IoTはさまざまな業種で利用されているが、酪農もその1つだ。静岡県富士宮市にある 「朝霧メイプルファーム」では、デザミスおよびNTTテクノクロスが共同開発し提供する「U-motion」を利用し、牛の主要な行動や状態をIoTセンサを使って記録し、異常検知に役立てている。
U-motionは「加速度センサ」、「気圧センサ」、「接近センサ」といった複数のセンサを用いて、牛の採食、飲水、反芻、動態、横臥、起立といった主要な行動を記録・測定する。これにより、発情や疾病、起立困難や突然死などの防止に役立てることができる。
蓄積したデータは独自開発したアルゴリズムで分析・学習することで、これまで気付くことのなかった行動パターンや疾病の予見が可能となり、牛が発する異常サインを逃さず、いち早く治療を開始することができるという。
「朝霧メイプルファーム」では、現在、450頭の乳牛と100頭の肉用仔牛を15名のスタッフで管理、毎日13~15トンの生乳を出荷している。
「疾病アラート」を日々チェック
同牧場では、昨年4月にU-motionを導入し、牛の状態を管理している。同牧場が日々チェックしているのが「疾病アラート」だ。これは、普段に比べ著しい採食(時間)の減少や横臥時間の大幅な増加等を総合的に判断し病気が疑われる牛をアラートで警告する機能だ。
疾病アラートを利用する理由としては、100頭を超えるような多頭飼育の場合は、牛が自由に餌を食べたり寝たりできるよう、フリーストール形式が採られており、牛ごとの体調を把握するのが難しいという背景がある。
「うちの牧場では疾病アラートを毎日チェックして、異常な牛がいないか確認しています。たとえば、お腹を壊していたり、足が痛かったりすると餌を食べに行けません。普段は1日あたり250分食べている牛が、120分しか食べていないとすれば、何らかの病気の発症が疑われます」と語るのは、朝霧メイプルファーム 取締役 丸山純氏だ。
センサを使って採食時間を測定
「朝霧メイプルファーム」では、餌場にセンサ受信器があり、牛がそこに首を出している時間を採食時間として計測する。採食時間は、単純な時間の合計ではなく、牛の動きを総合的に捉え、採食と判断される時間だけを集計するという。
また、採食は病気の予兆という面だけでなく、病気の回復具合を判断する材料にもなるという。
「結果は乳量で判断できますが、病気が回復に向かっているという確証も得たいところです。病気によって薬を投与すると生乳を出荷することができなくなります。そうなると、乳量はゼロになり、回復状況が判断できませんが、採食が増えていけば、回復してきたと判断できます」(丸山氏)