既報のとおり、米Micron Technologyと米Intelは1月8日(米国時間)、2018年末から2019年はじめにかけて出荷される予定の第3世代の3D NAND(96層)技術の開発完了をもって、NAND開発の協業を解消することで合意したと発表した。
しかし、その後のロードマップとしては、各社が独自に開発や製造を続行するというばかりで、なぜそのような道を選んだのか謎となっていた。バラバラに開発や製造をするのは、コスト的な面で非効率であり、協業解消の裏に何か事情があるのではないかと勘繰る向きも業界内にはあった。
そうした中、台湾TrendForceのメモリ市場調査部門であるDRAMeXchangeは3月1日付けで、「Intelは中国の清華紫光集団(Tsinghua Unigroup)と、NANDの提供と販売について現在協議中である」と報じた。
DRAMeXchangeによれば、Intelは中国市場の攻略に最大の関心を寄せており、CPU、モデム、メモリ製品を含むさまざまな製品で協業や合弁事業の機会を積極的に探っているという。また、Intelは中国での半導体生産能力を拡大させており、すでに大連の工場は3D-NANDの量産を開始している。大連工場の生産能力は継続的に上昇すると見込まれている。
また、清華紫光集団のストレージ事業部門であるUNIC Memory Technologyは、Intelと長期的な戦略的協力関係について協議を行っているとも見られており、今回の協議が合意に至れば、UNICはIntelが提供する300mm NANDウェハの最終検査(テスト)、パッケージング(実装)および販売を担当することになるという。
清華紫光集団は、NAND事業に関する独自の戦略として、同集団のもう1つの傘下企業であるYangtze Memory Technologies(YMTC)は、NAND製品を企画、設計、製造を行い、それをUNICが販売するという方針を掲げている。しかし、YMTCの3D NAND開発はまだ32層までしか進んでいない。そこで、Intelは、YMTCが64層、さらにはそれ以上高層の3D NANDを製造できるようになるまで、毎月、大連で製造した64層のNANDウェハをUNICに提供するというのが、今回の背景で見えてきた構造となる。IntelのNANDウェハが提供されることにより、UNICはUFS、eMMC、およびその他のSSD製品を製造することができるようになる。
この結果、UNICは販売面でNANDの競争力を高めるだけでなく、メモリ市場でブランド価値を高めることが可能になる。それでもYMTCとUNICが、すぐにハイエンドやミドルクラスのスマートフォン市場でNANDのシェアを高められるわけではないし、クライアントSSD分野で競争力を高めることができるわけでもないが、Chromebookや他の民生用電子機器といった分野ではシェアを拡大できる可能性がある。そこを足がかりに突破口を見出せれば、将来的には、NANDの価格にも影響を与えるような存在になる可能性があるとTrendForceは見ている。
なお、台湾DigiTimesや英ElectronicsWeeklyなどの複数の海外メディアは、2018年初めから、IntelがYMTCに3D NANDの製造技術を供与するのではないかとの憶測記事を掲載していたが、今回のTrendForceの報道がこうした憶測を指したものであるか否かは不明である、Intelは、本件について今のところ何もコメントしていない。ただし、2017年末、紫光集団は韓国SK Hynixから3D NAND技術を導入するのではないかとのうわさが出た際には、即座に否定していたが、Intelとのうわさに対しては否定していないことを考慮する必要があるかもしれない。
ちなみにIntelは2月22日(米国時間)、清華紫光集団の中核的存在である半導体ファブレスUnigroup Spreadtrum & RDAと5G分野で長期的な戦略的な協業契約を結んだと発表している。両社は、共同で中国市場向けに5Gスマートフォン・プラットフォームを開発し、Intelが開発したモデムを搭載するという。これらの動きを踏まえれば、Intelと清華紫光集団は、半導体の設計から製造に至るまでの幅広いバリューチェーンに向けて全面的に協業体制を敷きつつあると見て取れる。今後、Intelがどのような戦略で事業の拡大を目指すのかが注目される。