ビジネスシーンでよく使われる「適宜」や「適時」という単語。類語には「適当」「適度」「適切」などがありますが、それぞれ正しく使い分けられていますか? 今回はこの5つの単語について正確な意味を知り、その使い方を詳しく見ていきます。
「適当」の意味とは?
まずは「適当(てきとう)」の意味から。「適当」は一般的には「でたらめ、いい加減」といったよくない意味で使うことが多いようですが、ビジネスシーンでは「ほどよく当てはまっていること、ふさわしいこと、程度がちょうどよいようす」という意味合いで用いられ、「適当な広さの土地」「適当なところで切り上げる」といったふうに使われます。
「適切」の意味とは?
「適当」とよく似た言葉に「適切(てきせつ)」がありますが、こちらは「過不足なくぴったりと当てはまるようす」で、「適切な処置」「適切な指導を行う」など、ある行動が目的にぴったりと合致しているさまを表します。「適切」は「適当」に比べてより厳密に、当てはまっている度合いが高いと言えるでしょう。
「適度」の意味とは?
「適度(てきど)」は「程度がちょうどよいこと、ほどよい度合い」という意味で、「過度ではない」「極端ではない」という意味合いも含んでいる言葉です。「適度な休息をとる」など、中程度の度合いを示す時に使われます。
「適宜」の意味とは?
ビジネスシーンやメールなどでよく目にする「適宜(てきぎ)」は、「その場、その状況によく合っている行動」を示す言葉。「適宜に取り計らう」「進捗について適宜報告する」など、英語の「ケースバイケース」に近いニュアンスで用いられます。もうひとつ「その時々、各自の判断で行動すること」という意味もあり、「到着後、適宜解散とします」といった言い回しはよく耳にすることでしょう。
「適時」の意味とは?
「適時(てきじ)」は「行動するのにちょうどよい時、よいタイミング」の意味。「時」という漢字が入っているように時間を指す言葉で、英語の「タイムリー」と同義です。「適時に席を立つ」といった使われ方をします。
「適時」というと、株式用語の「適時開示情報」という言葉を思い浮かべる方が多いでしょうが、これは証券取引所に上場した会社が公開している会社情報のこと。上場会社は業務や運営・業績といった株価に関わる重要な内容を「適時」公示しなければならないという「適時開示制度」があり、このルールのおかげで株式市場の公平性や健全性が保たれています。
単語の使い方、例文
「適当」(ほどよく当てはまっている、ふさわしいこと)
- 適当な言葉がなかなか見つからなかった
- 彼以上にその任務に適当な人材はいない
「適切」(ぴったりと当てはまっているようす)
- 医師の適切な処置のおかげで、父は一命をとりとめた
- 適切なリスク管理に努めてまいります
「適度」(程度がちょうどよいこと、ほどよい度合い)
- 人間関係を良好に保つためには適度な距離が必要だ
- 研究の結果、適度なストレスは思考力や分析力を高めることが分かってきた
「適宜」(その場、その状況によく合っている行動)
- 先輩社員が新人に適宜指示を与える
- サービス向上のために、適宜改善していく所存です
「適時」(行動するのにちょうどよい時、よいタイミング)
- 仕事の合間に適時昼食をとるように
- メディア向けのプロモーション活動を適時実施する
少しずつニュアンスが異なる5つの単語。しっかりと意味と用法を理解し、文脈やシーンに合わせて、適宜、適切な言葉を使っていきたいものですね。