--日本におけるDXについて、どのような考えを持っていますか?
クラック氏:DXはグローバルで盛んに叫ばれているものの、文化を変えることと同義のため容易に進めることができない。
しかし、DXを遂げることは日本にとっては喫緊の課題であり、官民を挙げて紙に対して宣戦布告をしなければならない。日本は、2025年には国民の4分の1が70歳以上と高齢化が加速していくため、それより下の年代が支えなければならない。これに対する唯一の答えは生産性の向上だ。
また、日本はハンコ文化が根強く残っている。重要なことは変化であり、個人、会社、国が成長しなければ衰退の一途をたどってしまう。これまでのビジネスの歴史を振り返れば、エネルギー、輸送、生産、情報発信などに変化があったが、現在の日本は例外であり、技術を保有しているにもかかわらず、ハンコの使用や紙ベースの業務など、従来の手法を採用している。
他国では技術の採用や変革のスピードが加速しているが、日本では進んでいないため国・企業としてますます水をあけられるだろう。事実、12月には「フォーチュン・グローバル・フォーラム」が中国・広州で開催され、わたしも出席したが中国では加速度的にDXに取り組んでいる。
日本企業はDXは重要であると認識しつつも、利益の追求や競争力の強化などを優先している。本気でDXを進める余裕がないのは日本だけであり、他国はそのような問題を抱えていながらも「やらざるを得ない」という方向に向かっている。
さらに、日本企業は海外でも事業展開しており、現地企業との競争は避けては通れない。そのため、現地の関連会社や子会社もDXを進めなければ、生き残れなくなる可能性がある。スピード感を持ったDXを進めなければならないものの、日本は入念な準備が必要なため時間を要することに加え、決定すれば実行に移すまでは早いが、現状では決定するに至っていない。
日本のDXは将来的な競争力、安全保障、生活の質の向上にもかかわる問題であり、工場の自動化やロボットの導入などでは先陣を切って取り組んでいるものの、オフィスワーカーは紙に埋もれている状態だ。
時間は限られているためDXに取り組むのは急務だろう。時間はない、時間は経過していく、孫子の言葉を借りるならば戦いに寄与する武器はスピードだ。
--日本の働き方改革に対してコメントをください。
クラック氏:その国特有の文化や風土、商習慣などの改善は一番のネックであり、これは人間が現状を「変える」ことに対して抵抗を持つからではないだろうか。また、米国の場合は個人、企業、国という順に考えるが、日本は国、企業、個人と考える傾向があるのではないかと思う。
日本は生産性の向上を図らなければならないが、オフィスの効率化は進んでいない。これまでの歴史上でも大きな変革を遂げてきたにもかかわらず、DXによる働き方改革を進めていないのが不思議に感じる。ハンコは素晴らしい発明・手法だが、電子ハンコにシフトしなければならない時期が到来しているのではないだろうか。
そこで、われわれが日本のDXの触媒となる。さまざまなソフトウェアと統合しているほか、APIで連携でき、グローバルスタンダードとなっている。ツールではあるが、文化を動かす触媒になり得ると確信している。
NTTアドバンステクノロジがドキュサインを採用しているほか、シヤチハタとは協業し、電子ハンコをリリースしている。承認や契約合意など、さまざまな意思決定プロセスにおいてドキュサインを採用すれば、迅速な処理に加え、セキュリティと監査証跡を担保することを可能としているため、信頼のスタンダードになりつつある。
そして、触媒になる上で最も重要なのは事例だ。今後は、大規模にドキュサインを導入した企業の事例も必要となる。確かに、日本では電子サインに対する障壁は高いが、法律の整備など政府レベルの取り組みに加え、民間の大規模な事例が必要であり、言わずもがなビジネスはスピードが命だ。