工事現場を通りかかった時、「○○課長さ~ん、これでいいですか?」って大声で叫んでいるのを耳にしました。ん?「さん」って付けるんだっけ? というわけで、今回は「役職+さん」の呼び方について調べてみました。
■「さん」の意味
「さん」という言葉を辞書で引いてみると、「『さま(様)』の転」「『さま』の音変化」と表記されており、人名や役職、立場に付けると「尊敬」の意を、動物名に付けると「親愛」の意を、体言または体言に準ずる語に付けると「丁寧」の意を表します。例を挙げると、順に「お父さん」「お猿さん」「ご苦労さん」など。
■「役職+敬称」はアリ?
日本企業の役職には、会長や社長、専務、部長、課長などいろいろありますが、これらの役職に就いている人を、「○○社長さん」と「さん」付けで呼んだり、メールでも「○○社長殿」と表記する人がいますが、これは誤りです。役職には「敬称」が含まれていることから、敬称に「さん」や「殿」を付ける必要はありません。
一般的に用いられる敬称としては、「様」「殿」「氏」「嬢」「夫人」などがありますが、「先生」「教授」「社長」「部長」など、特定の職業や役職を示す言葉そのものも敬称として扱われます。このような特定の役職に「様」などを添えると、二重敬称となってしまいますので注意が必要です。
とは言え、「役職」に「様」などを重ねてしまうのは、より敬意を示したいという気持ちの現れではないでしょうか。どうしても「様」などを添えたいのであれば、「社長の○○様」「A社部長 ○○様」といった表現にすると良いでしょう。
■「役職+さん」が許される世界
「社長さん」「専務さん」なんて耳にすると、水商売のシーンを思い出す人も多いでしょう。役職に「さん」を付ける呼び方は、水商売の接客テクニックのひとつでもあり、その世界でのみ許される独特な表現と言えるでしょう。それゆえ、ビジネスシーンでこの呼び方を使うと失礼だと感じる人も多いので、気を付けましょう。
■正しい呼び方と例文
役職に就いている人を呼ぶ際は、役職の後には何も付けないのが正解です。
- 「○○専務、本日3時より役員会議の予定となっております」
- 「明日、A社の○○社長がいらっしゃいます」
社内では、自社の役員にも他社の役員に対しても、「様」などの敬称は不要です。
- 「すぐに、部長の○○を呼んで参ります」
- 「弊社部長の○○から書類を預かって参りました」
自社の役員を社外の人の前で呼ぶ際には、社外の人を立てる必要があることから、「部長の○○」「弊社の○○」など、「呼び捨て」が基本です。
- 「A社専務の○○様からお電話です」
- 「B社 △△部部長 ○○ 様」(メールや文書の場合)
「様」などの敬称を付ける場合は、役職を名前の前に置きましょう。
今回は「役職+さん」という表現から、敬称の使い方についてご紹介しました。正しい使い方をマスターし、ビジネスシーンで役立てましょう。