「ワンダーフェスティバル」(通称:ワンフェス)は、フィギュアなどを含む造形物である「ガレージキット」を製作したものを展示・販売するイベント。ワンフェスでは毎年最先端のデジタル原型シーンがわかる講演が開催され、回を重ねる毎に注目度は高まりを見せている。ここでは、ワンフェス2018[冬]・デジタル原型のステージの最後に行われた「未経験でも楽しく造形開始&継続できる! ZBrushCoreの習得・練習方法」の様子をお届けする。

  • 今回もほぼすべての席が埋まった福井氏のステージ

公認「ZBrushCore」マスター・福井信明氏が登壇

ステージに登場したのは、Pixologic公認「ZBrushCore」インストラクター&マスター・福井信明氏。“ZBrushCoreマスター”は現在、世界でただ一人という福井氏は、既にZBrushCoreに関する書籍を2冊出版。2017年12月に発売された「小物&ミニチュア作りのためのZBrushCore超入門講座」は、大手通販サイトの3Dグラフィックス部門で1位を獲得する人気書籍となっている。

イベント冒頭、福井氏は「よく、皆さんから『ZBrush(約12万円)でなく、ZBrushの機能が制限されたZBrushCore(約1万5,000円)でいいの?』と聞かれます。Pixologicの公認インストラクターなので、ZBrushをオススメしたいところですが、ZBrushCoreで大丈夫です」と、ZBrushCoreでも使いこなせば密度の高い作品が作れると断言。

  • 「初心者はまずZBrushCoreから初めてほしい」と語る福井氏

  • 本国の開発元からも大絶賛された福井氏の作品群

また、ZBrushCoreはZBrushより機能が制限されたシンプルな製品だが、それでも多くの機能を備えていて、初心者は使いこなせるか不安という声もある。福井氏は「実は多くの機能を覚える必要はなく、むしろ最初は多くの機能を機能を忘れることから始めてください。すると知らないうちに機能を習得できるんです」と来場者に呼びかけた。

入門は「ブラシ」を使いこなすところから

ZBrushCoreを始めるにあたり、使う機能はブラシのみ。まずはZBrushCore独特の"粘土をこねる感覚"を覚えるため、「十二支」を作ってみましょうとアドバイスがあった。最初に使用するブラシは、粘土を引っ張ったり伸ばしたりする「ムーブブラシ」で、球体のオブジェを回しながら、少しずつ整形していく手順を紹介。また、ブラシを使う際はブラシサイズを大きくしてブラシの強さ(Z強度)を弱くすることで、造形ムラを減らすことができると作成ポイントを挙げた。

  • まずは球体から3つのブラシツールを使い造形していく

次に使うのが「スタンダードブラシ」と呼ばれる起伏をつくるブラシで、鼻や手などを作る際に用いるツール([Alt]キーを押しながらの操作ではくぼみが作成可能)。本格的な造形を開始する前に、ペイントブラシでなんとなくあたりをつけておくと、最初は作りやすくなるとアドバイスした。

  • 初心者は3つのブラシツールを使いブラシの感覚に慣れることから始める

3種のブラシを3分使って「ウサギ」完成

「ムーブブラシ」と「スタンダードブラシ」、そして彫り込みを入れて膨らませた境界を強調させる「ダムスタンダードブラシ」を使うこと数分で、ウサギのキャラクターが登場。この3本のブラシツールで十二支を作っていくだけでブラシがなじみ、ほかの機能を使っても応用が利くようになると解説した。さらに、覚えるとよいブラシとして、すり潰す「ポリッシュ」や、ほかの立体を入れ込む「IMMプリミティブ」、粘土を少しずつ盛っていく「クレイビルドアップ」などを挙げていた。

  • ポリッシュやIMMプリミティブなどのブラシを使うとより立体的なキャラクターに

このほか、福井氏は牛のキャラクターも作成。ここでは、ブラシツールで造形するのではなく、パーツを組み合わせて造形する方法を紹介した。ブラシのみの造形では、例えば鼻が少し変になると、鼻の周辺の目や口も変形することがある。しかし、パーツを組み合わせて作る場合はそれぞれが単体で存在するため、ブラシツールの操作に慣れてきたら、パーツを組み合わせる方が安心だと語った。

  • パーツを組み合わせる方法でウシのキャラを作成