外為どっとコム総合研究所の神田卓也氏が2018年1月の為替相場レビューと、今後注目の経済指標やイベントをもとにした相場展望をお届けする。
ユーロ/円 2月の推移
2月のユーロ/円相場は130.030~137.503円のレンジで推移し、月間の終値ベースでは約4.0%の大幅な下落(ユーロ安・円高)となった。日銀が金額無制限の「指値オペ」を発動した2日に137.50円台まで上昇して2015年8月以来の高値を付けたが、その後は一転して下落した。
米1月雇用統計で平均時給が大幅に伸びた事をきっかけに、米長期金利が上昇するとともに世界的に株価が下落する中、既存のユーロ買い・円売りポジションが逆流。下旬に入ると債券や株式市場の混乱は次第に収まったが、ユーロ圏の経済指標に弱めの結果が目立った事や欧州中銀(ECB)が早期の緩和解除に慎重な姿勢を示した事などからユーロの軟調推移は続き、28日には130.00円付近まで下落して約5カ月半ぶりの安値圏に沈んだ。
ユーロ/円 3月の見通し
欧州中銀(ECB)の金融政策正常化期待を原動力として進んできたユーロ高基調に陰りが見えてきた。ドラギECB総裁らがユーロ高に警鐘を鳴らし、市場に根強く残る早期利上げ期待をけん制した事などが背景だ。ユーロ/円は昨年4月の114.841円から、今年2月の137.503円まで23円近く上昇してきたが、本稿執筆時点(3月1日10時)で129.80円台まで反落しており、中長期トレンドラインの52週移動平均線(執筆時128.988円)割れが視野に入っている。
4日には、ドイツのメルケル首相率いるキリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)との大連立の是非について、独社会民主党(SPD)が行っている党員投票の結果が判明する。また5日には、前日に行われるイタリアの総選挙の結果も判明する。いずれも大きな波乱はないと見られ、一時的にはユーロ買いを誘発する可能性もあるが、持続性は乏しいだろう。
ドルが一時の下げから持ち直して反発基調となっている事や、本邦企業の決算期末に向けた資金還流(リパトリエーション)観測などで円が買われやすい季節性を踏まえれば、ユーロには売り圧力がかかりやすいと考えられる。ユーロ/円は、前述の52週移動平均線を割り込めば、昨年来上げ幅の半値押し水準(126.172円)まで下値余地が拡大しそうだ。
執筆者プロフィール : 神田 卓也(かんだ たくや)
株式会社外為どっとコム総合研究所 取締役調査部長。1991年9月、4年半の証券会社勤務を経て株式会社メイタン・トラディションに入社。為替(ドル/円スポットデスク)を皮切りに、資金(デポジット)、金利デリバティブ等、各種金融商品の国際取引仲介業務を担当。その後、2009年7月に外為どっとコム総合研究所の創業に参画し、為替相場・市場の調査に携わる。2011年12月より現職。現在、個人FX投資家に向けた為替情報の配信(デイリーレポート『外為トゥデイ』など)を主業務とする傍ら、相場動向などについて、WEB・新聞・雑誌・テレビ等にコメントを発信。Twitterアカウント:@kandaTakuya