お部屋が遠方だったり、平日は仕事が忙しかったり……。なかなか時間が取れずに内見に行けないことありませんか。今はインターネットでお部屋はもちろん、周辺地域の様子も見られるので、「内見なしでもいいかな」と思うこともあるかもしれませんが、そこはやっぱり見ておいたほうが安心です。その理由を不動産・住生活ライターの高田七穂さんに聞きました。
内見をしないで部屋を決めるデメリットについて
この時期、部屋探しをする人が多く、賃貸物件の動きは早くなっています。ときには、気に入った住まいに出会っても、時間差で契約済みになってしまうこともあります。
初めての一人暮らしでは、いろいろなことで頭がいっぱいになるでしょう。時間もないでしょうし、引っ越し先が遠方の場合も。こうなると「内見しないで決めたい」と思うことがあるかもしれません。インターネットで調べれば、室内や周辺環境を映像で見ることもできますから。
けれどこれにはリスクが伴います。例えば、洋服に置き換えて考えてみましょう。試着せずにインターネットの画像だけで購入した洋服に後悔したことはありませんか。色は好みでしたか。サイズはどうでしたか。洋服なら、金額はそれほどでもないため、返品が面倒だと思ったら妥協して購入しても大きな負担にはならないでしょう。しかし住まいはちょっと異なります。一度の引っ越しで、家賃の数か月分が必要になります。できるだけ事前に調べて、入居後に「しまった」と思うのは避けたいものです。
確かに、インターネットでは間取りや設備、周辺のお店などをチェックできます。けれども、実際の部屋はイメージしたものより、もっと狭いかもしれません。備え付けのエアコンが古く、音がうるさい可能性もあります。隣の音がどのくらい聞こえるかわかりませんし、前の道路に多くの車が往来しているかもしれません。女性なら夜の帰り道は大丈夫でしょうか。ゴミ出しがきちんとされておらず、いつもゴミが散乱しているかも。生活を始めると、これらはとても気になってくるはずです。
なかには「壁に大きなキズがあった」「図面と異なる点がある」「室内にニオイが染みついている」ということもあります。もらった図面を見てみましょう。「現況と図面が異なるときには現況を優先します」と書かれているはず。内見しないで決めると、見なかったその部屋の状態を認めなければなりません。
もし、内見のタイミングが合わず、その部屋が決まってしまったときには、「縁がなかった」と思うのがよさそうです。近年、賃貸住宅は増えています。望むタイプに出会えるのが、今回だけとは考えられません。必ず一度は内見をして、納得してから重要事項説明にのぞみ、契約書に印鑑を押しましょう。
高田七穂(たかだ なお):不動産・住生活ライター。住まいの選び方や管理、リフォームなどを専門に執筆。モットーは「住む側や消費者の視点」。書籍に『最高のマンションを手に入れる方法』(共著)『マンションは消費税増税前に絶対買うべし!?』(いずれもエクスナレッジ)など。「夕刊フジ」にて『住まいの処方銭』連載中