パナソニック「Let'snote」シリーズの王道モデル、12.1型の「Let'snote SZ6」が刷新され、「Let'snote SV7」として生まれ変わった。プロセッサに4コアの第8世代Intel Core i5/i7を搭載し、第8世代Intel Coreプロセッサ搭載の光学式ドライブ内蔵PCにおいて、世界最軽量の999gを実現している。
第8世代Intel Coreのうち、Let'snote SV7で採用されているTDP 15Wの"U型番"シリーズは、従来の2コアから4コアへ物理コアを増加させ(一方で動作クロックは低下)、全体的な処理能力が向上した。TDPは従来と同じ15Wだが、物理コアが増えたことで必要な電力が増え、発熱量も上がったという。また、シリーズ初となるPower Delivery対応USB Type-Cポートの搭載も大きな進化点といえるだろう。Let'snote SV7の開発にまつわる裏話を担当者に聞いた。
まずは放熱対策から。必要な電力が前モデルから増えたため
――Let'snote SV7は外観より中身が大きく進化した製品ですね。今回のフルモデルチェンジのコンセプトは何でしょう。
坂田氏:そうですね。働き方改革に適するマシンを作るという目的で、Let'snote SV7(以下、SV7)は第8世代Intel Coreを搭載するためのモデルチェンジでした。基本的には、Let'snote SZ6(以下、SZ6)のフットプリントを変えずに、入れたい全ての機能を盛り込むことを目指しました。12.1型の液晶を積む、SZ6のサイズ感を引き継ぐことは当然の目標で、そのためにどういうレイアウトをするか、という方向で詰めましたね。毎度のことですが、同じシリーズの新モデルで、筐体を大きくすることはあり得ないので。
盛り込みたい機能というのは、第8世代Intel Coreだったり、USB Power DeliveryやThunderbolt3対応のType-Cだったりです。第8世代の"U型番"プロセッサは全て4コアになって、パフォーマンスは上がりましたが、安定して動かすために第7世代より電力が必要になりました。新製品の大きなポイントの一つが放熱対策ですね。
今回は基板もですが、光学ドライブの位置も変わっています。真ん中から、右に寄りました。ちなみに、本体の高さもSZ6より0.8mm低くなっています。ここ、苦労したように見えますが、実は意外と簡単で(笑)。 SZでは基板とファンが重なっていましたが、今回のSV7では、14.0型モデルLet'snote LXと同じく、基板とファンが重ならないようになっています。その分高さが減りました。怪我の功名ですね(笑)。
基板が前モデルより大きくなったワケ
――SV7ではファンと基板が大幅に拡大していることが印象的でした。
坂田氏:基板を大きくしないとCPU性能が引き出せない、ということですね(笑)。メイン基板で変わっているポイントは、Thunderbolt3に対応したことと、USB Power Deliveryに対応したこと(※いずれもUSB Type-Cポートの対応)。このため基板面積がかなり拡大しました。
――Thunderbolt3とUSB Power Deliveryの搭載で、基板の面積が拡大するのですね。
図書氏:Thunderbolt3のための回路、そしてPower Deliveryのための回路の追加で、基板サイズは大きく変わってくるんです。
ファンとThunderbolt3、Power Delivery の3つのうちであれば、最も基板の大きさに影響したのは、基板の表と裏両方に必要なPower Deliveryの回路ですね。特に、このSV7では、Thunderbolt3とPower Deliveryの回路は、(前モデルから)純増したので。あと、CPUの電源回路も一部追加したため、これも少し大きさに影響しました。
Type-Cポートの純増がキツかった
――基板のレイアウトも大きく変わりましたね。
坂田氏:基板の配置はまずパーツの塊をおおまかに置き、細かい部分やパーツを詰めていく形で作っていきました。今回は、内部の基板が、メインとサブの2つに分かれていて、フレキでつないでいるサブ基板の方にUSBポート2基とLAN、D-Subが乗っています。転送速度が速いものをフレキでつなぐ別ボードに乗せるのは難しく、Type-CやHDMIのポートはメイン基板に乗せています。
図書氏:SV7では、SZ6から外のインタフェースをどうしても減らしたくないというのがありました。Type-Cを純増した関係上、基板では外部インタフェースの面積をキープしつつ、ファンやCPUを置く必要があるのですが、ファンやCPU、メモリに関連する回路はひと塊になっているので、ある程度のサイズをまとめて動かさないといけない。そのパズルが一番苦労しました。
山本氏:外部インタフェースのスペースを確保するために、 CPU関連の回路を基板の奥に引っ込めたくなるんですが、そうすると、CPUなどの熱を冷やすヒートパイプがどんどん伸びていくんですよ。なので、設計としてはCPUとメモリの塊をできるだけファンの方に寄せてあげたい。こういった部分をギリギリまで調整するのに苦労しました。
坂田氏:ヒートパイプが伸びると、重量が重くなる上に放熱性能も落ちるんですよ。ヒートパイプ上で熱を行き来させて放熱するのですが、ヒートパイプが長いと、熱が戻ってくるまでに上がってしまうんです。だから本当は、放熱の部品は熱源の上に直接乗せるのが一番効率的です。グラフィックボードみたいに。
――基板のおおまかな配置が終わればもう、完成予想図が見えそうですね。
図書氏:どんでん返しもありますよ(笑)。今回でいえば、この背の高い部品(USB Type-CのPower Delivery用コイル)が、端末の高さ制限にひっかかりました。筐体を一部削ったり、絶縁テープを貼ったりと、回避方法はいろいろあるのですが、高さのある部品はハード設計や機構設計の担当者が相談して対応します。
このコイルはパームレスト左側にあるので、この部分が発熱するとユーザーの使い勝手に大きく影響します。法人向けモデルでは、オプション扱いのFeliCaチップが来る位置なんですが、板金にあたってしまうので、(該当モデルでは)板金の形状をいじってもらっています。ここの苦労も大きかったですね。