「~と申しますと」は間違い?

ビジネスシーンで頻繁に使う「申す」という言葉。その使い方に、日々迷いを感じる人も多いのではないでしょうか。そこで今回は、「~と申しますと?」という表現について調べてみました。正しい例文や誤った例文とあわせてご紹介します。

■「~と申しますと」の使い方

相手の話をもう少し詳しく聞きたいときに、「~と申しますと?」という表現を使う人がいますが、これは誤った使い方です。「申す」は「言う」の謙譲語であることから、自身の行為をへりくだって言う場合に用いるものです。この場合、話し手は自分ではないわけですから、相手の「言う」という行為に対し「~と申しますと」というのは、不適切と言えます。

■正しい表現は?

取引先や上司など、相手の話をもう少し詳しく聞きたいときには、「言う」の尊敬語が「おっしゃる」であることから、「~とおっしゃいますと?」とするのが正しい表現ということになります。自分の発言は「申す」、相手の発言には「おっしゃる」と覚えておくと良いでしょう。

■「~とおっしゃいますと」の正しい使い方

誤った使い方
(取引先)「この部分を、今と違う色にしてもらいたのですが」
(自分)「と申しますと、具体的に何色がよろしいですか?」

「申す」は謙譲語です。この場合、「申した」のは取引先の人であって自分ではありませんので、間違った使い方になります。

正しい使い方
(部長)「明日の○○社との会食に、例の店を使いたいんだが」
(自分)「例の店とおっしゃいますと、銀座の○○でよろしいでしょうか?」

「おっしゃる」は尊敬語です。この場合、「おっしゃった」のは目上の立場にあたる部長ですから、正しい使い方と言えます。

「申す」「おっしゃる」の正しい使い方・誤った使い方
(正)「(取引先の)○○様がおっしゃっていました」
(誤)「(取引先の)○○様が申しておりました」

(正)「社長のおっしゃるとおりです」
(誤)「社長の申されたとおりです」

いずれも、「おっしゃった」のは取引先や目上の立場にあたる人ですから、「申す」ではなく「おっしゃる」と使うのが正解です。

取引先に対して、
(正)「責任者である部長の○○が、そう申しておりました」
(誤)「責任者である部長の○○が、そうおっしゃっていました」

「おっしゃった」のは自分にとって目上の立場である部長ですが、取引先やお客さまなど、社外の人に伝える場合には、自社の部長よりも社外の人をたてる必要があることから、謙譲語の「申す」の方を用いるのが正解です。

丁寧語、謙譲語、尊敬語といった敬語は、大人になっても使い方が難しく間違いやすいものです。特にビジネスシーンでは、この「申す」に関連した敬語が多数登場します。自分の発言は「申す」、相手の発言には「おっしゃる」というポイントをしっかりと押さえ、正しい敬語を使うように心がけましょう。