライダーレーザーターボ/九条貴利矢を演じた小野塚勇人は「この映画で貴利矢と黎斗の決着がつきます。これまで黎斗は"神"だなんだと言われていましたが、最後は男らしさのつかみあいとか、子どものケンカに近い応酬がありました(笑)。それだけ、お互いをさらけ出してぶつかりあう部分が、見る方の"オトコ心"をくすぐる熱い演出だと思います」と、因縁の相手である黎斗と正面から対決できたことに感慨を見せていた。
鈴村展弘監督は『ゲンムVSレーザー』のクライマックスである"黎斗と貴利矢の戦い"について「台本では、変身解除をした2人の芝居があるだけだったのですが、それだと勿体ないなと。みんな黎斗と貴利矢が実際に殴りあっている画が見たいと思いまして、イメージカットとして2人が拳を交えるところを撮りました。小野塚くんからも、そういうシーンが欲しいとリクエストがあって、僕も同じ気持ちだったのでやってみました」と、生身の男同士が素手で激しく殴りあう熱きアクションシーンの演出意図を語った。
黎斗と貴利矢の殴り合いシーンを振り返った岩永は、「拳が交差してお互いを殴る"クロスカウンター"に憧れていましたので、これが出来てうれしかった」と、迫力あるアクションができて満足気だった。しかしこのクロスカウンターのカットはハイスピードカメラで撮影されていたため、わずかな動きのズレが大きく目立ってしまう。小野塚から「映像を観てみると、殴る直前から徹ちゃん(岩永)の顔がリアクションを取っているんです。スーパースローはウソつけないですね(笑)」と指摘された岩永だが、そんな言葉にもめげずに「風圧でやられたんです。風圧!」と、平静を装って言い返していた。
「作中で好きなシーンは?」と尋ねられた岩永は、「ポスタービジュアルにも使われている、『神の恵みを、ありがたく受け取れ!』とガシャットを貴利矢に渡すところですね。いつもと違う言い方をしていて、とてもカッコよく撮っていただき光栄です」と、お気に入りのシーンを挙げた。これを受けた小野塚は「最初は黎斗からもらったガシャットを手で受け取って変身、という流れだったんですが、ずっと前から"座り"の状態から変身がしてみたくて、このシーンだったらできるんじゃないかと思って、今回やらせていただきました」と、以前からあたためていた貴利矢の特徴的な"変身"シーンに挑戦したことを明らかにした。
3部作のトリを務める岩永、小野塚の演技について、鈴村監督は「小野塚くんは芝居が上手くて、安心して演出ができた。岩永くんは……最初にスピンオフ作品『仮面ライダーゲンム』(YouTube配信)でご一緒したとき、すでに取り返しのつかない状態、独自の路線に行っていた(笑)ので、こちらも安心して任せました。今回は最後のVシネということで、悔いの残らないようにアイデアを出してね、という話をしました」と、それぞれキャラクターを完全に自分のものにしている2人だけに、思う存分役を演じてもらいたいという思いがあったことを話した。
岩永は、自分が提案した芝居のアイデアとして「最後のシーンで、指を2本立てて『チョリーッス』みたいなポーズを取りましたけれど、あれは第1話のときに撮っていただいたスチール写真の中で取っていたポーズと一緒なんです。あのとき、いろんなポーズをしていたのに、指2本で決めたポーズの写真がよく雑誌などで使われることが多くて『テレビの劇中ではあんなポーズをやっていなかったのに』と、ずっと思っていたんです。だから最後の場面に、あのポーズを入れ込んでみました」と、独特のこだわりに満ちた決めポーズの秘密を明かした。
小野塚の気に入っているシーンとしては、「降りしきる雨の中、白衣を脱いで黎斗との戦いに赴く」ところを挙げ、「あそこで白衣を脱いだのは、医者ではなく1人の男としてゲンムに立ち向かう、という部分を表しています」と、人の命を救う医者というポジションを離れ、人類の脅威となる黎斗に挑んでいく"覚悟"を示したシーンの説明を行った。その一方で、雨に打たれ続けての撮影がよほど寒かったらしく「アロハシャツだけでなく、下にもう一枚着ておけばよかったね!」とこぼして笑いを誘った。
岩永が「雨降らしのプロとしての覚悟を感じたよ!」と、雨に打たれるシーンの多かった小野塚をねぎらうと、「いや専門家になったつもりないから! しかし、映像だとどうして"寒さ"は伝わらないんでしょうね」と、とにかく寒さに悩まされた撮影だったことを力説。その反面、「一回濡れたくらいなら大丈夫なんですけど、ずっと雨に濡れていると体力をどんどん消耗していくので、なるべく動かないようにじっとしていました。要は持久力が大事なんですよ。しかし、最後に永夢からビショビショに濡れた白衣を着せられたときは、あまりの寒さに意識が飛びました」と、寒さに負けず最高の演技をこなす俳優魂を見せたエピソードも明かしていた。
やがて「みなさんにうれしいお知らせがあります」と岩永が手にしたもの、それは一冊の文庫本だった。なんと、『アナザー・エンディング』3部作のさらに"その後"を描いた小説版『仮面ライダーエグゼイド ~マイティノベルX~』が講談社キャラクター文庫として6月上旬に発売されることが決まった。執筆を手がけるのはもちろん、『エグゼイド』のメインライターとしてテレビシリーズ、劇場版、Vシネマすべてのエピソードを作り上げた高橋悠也氏である。
最後に岩永は「トリロジーの最後を、黎斗と貴利矢で締めさせていただきました。映像を作りながらストーリーが考えられていったのですが、まるで最初から決まっていたかのような美しい終わり方を迎えて、2人ともすごい役を演じることができましたし、人生の宝物になったと思います。檀黎斗としては、もう"神"として動くことがなくなっても、"信者"のみなさんが大暴れしてほしい(笑)。世界を変えるのは神ではなく、神の言葉を受け継いだ人間たちだと思っています!」と、"神"らしく超然とした語りで大勢のファンたちにラストメッセージを贈った。
Vシネマ『仮面ライダーゲンムVSレーザー』は、新宿バルト9ほかで公開中。なお、Blu-rayおよびDVDはPart1『ブレイブ&スナイプ』が3月28日、Part2『パラドクスwithポッピー』が4月11日、Part3『ゲンムVSレーザー』が4月25日に発売される。
『仮面ライダーゲンムVSレーザー』あらすじ
新たなガシャット「ゴッドマキシマムマイティX」を手にした檀黎斗が仕掛ける最後のゲーム「ゾンビクロニクル」によって、世界は未曾有のパニックに陥ってしまった。首都圏各地で仮面ライダーゲンムが大量発生し、次々と人間を襲う事件が勃発。被害者は新種のゾンビバグスターウイルスに感染し、ゾンビバグスターに変貌してしまう。エグゼイドの「ムテキ」に勝るとも劣らない強大な力を得た黎斗を止めるための"鍵"に気づいた貴利矢は、黎斗の父・檀正宗からある言葉を託され、単身ゲンムに立ち向かう。果たして2人の、そして世界の運命は如何に……?