TDKが人工知能(AI)を搭載した盆栽「BonsAI(ボンス・エーアイ)」のコンセプトムービーを公開した。人と会話する、水をねだる、日の光を求めて動き回る、といった機能を持ち、話題を呼びそうなネタだが、なぜTDKはこうした変り種を考案したのだろうか。
BonsAIが生まれたいきさつ
「BonsAI」誕生の原点は2015年。TDKが創立80周年を迎えた同年に“Attracting Tomorrow”というコミュニケーションメッセージを掲げ、ブランディング活動を進めたことに始まる。その理由を端的に言えば、TDKがどんな会社かを正しく認知してもらうためだった。
30代以上はTDKを知っているだろう。かつてカセットテープやビデオテープなど消費者向け商品を販売し、イメージは残っているはずだ。しかし、未だにテープの販売や音楽関連のビジネスを展開していると誤認されることがあり、誤ったイメージを正したかったのだという。それがブランディングを進めた理由だ。
もうひとつ。カセットテープなど。かつての商品は市場から姿を消し、同社のビジネスのほぼ100%がBtoBとなってしまった。その結果として、20代には知名度が浸透していないという課題も抱えていた。
これらの課題を解決するために始めたのが、テレビCMだった。同社は2015年にテレビCMを再開。スティーヴィー・ワンダーさんらを起用したCMで社名を訴求した。翌2016年にはメディアアーティストの落合陽一さんらを起用したテレビCMで、TDKがテクノロジーに関連する会社であることを訴えのだ。
これらをホップ、ステップとして、帰結のジャンプに当たるのが、目下、取り組んでいる「テクノロジーでなにしよう」というテーマだ。このテーマを具現化させたものがBonsAIであり、「TDKがどんな会社なのか」を具体的に伝える使命を帯びているというわけだ。
TDKはどんなメーカーか
BonsAIを見れば、TDKのことがざっくりとわかる。BonsAIは人と会話し、自ら光って水をねだり、自律走行もする。ここにメーカーであるTDKの技術、製品が使われる。
たとえば、安定した走行を実現するための9軸センサー、電源供給や照度センサーの役割を果たすフィルム太陽電池、ケーブル不要のワイヤレス給電装置だ。ほかにも、会話や駆動を制御するマイクロコンピュータ、各種コンデンサやインダクタもTDKの製品だ。
TDKは総合電子部品メーカーと表現されるが、こうしてBonsAIを通じて見てみると、何に取り組んでいるかわかりやすい。ぼやっとした言葉とイメージから脱却させる大きな力をもったスーパー盆栽といえるだろう。ミッションを達成するために、後はBonsAIが大きな話題になるだけだ。