3月3日から地域により4月3日まで行われる「ひなまつり」は、女の子のお祭りというイメージがあるかもしれない。しかし、美しい雛飾りを見れば老若男女に関係なく誰でも笑顔になれるので、今では早春を代表するイベントとして全国各地で定着している。
特に歴史と伝統を誇る温泉地では「日本三大つるし飾り」や日本一の石段雛飾り、室町時代創業の老舗旅館自慢の雛人形などもある。今回は温泉地の「ひなまつり」イベントの中から、オススメの4スポットを紹介しよう。
一年中「日本三大つるし飾り」を満喫できる温泉地
日本の温泉地で「ひなまつり」と言えば、名実ともに稲取温泉を代表として挙げられる。金目鯛などの海産物が有名な稲取は「つるし飾り」発祥地でもあり、「さげもん」(福岡県柳川市)・「傘福」(山形県酒田市)とともに「日本三大つるし飾り」に数えられている。
温泉街中央の観光施設「雛の館」では、「雛のつるし飾り」(つるし雛)を一年中常設展示。毎年1月下旬から3月末には「雛のつるし飾りまつり」が開催され、一層華やかになる。
「日本三大つるし飾り」は「日本三大手芸」とも呼ばれ、温泉街の体験教室で制作体験も可能。お手軽な材料キットも用意されており、短時間でできるので、男性が同行しても飽きずに楽しめる。完成作品はもちろん、製作中の様子も、インスタ映えな写真になることだろう。
稲取温泉には多数の温泉旅館があり、多くの宿で日帰り入浴ができる。「雛の館」隣接の足湯では、無料で気軽に温泉を楽しめるのがうれしいところ。ひなまつり時期には敷地内が伊豆特産の河津桜に彩られ、桃の節句に桜の花見を堪能できる。
他にも、海岸沿いに「雛の館 むかい庵」もあるので、本館混雑時にはこちらを利用してみるといいだろう。2018年は2月22日~3月4日の10時30分~15時までは、「むかい庵」から徒歩圏内の素盞嗚(すさのお)神社の石段を利用して、日本一の118段の雛段飾りが実施される(毎年日程が変わるので要注意)。
さらに、伊東温泉とのコラボ企画もあり、稲取温泉「雛の館」または「むかい庵」の入場券を提示すれば、伊東温泉「東海館」の入場券が半額になる(逆も可能)。河津温泉郷や下加茂温泉の河津桜祭りも含めて、早春のイベントを一気に制覇してみよう。
●information
稲取温泉「雛のつるし飾りまつり」
期間: 2018年1月20日~3月30日
住所: 静岡県賀茂郡東伊豆町稲取1729
アクセス: 伊豆急行線伊豆稲取駅下車徒歩15分
花桃と星空だけじゃない! 昼神温泉郷
南信州の昼神温泉郷は、ゴールデンウィークに見頃を迎えるヨーロッパ直輸入の花桃の可憐さと、環境省から日本一に認定された星空の素晴らしさで、近年は全国区の知名度を誇っている。
2月1日から旧暦ひなまつりの4月3日まで様々なイベントが実施されるが、中でも昼神温泉「石苔亭いしだ」の2,000体雛飾りがオススメ。普段は敷居が高い高級旅館だが、展示期間中は例外で、一般の観光客も無料で見学できる。広大なロビーラウンジ内にある能舞台上で荘厳に展示され、温泉宿の雛飾りでは日本一の風景だ。3月1日~4月3日には「中馬ぬくもり街道ひな祭り」が開催され、周辺市町村のイベントを広範囲に楽しめる。
昼神温泉は観光割引クーポンブック「物味湯産手形」(税込1,300円)の発祥地で、多くの宿が日帰り入浴を実施している。手形の数ある特典の中でも、最大の魅力が温泉めぐり。長野県内約50施設から、好きな温泉施設を12カ所選択して、1回ずつ無料で入浴できる。購入日から1年間有効なので、次回の信州旅行の際にも持参しよう。特に日帰り入浴専門施設「湯ったり~な昼神」は、営業時間が長くて利用しやすいのが有り難い。
●information
昼神温泉「石苔亭いしだ」2,000体雛飾り
展示期間: 2018年1月20日~4月3日
外来見学時間: 10:00~17:00
住所: 長野県下伊那郡阿智村智里332-3
アクセス: JR飯田線飯田駅下車 昼神温泉行きバス40分下車すぐ、または、名古屋から飯田行高速バス 昼神温泉郷下車すぐ
老舗旅館で江戸時代から伝わる貴重な「享保雛」を
四万温泉「温泉三昧の宿 四万たむら」は室町時代創業で約500年続く、日本を代表する老舗温泉旅館。毎年2月上旬~4月上旬に、代々伝わる雛人形や雛細工などの品々約100点をロビーに展示している。年代・大きさなどは様々だが、中でも江戸時代中期の享保年間に流行した「享保雛(きょうほうびな)」は貴重な逸品だ。
毎年2月15日~3月15日までは、四万温泉「摩耶姫まつり」が行われ、温泉街の店舗や旅館自慢の雛人形を見学できる。しかし、「四万たむら」の展示は、宿泊者と日帰り入浴者限定のイベントだ。
「温泉三昧の宿 四万たむら」は宿の名前通り温泉が大充実しており、日帰り入浴も可能だ。雪は少ない地方だが、運が良ければ新潟県側から県境を越えて雪が吹き込み雪見露天風呂になる場合もある。
写真は2017年3月末の撮影だが、夜中に雪が降って翌朝だけ雪見露天風呂を楽しめた。上信越高原国立公園の自然環境の素晴らしさを宿でも実感できるのが四万温泉の魅力。高温で非常に温まる湯なので、夏場よりも寒い季節がオススメだ。「四万たむら」は湯量豊富な温泉を利用して全館に温泉暖房が入っており、真冬でも暖かく滞在できて、しかもエコとなっている。
●information
四万温泉「四万たむら」
住所: 群馬県吾妻郡中之条町四万4180
アクセス: JR吾妻線 中之条駅からバス約30分、終点「四万温泉」下車すぐ。または、東京駅発高速バス「四万温泉号」終点下車すぐ
日本一の118段雛飾りは「体験型」
最後に伊東温泉のひなまつりイベント、「雛の祭典・伊東MAGARI雛」を紹介しよう。メイン会場は「佛現寺」で聞き慣れない名前だが、伊東市役所裏手にあり交通至便。参道の石段を利用した雛段飾りが名物で、日本一の118段を誇っている。
全国の神社仏閣でも同様のイベントが行われるが、知名度が高い「かつうらビッグひな祭り」(千葉県勝浦市)の遠見岬神社でも60段なので、佛現寺の雛はその約2倍の規模だ。
稲取温泉の素盞嗚神社雛段飾りと長年日本一を競ってきたが、2017年から同じ118段でそろえて日本一を分け合っている。2018年は連携が一層進み、冒頭の稲取温泉で紹介した通り、観光施設相互半額割引を実施している。同じ東伊豆ということもあり、共同で観光客の誘致に取り組む姿勢は、全国の観光地でも参考になるに違いない。
佛現寺の118段雛飾りは、毎朝並べて夕方撤収しているというから恐れ入る。実は全国の石段雛飾りも同様で、悪天候の場合は並べない日もあるので晴天時を選んで訪れたい。
佛現寺の雛段飾りは横の石段を歩けるのが特徴で、途中には座布団もあって雛飾りとともに記念撮影ができる。さらに石段が一直線ではなく、途中で曲がっているのも極めて珍しく、それが「伊東MAGARI雛」の名前の由来だ。
一方の稲取温泉・素盞嗚神社石段雛飾りは一直線で、眺めるだけなので無人状態で記念撮影できる上に、写真撮影にも最適だ。
佛現寺の雛段飾りは2月22日からだが、一足早く1月20日から東海館会場の雛人形展示がスタートした。東海館は伊東温泉を代表する観光施設で、歴史的建築の老舗旅館跡を再利用しており、古き良き温泉宿の情緒を満喫できる。さらに、元老舗旅館だけあり、別料金で温泉の日帰り入浴も可能だ。
●information
伊東温泉「雛の祭典・伊東MAGARI雛」
イベント期間: 2018年2月22日~3月4日
住所: 静岡県伊東市東松原町12-10(東海館会場)
アクセス: JR伊東線伊東駅下車、徒歩7分
今回は歴史や規模やインスタ映え等の観点から厳選して紹介したが、温泉地のひなまつりイベントは他にも無数にある。寒い冬こそ温泉だが、さらに春先取りを実感させてくれるにぎやかなひなまつりイベントを体験して、充実した温泉旅行を堪能していただきたい。