アドビシステムズの「Photoshop」(フォトショップ)といえば、プロのクリエイターも愛用する画像編集ソフトとして有名です。Photoshopをはじめとする「Illustrator」や「Lightroom」などの同社製パソコン用ソフトは、かつて1本数万~十数万円で販売されており、高嶺の花の存在として知られていました。
そのような「高性能だけど価格も高い」ソフトで知られるアドビシステムズですが、iPad/iPhone用のクリエイティブ系アプリは意外にも大半が無料で提供されているのです。iPad Proの内蔵カメラやApple Pencilを活用してさまざまなコンテンツ制作が効率的にできるなど、「これ、本当に無料でいいの?」と思わせるほどの機能や使い勝手に驚かされます。「アドビ、変わったな…!」と感じさせるアプリのどこがすごいのか、改めてチェックしていきましょう。
お気に入りのイラストや色を簡単に取り込める「Capture CC」
「Capture CC」(無料)は、撮影した写真からさまざまな要素をキャプチャーしてデータ化するためのアプリです。
まず便利なのが「シェイプ」。紙に描いた文字やイラストをiPadの背面カメラで撮影すると、手間なく鮮明にデータ化できます。データ化といっても、スキャナーのように単純に画像データ(ビットマップデータ)化するのではなく、ベクトルデータ化するのがポイント。つまり、どれだけ拡大してもジャギー(ギザギザ)が目立たずなめらかな描写が保たれるほか、Illustratorなどのソフトでも利用できるのです。スケッチブックなどに描きためたイラストをデータ化して使いたい人には便利な存在となるでしょう。
面白いのが、写真から色を抽出する「カラー」機能。アルバム内の写真を選択するか、iPadの背面カメラで写真を撮影すると、写真内の5つのポイントで指示した部分の色を抽出して数値化してくれます。コンテンツ制作の際、色を指定するのに必要なRGBやHEXなどの数値で参照できるので、お気に入りの洋服の色や、街で見かけた建物や看板の色などがさまざまなコンテンツで再現できます。
ユニークな機能が「パターン」。カメラで撮影した写真のなかから一部分を選択することで、その絵柄が連続して描かれた万華鏡のような模様を作成できます。人の顔などを用いても、一見すると写真から生成したとは分からないような美しいパターンになることもあり、いろいろ試してみたくなります。
AI(人工知能)を利用した面白い機能が、写真内にある文字と似たフォントを探してくれる「文字」。街で見かけた看板や、手持ちの雑誌に載っていた文字の部分を指定するだけで、似たようなフォントをズバリ弾き出してくれます。これらはアドビの各種アプリで利用できるフォントばかりなので、ほかのアプリで似たフォントを使ってさまざまなコンテンツが作れるわけです。いまのところ、欧文フォント(英数字)のみで和文フォント(漢字やひらがな)には対応していませんが、欧文フォントは種類がものすごく多いので、フォントの種類を写真からズバリ弾き出してくれるのはなかなか痛快です。