子ども支援専門の国際NGOであるセーブ・ザ・チルドレン・ジャパンは2月15日、しつけにおける体罰等に関する意識・実態調査の結果を発表。約6割の大人が子どもに対するしつけのための体罰を容認していることや、子育て中の親の約7割がしつけのために子どもをたたいた経験があることが分かった。

  • セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンがしつけのための体罰等に関する調査結果を発表

同調査は、20歳以上の男女を対象にインターネット上で行われたもの(意識調査: 2017年7月10日~7月13日、実態調査: 2017年7月11日~12日)。併せて2万人から回答を得た(子どもを持つ大人1,030人を含む)。

このうち、全回答者にしつけのために子どもに体罰をすることについての考えを聞いたところ、56.7%が何らかの場面で子どもに対し体罰をすべきであると回答した。また「しつけのために子どもをたたくことに対してどのように考えますか」という質問も聞いたところ、何らかの場面で子どもに対し「たたくこと」をすべきであるという回答者は6割を占めた。

  • 約6割がしつけのために子どもに体罰をすること、たたくことを容認

「たたくこと」を容認すると回答した人にその理由を尋ねると、「口で言うだけでは、子どもが理解しないから」という回答者が42.8%と最も多く、「痛みを伴う方が、子どもが理解すると思うから」が20.6%だった。

  • 「口で言うだけでは、子どもが理解しないから」が最も多かった

続いて子育て中の1,030人に対して過去にしつけの一環として子どもをたたいたことがあるかを聞いたところ、70.1%が1回以上たたいた経験があると回答した。

  • 「時々あった」が37.0%

調査時から遡って過去3カ月の間に、具体的にどのような体罰を用いたことがあるかを質問すると、「手の甲をたたく」(28.3%)、「お尻をたたく」(45.4%)と回答した人の割合が、他の行為より高くなった。

  • 「手の甲をたたく」(28.3%)、「お尻をたたく」(45.4%)が多い

また、子育てに関する状況について聞いたところ、「子どもの言動に対してイライラする」という回答者は61.4%、「育児、家事、仕事の両立が難しいと感じる」と答えた人は41.2%、「孤独を感じる」と答えた人は20.9%いた。

  • 「子どもの言動に対してイライラする」という回答者は61.4%

これらの子育てに関する状況と、体罰等の実態との関係性を分析した結果、「イライラする」「孤独を感じる」「両立が難しい」の3項目で、日常におけるそれぞれの頻度が高い人ほど、子どもをたたいたり、怒鳴りつけたりする頻度が高かった。

特に「子どもの言動に対してイライラする」ことが「全くない」と回答した人は、「孤独を感じる」「両立が難しい」「引きこもる」ことが「全くない」と回答した人と比べて、子どもをたたくことや怒鳴りつけることが「全くなかった」と回答する割合が高かった。

  • 「イライラする」と答えた人は体罰等の頻度が高かった

最後に、たたかない、怒鳴らない子育てについての意識を質問すると、「たたいたり怒鳴ったりせずに子育てをしている」という回答者が34.7%、「たたいたり怒鳴ったりせずに子育てをしたいし、その方法も知っているが、実践は難しい」は33.4%、「子育てでたたいたり怒鳴ったりすることはあるが、しない方法があれば知りたい」は27.5%いた。

  • たたかない、怒鳴らない子育てへの関心は高かった

同団体によれば、体罰を用いたしつけは短期的には有効に見えることもあるが、時間が経つにつれ、言葉や社会性の発達に遅れが見られるという報告があるほか(服部祥子、原田正文「乳幼児の心身発達と環境-大阪レポートと精神医学的視点」,名古屋大学出版会,1991年)、厚生労働省のデータから調べた研究でも、お尻をたたく行為が子どもの発達に負の影響を与えるという結果が明らかになっているという。

さらに福井大学の友田明美教授の研究では、厳しい体罰や暴言を受け続けると、子どもの脳の発達に負の影響が出ることが明らかになっているとのこと。

セーブ・ザ・チルドレン国内事業部プログラムマネージャーの瀬角南氏は「体罰をしてはいけないのだということを法制化を通じて訴え続けると同時に、たたかない、怒鳴らない子育てをどうやってやっていけるのかをお伝えしていきたいし、みなさんと対話していきたいと思っています」とコメント。

体罰に至る原因について「今回の限られた調査の中で、こういったことをなくさなければという決定的なものは分かっていない」とした上で、「子どもの言動に対してイライラすることが『全くない』と回答した人は、子どもをたたくことや怒鳴りつけることが『全くなかった』と回答する割合が高かった。こういった結果をお示しして、どういう風に子育てしている方をサポートできるのか、考えていきたいと思っています」と話した。

※グラフのデータは報告書『子どもの体やこころを傷つける罰のない社会を目指して』より引用