主婦・母親向けの教育コースを提供するデジタルハリウッド
では、そういった人材はどこで得られるのかということになるが、本稿ではデジタルハリウッドの取り組みを紹介しよう。
デジタルハリウッドは2013年から「Webデザイナー専攻 主婦・ママクラス」を開講している。これは、主婦を対象とした講座で、育児をしながらデザインやWeb技術などの学業に取り組むことができる。
具体的には、PhotoshopやIllustratorといったグラフィックソフトウェアの操作方法、Webページの制作技術(HTML5、CSS3、JavaScript、jQuery)を学べるカリキュラムになっており、コースを修了すると、スマホサイトから大型Webサイト、Web広告まで手がけることが可能なスキルが身につくという。週に1回は出席が必要だが、それ以外はリモートで学業に取り組んでもよい。また、教室には子供が遊べるキッズペースも用意されており、子連れ授業に参加する人もいる。なんとも、育児中の女性としては助かるコースである。
デジタルハリウッドは先日、仕事マッチングイベント「主婦・ママ卒業制作展」を開催した。
同イベントは、「Webデザイナー専攻 主婦・ママクラス」を受講した卒業生の卒業制作を展示し、企業の採用担当者に見てもらうというもので、卒業生と企業のマッチングを狙ったイベントとなっている。人材を求める企業はこのイベントに参加して制作物をチェックし、気になった作品の制作者と技術や就職に関して議論できる。企業としては目の前に成果物があり、相手の力量や要求を踏まえた上で雇用を検討できるため、相互利益の関係を構築しやすい。
2013年に開講された「主婦・ママクラス」は、当時の卒業生や企業の要望を受けて設立したものだった。企業側も常にフルタイム就労の従業員を必要としているわけではなく、時短就労の従業員を求めていることがある。また、卒業生が出産で産休や退職することも多く、要望を受ける形で誕生したのが同クラスというわけだ。
「主婦・ママクラス」はこのところ募集をかけても定員に達することが多いという。メディアを通じて知名度が上がってきたこともあるが、こうしたコースを必要としている女性が多いということが潜在的な背景としてあるようだ。
解消したい時短就労者とフルタイム就労者の不満
時短就労を希望する人が不安に感じることの1つが、フルタイム従業員に対する気遣いだ。時短就労とフルタイム就労の区別ができていない環境では、時短就労で終わらなかった業務がそのままフルタイム就労側にシフトすることがある。こうなると、時短就労側は責任を他人に押しつけたような形になり、また、フルタイム就労側は仕事の尻拭いをしている気分になる。時短就労が雰囲気がよくない職場作りを担ってしまうというわけだ。
時短就労とフルタイム就労で業務内容を完全に分離できるなら、それは1つの解決策だ。お互いに自分の業務に責任を持ちやすく、完結させることができる。業務の分離が可能であれば、リモート就労の可能性も模索できる。こうした作業が可能であればラッキーだろう。
時短就労とフルタイム就労が同じ業務内容になってしまう場合、逆に時短就労側が納得のいかない状況になることもある。同じ量の業務を時短就労とフルタイム就労でこなしている場合、業務効率は時短就労のほうが高いにもかかわらず、給与はフルタイム就労よりも低いという状況になる。フルタイム就労側は残業手当も出るなど、さらに不公平感を煽ることになる。
こうした摩擦は表面には現れないものの、従業員間で密やかに共有されることがある。不満なんてどこにでもあるものと割り切ってしまうのも手だが、できれば解消して気遣いが最小限で済む仕組みを作ることが、すべての従業員が意欲的に働くことができる大きな一歩になるだろう。
育児中の女性という人材の宝
新卒学生の就労が長く続かないと言われているが、これは根性や能力の問題というよりは、就職に求めるものが雇用者と被雇用者で合致していないことが大きな原因だろう。雇用しておいて数年で辞められてしまうと企業としては損失が大きいし、働く側も不本意な仕事を数年も継続するのは不幸だ。
産休・育休を取得して、仕事を辞めて育児に専念している女性は就労時間や条件が限られるかもしれないが、企業勤めの経験があり、高い労働意欲を持っている。就労に向けて学業に取り組むなど、努力家でコミュニケーションスキルも期待できるケースが多い。人材として検討するには魅力的だ。これまでこうした層を自社の人材としてとらえたことがないのであれば、新たな人材として検討してみてはどうだろう。