本連載で何度も取り上げてきたWaaS(Windows as a Service)だが、Windows 8.x以前よりもインストール環境が整い、環境構築が容易になっている。これはMicrosoftがWaaSのコンセプトとして、クライアントPCの展開とサービスを簡略化するだけでなく、Windows 10を広げ、維持するためのリソースを長期にわたり平均化することに重点を置いていることが大きい。
コンシューマー向けのインストール環境では、Media Creation Toolという名称の方が有名な「Windows 10セットアップ」が挙げられるが、これは実に便利だ。必要な場面でUSBインストーラーを作成するだけ済む手軽さは、スマートフォンのアプリケーションに通ずるものがある。
一方、開発者向けだが、VMwareやHyper-V、VirtualBox、Parallels用Windows 10 ProやEnterpriseエディションの仮想マシンをダウンロードできる「Windows 10仮想マシンのダウンロード」もおすすめだ。もちろん実機へのインストールは不可能だが、短期間で大量の仮想マシンを必要とする場面で役立つ。
筆者の場合、とある案件で数台の仮想マシンを同時に動かす必要があった。本来であればMicrosoft Azure上で仮想マシンを必要台数分起動し、任意のスクリプトを同時に走らせた方が簡単だろう。低スペックなB1S(1vCPU、1GB RAM)でも1時間1.21円と非常に安価だ。もっとも今回は仮想マシンからアクセスするターゲットが手元の物理PCだったため、デスクトップPCに仮想マシンを多数作成した。
ただ、クイック作成の利便性に気付いたのは後の話で、前述した案件に関しては既存の仮想マシンをシャットダウンしてから、1度エクスポートし、そこからインポートと仮想マシン名の変更を繰り返して環境構築を行っている。同様の作業をWindows 7/8.x時代に行う場合、VMware Workstation(現VMware Workstation Pro)を用いていたと思うが、HDD時代のファイル操作を考えると気が遠くなる。
このように便利になったWindows 10のインストール環境だが、新規インストールしなければならないような場面が大きく減った。Windows 10の回復機能を使えば、完全に新規インストール直後の状態に戻すか、ユーザーファイルのみ残した準新規インストール直後の状態に戻すことができる。
筆者もこの数年で実機にインストールしたのは、大幅にPCパーツを交換するか大型アップデートとなる機能更新プログラムリリース時の数回程度。当初はバックアップ機能の中途半端なサポート状況に不満を覚えた筆者だが、回復機能の利便性を鑑みると、Microsoftがバックアップ機能に消極的な姿勢を見せるのも納得が行く。
Windows 7やWindows 8.xと比べてドラスティックに変わったWindows 10。リリースから約2年半を経て、WaaSコンセプトに馴染んできた方も増えてきたことだろう。約2年後の2020年1月14日にWindows 7の延長サポート期間終了を迎えるが、バージョンアップに手をこまねいている方は、より便利になったWindows 10へ安心して移行してほしい。
阿久津良和(Cactus)