フォルクスワーゲン(VW)の日本法人がセダン/ステーションワゴンの「パサート」にターボディーゼルエンジン搭載車をラインアップした。同社が日本でディーゼルエンジン車を販売するのは、実に20年ぶりのことだという。ディーゼル復活の背景には何があるのだろうか。
低燃費と力強さが特徴のディーゼル
パサートは1973年の登場以来、「ゴルフ」と共にVWの主力商品であり続けるクルマだ。現行の8世代目は2014年に登場し、2015年には日本に導入された。セダンの「パサート」とステーションワゴンの「パサート ヴァリアント」の2モデルが選べる。
フォルクスワーゲン グループ ジャパン(VGJ)は今回、2Lターボディーゼルエンジン搭載モデル「パサート TDI」を発売した。ディーゼルエンジンはガソリンエンジンに比べトルクが大きく、速い速度で長い距離を乗るのに向く。軽油はガソリンより安いので経済的なことも特徴。燃費もガソリンエンジンより2割程度は優れているそうだ。
ディーゼルエンジンでは排ガスに含まれる粒子状物質(PM)や窒素酸化物(NOx)などの低減が課題となるが、VWは排ガス後処理システムを採用することで、世界的にも厳しい日本の「ポスト新長期排ガス規制」に適合させているという。ただ、排ガス処理のシステムにはコストが掛かるので、例えばパサートの「エレガンスライン」というモデルで比べると、ガソリンエンジン搭載車が約387万円からの価格設定であるのに対し、ディーゼルエンジン車は約422万円からというように車両価格に差が出る。
市場環境に合わせた? ディーゼル復活の理由は
VWは日本において、1977年から1998年までの間に、ゴルフなどの車種でディーゼルエンジン搭載車5万台以上を販売した実績があるものの、それ以降はディーゼル車を販売してこなかった経緯がある。
そして2015年には排ガス不正問題が発覚し、この問題は日本におけるVWのブランドイメージにも影を落とした。日本での販売台数は2017年に回復の兆しを見せたが、このような状況下でディーゼル車を復活させることに、VGJは不安を抱かなかったのか。そんな報道陣からの質問に対し、パサート TDIの発売記念イベントに登場したVGJのティル・シェア社長は、VWのディーゼルエンジン車が欲しいというディーラー及びユーザーの声が多いという現状に何度も言及した上で、「心配は全くない」と言い切ってみせた。
実際のところ、日本ではディーゼルエンジン車の市場が拡大している。日本自動車輸入組合(JAIA)によれば、2012年以降のディーゼル乗用車市場は拡大傾向にあり、2017年には外国メーカー車の年間総販売台数(約30.6万台)のうち、2割超がクリーンディーゼルエンジン搭載車だったという。対前年比でいえば31.4%の増加だ。
パサートが属するミッドサイズのセダン・ワゴン市場は、幅広くディーゼル車をラインアップする輸入車勢が中心となって市場を形成しているとVGJは説明する。この領域で戦っていくにはディーゼルの用意が不可欠と考え、同社はディーゼル復活を決めたのだろう。VGJではディーゼルエンジン車のラインアップを拡充すべく準備を進めているという。