昨年末から話題となっている仮想通貨。取引をした人の中には、確定申告が必要なケースもあります。今回は「仮想通貨をやっている人が気をつけるべき確定申告」について、税理士の平井隆さんに伺いました。

  • 仮想通貨をやっている人が気をつけるべき確定申告(画像はイメージ)

ビットコインなどの仮想通貨取引をしている人で確定申告が必要なケース

(1)ビットコイン売却

ビットコインのみならず他の仮想通貨(暗号通貨)を持っている方が、売却し利益が出た場合には確定申告が必要になります。ただし、確定申告をする必要がない方で他の所得と仮想通貨の利益の合計が20万円以下の場合には確定申告が不要となります。

例えば1BTCを100万円で購入し、その後その1BTCを125万円で売却した場合には売却金額125万円と購入金額100万円との差額25万円が利益(雑所得)として扱われます。

(2)ビットコインで買い物

ビットコインで買い物をした場合には、買い物した商品の金額とビットコインの購入価額との差額がビットコインでの利益として扱われます。このビットコインの利益は、上記の売却の場合と同様に扱われます。

例えば25万円の商品を購入する際に0.2BTC(購入価格20万円)で支払いを行った場合には、商品の購入金額25万円とBTCの購入金額20万円との差額5万円がビットコインの利益(雑所得)として扱われます。

(3)ビットコインを別の仮想通貨に両替

ビットコインを別の仮想通貨に両替した場合には、両替時にビットコインの利益を確定し、その後新たな仮想通貨を取得したものと考えます。したがって、両替時にビットコインで利益が出ている場合には上記の売却と同様に扱われます。この場合の所得金額の計算は新たな仮想通貨の購入金額とビットコインの購入金額との差額が利益として扱われます。

例えば1BTCを100万円で購入し、保有していた人が、その1BTCを15ETH(イーサリアム、両替時のETHの円換算額135万円とする)に両替した場合には、ETHの円換算額135万円とBTCの購入金額100万円との差額35万円がビットコインの利益(雑所得)として扱われます。

利益に対して具体的にどのくらい課税される?

仮想通貨での利益は雑所得の総合課税という扱いになります。したがって、仮想通貨での利益だけに税率をかけるのではなく、他の給料などの所得と合算して税率を乗じていきます。税率の区分は次の通りです。

  • 税率の区分

例えば所得金額が500万円の場合、500万円に税率20%を乗じてその金額から控除額42万7,500円を控除して税額を計算します。

また、平成49年までの間は上記の税額に加えて復興特別所得税(所得税額の2.1%)が加算されます。

ビットコイン(仮想通貨)で確定申告をする場合、気をつけること

仮想通貨の確定申告をするに当たっての注意点には以下のものがあります。

(1)取得価額の計算方法

ビットコインの利益金額を計算するに当たっては、売却したビットコインの取得価額を計算します。その取得価額の計算に当たっては移動平均法又は総平均法の方法によって計算します。ただし、総平均法によって計算する場合には継続的に総平均法で計算しなければなりません(ある年は移動平均法で計算し、ある年は総平均法で計算ということができません。)

(2)新たなコインの付与

仮想通貨のハードフォークなどで新たなコインが付与された場合には、付与されたときはそのコイン自体に価値がないため所得にはなりません。しかし、その付与されたコインを売却したときには、売却金額がそのまま所得金額となります(付与されたコインの取得価額が0円であるため)。

(3)損失の取り扱い

ビットコインの売却や使用などで損失が出てしまった場合には、雑所得以外の所得との通算ができません。例えば、ビットコインや他の通貨の売却での利益とは相殺することはできますが、給料所得や事業所得、不動産所得などとは通算ができません。

(4)外国為替証拠金取引(FX取引)とは異なります

FX取引は申告分離課税方式が採られており、所得税の税率もFX取引の所得については20.42%となっていますが、仮想通貨で証拠金取引を行った場合には申告分離課税方式ではなく、総合課税での課税となるため、所得金額に応じて所得税率が上がっていき、最大で45%(所得税のみ)の所得税を納める必要があります。

仮想通貨自体がまだできて間もないこともあり、まだまだ想定できていないこともありますので、一般的に公表されている内容以外の内容の場合には、税務署にご相談ください。

今回初めて確定申告をする人に知っていてほしいこと

個人の所得(利益)に対して課税される税金には、所得税と住民税があります。確定申告を行った場合にはその申告期限までに申告所の提出と納税が必要となります。この確定申告での納税はあくまで所得税のみになります。

住民税についてはその提出した申告所に基づいて、住所地の役所の方で計算し、納付書が送られています。所得税と住民税の納税時期が異なりますので、納税が出る方は納付資金に注意する必要があるでしょう。

また、住民税については給与からの天引き(特別徴収)と自分での納付(普通徴収)という制度があります。給与についての住民税については原則として特別徴収となっています。給与以外の収入についての住民税については確定申告の際に普通徴収か特別徴収か選べるようになっています。

仮想通貨での利益に対しての住民税を特別徴収で申告した場合には毎月の給与から仮想通貨に対する住民税も併せて天引きされますので、大きく利益を出した方は毎月の給与の手取りがかなり少なくなりますので注意が必要です。

確定申告をしなかった場合や遅れてしまった場合はどうなる?

確定申告をすべき人が確定申告をしなかった場合、期限が過ぎた直後は特段何も起きません。しかし、その後税務署から問い合わせが来ます。それがその年なのか、翌年なのか、何年後なのか、それはわかりません。

この場合、本来申告すべきだったのにしていなかったということで罰金(無申告加算税。納付すべき所得税の15%~20%)が課されます。また、納付期限を過ぎて納税することになりますので本来の納付期限から実際に納付した日までの期間の延滞税が課されます。

また、遅れて申告した場合にも同様で罰金(無申告加算税)と延滞税が課されます。ただし、税務署から指摘される前に自主的に申告・納税をした場合には罰金が軽減(納付すべき所得税の10%~15%)されます。

仮想通貨の流出被害にあった場合でも、利益が出たら納税は必要?

仮想通貨の流失被害にあった場合の取り扱いについては、まだ国税庁が正式な発表を行っておらず、またコインチェックの補償の内容も定まっていないので確定的なことは言えません。

ただし、現状、補償内容が決まっていない段階では特段利益が確定していないので確定申告の必要はないかと思います。

流出した仮想通貨が円で返金補償された場合、利益として確定申告は必要?

今後、コインチェックが日本円で返金補償をした場合には、購入金額と返金金額との差額で利益が出ているようであれば確定申告が必要になってくるかと思われます。これについては先日、麻生太郎財務相兼金融担当相が所得税の課税対象とする可能性を示唆していました。

いずれにしても、今後のコインチェックの対応や国税庁の発表を注意深く見守る必要はあると思います。